『少年時代』に登場した少年小説

 先月の話ですが、名古屋古書会館の古書即売会へ足を運びました。ここの古書即売会へ行くのは久しぶりでした。
 戦前の少年小説『豹の眼』(高垣眸)と『あゝ玉杯に花うけて』(佐藤紅緑)の復刻本を見つけました。国書刊行会から復刻されたものです。どちらも、原本は昭和3年講談社から刊行されています。定価2800円の本が300円だったので思わず購入しました。
 
 
 『豹の眼』は、藤子不二雄Ⓐ先生の名編『少年時代』の作中で進一がタケシに貸した本です。『少年時代』に登場したオリジナル本の装丁に近いものを安く手に入れられて嬉しいです。
 そして、佐藤紅緑らの少年小説のような成長ロマンを目指して構想された藤子Ⓐ作品が『まんが道』なのです。


 『豹の眼』の著者・高垣眸の息子が、藤子先生の『海の王子』の原案を手掛けた脚本家・高垣葵氏です。『海の王子』といえば、眞子さまのご婚約相手が紹介されるさい頻出した言葉でもありますね(笑)
 
 藤子先生の『海の王子』では、海の王子のことを「おにいさま」と慕う妹のチマが人気です。チマという名前は原案者の高垣葵氏がつけたもの。高垣氏はチマという名前が好きで、ご自身が脚本を担当したいろいろなドラマでその類の名を使っているそうです。チマとかチーマとか小魔(小さい悪魔)とか。
 昭和30年代の人気マンガにおける“妹萌え”要素といえば、『鉄腕アトム』のウランと『海の王子』のチマが思いあたります。二人とも兄思いの妹ですが、ウランがおませで勝気なところがあるのに対し、チマは温順で控えめな感じで、そこはきわめて対照的だなと感じます。