11月24に放送のアニメ『ドラえもん』

 11月24日(金)放送のアニメ『ドラえもん』、じつに面白かった!
 1話目の「かがみのない世界」(てんコミ27巻収録)は、F先生が愛した古典落語のうちの一つ「松山鏡」の変奏と言える一編です。「松山鏡」の原話はさかのぼるとインドの仏教説話集「百喩経」にたどりつくらしく、日本に伝わってから、中世狂言「松山鏡」→近世狂言「鏡男」→落語「松山鏡」などと変遷してきました。鏡を見たことがない人が生まれて初めて鏡を見たら…というアイデアが、いろいろなお話になって語られてきたわけです。


 そんな由緒あるお話の現在版である『ドラえもん』の「かがみのない世界」は、自分の顔を知らないジャイアンスネ夫たちが初めて鏡を見る場面で可笑しさが絶頂に達します。自分の顔を見てゴリラに似ているとか、キツネそっくりだとか、彼らは自分の顔を見た感想を自分の顔とも知らず忌憚なく述べるのです。


 作中のかがみのない世界は、もしもボックスによって生成されました。もしもボックスは“もしもの世界”をつくりだす一種の実験装置です。のび太はこれを使って「もしも、自分の顔をだれもみたことがなかったら……」とリクエストして仮定の世界をこしらえたのです。そんな仮定の実験世界のなかでわざわざ鏡を出して「かがみをみたことがない人間が、初めてかがみをみたらどするか…」という実験を行なうなんて、二重の実験ですね(笑)


 今回のアニメで原作から加えられたアイデアとしては、「写真屋が似顔絵屋に変わった」とか「自動車にサイドミラーやバックミラーがないので交通が混乱する」といったものがありました。


 2話目は「ピンキリ!お宝未来鑑定」。原作にないオリジナルストーリですが、脚本が冴えていて楽しませてくれました。お宝を鑑定するネタでああいうふうに話を持っていき、ああいうふうに話を決着させるなんて!
 お兄さんのことを思う幼い女の子もよかったです。F先生が描きそうなルックスも、彼女が鑑定依頼する動機も、お兄さんに対する気持ちも。
 量産型の中古品で残念な一品と鑑定されて、長いこと拗ね続けるドラえもんも見逃せませんでした(笑)