【2017年を振り返る】第4回モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋

 10月21日(土)、名古屋のシネマスコーレで「第4回 モーレツ!原恵一映画祭 in 名古屋」が開催されました。
 
 『クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡』『狐夜話』の二本立て上映に加え、原恵一監督のトーク&サイン会という豪華なイベントでした。
 今回は直接的には藤子作品の上映はありませんでしたが、原恵一監督といえば数々の藤子アニメに携わってこられ、藤子的にも重要人物です。個人的にはTVアニメ『エスパー魔美』のチーフディレクターおよび映画『エスパー魔美 星空のダンシングドール』の監督のお仕事などが特に印象的です。


 藤子作品の上映はなかったと書きましたが、原監督関連の品々を展示するコーナーでは藤子作品に関するものも見られました。
 
 ・原恵一監督作品のポスターの中に藤子アニメも!


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 ・書籍・雑誌・CD・資料などが並べられた棚には、『エスパー魔美』関連の品もいろいろ。


 
 ・このポスターにも魔美がいます♪


 そのほか、こんな感じで原監督関連の品々が展示されていました。
 
 
 
 



 ここからは上映作品と上映後のトーク&サイン会についてレポしていきます。
 
 『暗黒タマタマ大追跡』は、映画クレしんで原監督が初めて監督をつとめた作品です。本郷みつる監督からバトンタッチされる格好で原監督がつとめることになりました。
 私は本作を劇場で観るのは初めて。ひたすら面白いエンタメ作品でした。とくにアクションと笑いとキャラの立ち方がすばらしかった! 満足度の高い一編でした。
 
 『狐夜話』は、原監督が東京デザイナー学院時代につくった卒業制作アニメ。5分ほどの短編で、夏の村祭りを舞台に、幼い女の子が不思議な子ぎつねと遭遇する、抒情的で幻想的な作品でした。きつねのルックスと動きがかわいくて、金魚すくいの桶に飛び込む場面などが特に好きでした。子どもには鮮やかに色がついていて、大人は石みたいな殺風景な色をしていたのも印象的。女の子と狐の世界を追えば、周囲の大人たちは次元の違う後景に退くのだろう、と感じました。


 作品の上映後は原監督が登場し、トークショーとなりました。映画祭を主催したお二人がインタビュアー。
 上映された2作品についての話題がメインでした。お客さんからの質問もありました。
 
 
 『狐夜話』が無音なのは、元の16ミリフィルムには音があったのに、ある上映会のとき映写機器の操作者が誤って録音ボタンを押して、音がぜんぶ消えてしまったのだそうです。残念…


 
 『アニメーション監督 原恵一』(浜野保樹編、晶文社)のインタビューを読んだとき原監督がこの卒業制作アニメの話をしていたので、以前からどんな作品か気になっていました。そのインタビューの中で制作スタッフに女性が多かったと語られていたので、今回の上映でスタッフロールを確認したら本当に女性ばかりでビックリ(笑)
 男性は3人で他は女性ばかりだったとか。原監督はこの作品の監督をつとめているのですが、女性たちから出る不満をまあまあとなだめるのが大変で監督をやった気がしない、とおっしゃっていました。原監いわく「ハーレムのように見えるが地獄だった(笑)」


 『暗黒タマタマ大追跡』に関するお話も興味深かったです。監督のお話を(かなり要約して)メモしておきます。
・暗黒タマタマを作り終えたとき「うまくできなかった」と感じ、自信がなかった。でもスタッフだった湯浅政明さんが「監督やりましたね!」と言ってくれたので、「湯浅さんは面白かったんだ、じゃあいいや」と思った。僕もあらためて観たら面白かった。この映画祭では、作品を観終えたばかりのお客さんが目の前にいて、「(いいものを)もらった」気がする。


・前監督の本郷さんの作品はファンタジー色が強かった。それをすんなり継承すれば僕はあまり悩むこともなかったんだけど…(笑)自分は泥臭くドメスティックなものをつくった。


・(インタビュアー:暗黒タマタマには、原作者の臼井儀人先生が臼井儀人の声で初出演していますが、その経緯は?)打ち合わせやパーティーなどで臼井さんに会うことがあり、臼井さんの声を映画に出したいと思っていた。それで臼井さんにどんな役で出たいか訊いたら、カラオケで「兄弟船」を唄っている役がいいと希望されたので、そのアイデアをそのまま使った。作中のルックスも臼井さんが提案してきた。(野原ひろしに臼井が蹴られる場面があるが)そこは僕のアイデアだったかな(笑)


・(暗黒タマタマでは健康ランドが舞台になるくだりがあるが)健康ランドを出そうと発案したのも臼井さん。僕は健康ランドへ行ったことがなかったので、臼井さんお気に入りの健康ランドへ連れていってもらってロケハンした。船堀の健康ランドだった。


クレしんがスペインで非常に人気があった時代があって、スペインへ行ったとき道を歩いていたら「クレヨンしんちゃんの監督!?」とスペイン語で声をかけられたこともある。東京でもそんなことはないのに(笑)


 
 原監督は、映画『オン・ザ・ロード』への熱い気持ちも披露されました。この映画はソフト化されておらず、劇場で再上映されたとき久々に観たら胸が熱くなったそうです。
「どんな映画や小説にも心を動かされなくなりました。どうしたらよいでしょうか?」と質問したお客さんに、原監督は「この映画を観るといい!」とおススメしていました(笑)
 

 そして原監督のサイン会となりました。
 持参した品や会場で買った品など、なんにでもサインをいただけるということで、私は色紙を持っていきました。それに加え、会場で販売されていた原監督ブロマイドにもサインをもらいました。
 
 このイベントの主催者さんがブロマイドを作成したことについて原監督は「どんな羞恥プレイだ!(笑)」とおっしゃっていましたが、かなりの売れ行きでした。


 原監督、主催者・スタッフの皆さん、会場でお会いした皆さん、楽しい時間をありがとうございました!