キング・コングと藤子作品

 先日、映画『キングコング:髑髏島の巨神』を観ました。
 
 ケレン味あふれる怪獣映画でした。巨大なキングコングが暴れまわり格闘するさまを満喫。とにかくコングが大きいのが非常に楽しい!
 ほかにも巨大生物がいろいろと出てきて、画面にみなぎるワンダーランド感にワクワクしました。コング以外の巨大生物のなかでは、スケル・バッファローがお気に入りです。やたらと大きい水牛のような獣ですが、動きがゆったりとしていて、性格がおとなしく、思わずかわいげを感じてしまいます。
 あと、バンブー・スパイダー!これは嫌な巨大生物だけど、竹林に大きな蜘蛛の細長い脚が紛れ込む光景は絵になるし、アイデアとしても面白かった。


 登場人物では、バッカード大佐のイカれ具合が印象的でした。コングに対してかたくなに復讐心を捨てず、部隊の責任者である隊長なのに自分の感情に任せて突っ走ってしまいます。部下に信頼されているふうな隊長だっただけに、そのクレージーさが際立って感じられました。ベトナム戦争でのやりきれない思いがあったからこそ、あそこまでクレージーな判断をしてしまったのだろうな…と彼の異常さに理解を示したくなる面もありましたが、それにしても隊を預かる身としてあんな判断はないでしょう(笑)そのおかげで怪獣映画としては盛り上がったわけですが♪

 
 ・パンフレットの内容も面白かった!


キングコング”なる怪獣が登場する数々の映画のなかで、私が初めて劇場で観た作品は『キングコング対ゴジラ』の再上映版でした。というか、怪獣映画だけでなく全映画のなかで劇場のスクリーンで初めて観た作品がこれだったと記憶しています。
 歴代キングコング映画では、オリジナルの1933年版が怪獣映画の歴史に刻まれる不朽の古典的名作だとして、そのリメイクである1976年版と2005年版にもそれぞれに思い入れがあります。
 映像的な完成度と観終えたときの満腹感という点では2005年版『キング・コング』ですし(なにしろ上映時間が長いのでその意味でも満腹なのです)、子どものころキングコングという存在に対し純粋な好奇心を掻き立ててくれた1976年版の『キングコング』にも好意を感じます。1976年版はリアルタイムで観ていないのですが、当時の雑誌やテレビでよく紹介されており、そのおかげで私はキングコングという存在に強い好奇心を抱けたのです。
 1976年版『キングコング』が公開されたころ 私は小学生でした。当時ロッテからキングコング・ガムが発売され、それに付いていたシールを集めるのに熱中したことがあります。もう40年も前の品ですが、そのときのシール(を貼ったメモ帳)が家に残っています。
 
 
 
 
 この迫力あるイラストが、私の1976年版の強烈な記憶イメージです。映画本編に出てきた実写のキングコングより、むしろこちらのイラストのイメージのほうが強いくらいです。


 『キング・コング』第1作とそのリメイク×2作は、キングコング超高層ビルをよじ登り戦闘機とやり合う終盤シーンが有名です。そのパロディ場面が、『のび太の宇宙小戦争』にあります。
 大長編ドラえもんとの関連でいえば、1976年版『キングコング』は“常に雲霧に覆われていて人工衛星からも見えない秘境を探検する”という意味で『のび太の大魔境』と重なる印象を感じますし、今回の『キングコング:髑髏島の巨神』は“地球(地底)空洞説が真説である世界”という意味で『のび太と竜の騎士』『のび太の創世日記』を思い出します。


 そういえば『ドラえもん』のなかに「キングコング」というサブタイトルの話があったなあ、と藤子・F・不二雄大全集9巻を読み返しました。ニホンザルジャイアンが巨大化し、両者がキングコング扱いされる話でした(笑)
 ドラえもんのび太しずちゃんジャイアンで山登りしていたら、サル(場所柄、ニホンザルでしょう)に遭遇します。そのサルにたまたまスモールライトの“モノを大きくする光線”が当たり、サルは巨大化してしまいます。そうやってニホンザルが巨大化することで、キングコング状態になったのです。
 そして、ジャイアンが映画『キング・コング』における美女のごとく巨大ニホンザルに手に握られてしまいます。するとジャイアンもスモールライトの光線で巨大化し、巨大ニホンザルを撃退。
 山登り後、その場にいなかったスネ夫は、巨大ジャイアンと巨大ニホンザルが撮影された写真を見て、「へえっ、キングコングが2匹も出たの」と両者をキングコングだと思ってしまうのでした(笑)


 藤子不二雄Ⓐ先生は、赤塚不二夫責任編集「まんがNo.1」1973年4月号で発表した『大怪物』で、モンスター映画の軽妙なパロディをやっています。そのなかで、『キング・コング』第1作のパロディも描いています。高層ビルのてっぺんに登り片手に美女を握ったコング。そのコングを攻撃する複葉戦闘機。複葉戦闘機の操縦士は美女をコングの手から救出するつもりでした。ところが美女は、「この子あたいのペットなのヨッ!!よけいなことしないでちょうだい!!」と操縦士たちを叱りとばすのです(笑)
 藤子Ⓐ先生は『大怪物』のなかで『キング・コング』第1作についてこう書いています。

キング・コングの前に、キング・コングなし、キング・コングの後にキング・コングなし」といわれるほどキング・コングは怪物中の大スタアだ。
又、この「キング・コング」は怪物特撮映画の金字塔で我国流行のTV怪獣ものの製作者は、キング・コングの写真を神棚へかざっておいてほしい。

 Ⓐ先生がこうおっしゃるほど、『キング・コング』第1作は怪獣映画の歴史において重要な位置にあるわけです。


 ちなみに、Ⓐ先生は「まんがNo.1」で5回、映画の名作をパロディ化するナンセンスマンガを発表しています。

・『大殺陣』(1972年12月号)
・『再び大殺陣』(1973年1月号)
・『大決闘』(1973年2月号)
・『大悪漢』(1973年3月号)
・『大怪物』(1973年4月号)

 『大殺陣』『再び大殺陣』は、『血槍富士』『座頭市物語』などの時代劇を、『大決闘』は、『シェーン』『真昼の決闘』などの西部劇を、『大悪漢』は、『ブリット』『俺たちに明日はない』などのギャング映画を、それぞれパロディの題材にしています。『大怪物』は、いま述べた『キング・コング』のほか、『フランケンシュタインの花嫁』と『ドラキュラ』を取り上げています。