妖怪・ミイラ展

 5月7日、名古屋パルコで開催されていた「妖怪・ミイラ展〜浮世絵から幻獣ミイラまで〜」へ行ってきました。
 

 ■会期:2018年4月21日(土)〜5月13日(日)(最終入場20時30分)※最終日は19時まで(最終入場18時30分)
 ■会場:名古屋パルコ西館8階 パルコギャラリー
 ■料金:当日 一般1,000円/高校生・中学生800円/小学生以下600円 
         前売り 一般900円/高校生・中学生700円/小学生以下500円

 チケットを買って入場してすぐのところに「百鬼夜行絵巻」が展示されていました。「百鬼夜行」とは、さまざまな妖怪が夜中に列をなしてさまようことです。
 
 
 
 
 「百鬼夜行」といって思い出すのが、『ドラえもん』の「こわ〜い!「百鬼線香」と「説明絵巻」」(小学四年生1991年4月号、F全集17巻)です。F先生が描いた一話完結型の短編『ドラえもん』としては、最後に発表された作品です。
 この話でドラえもんは四次元ポケットから「百鬼線香」と「説明絵巻」を出します。ろくに使われず捨てられた道具に「百鬼線香」の煙をかけておくと、夜になって道具たちが妖怪となり、百鬼夜行のごとく歩いて線香の置いてある家にやってきます。道具が古くなると魂を持つ、と思っていた昔の人の考えを、未来の科学技術で実体化したものです。「説明絵巻」には、百鬼夜行の挿絵が入っています。
 道具が長い年月を経て古くなって魂を宿したものを「付喪(つくも)神」といいます。今回の「妖怪・ミイラ展」で見た百鬼夜行絵巻のなかにも道具の妖怪がいました。
 
 ・臼の妖怪。

 
 
 ・琵琶の妖怪と琴の妖怪がいます。


 そして「妖怪・ミイラ展」の後半は幻獣のミイラが何種類も展示されていました。その幻獣ミイラのメイン扱いだったのが、件(くだん)です。
 
 
 
 件は、顔が人間で体が牛、という幻獣で、牛から生まれ、短い寿命のなかで予言をし、その予言は必ず当たるとされています。予言をしたら死ぬ、という説もありますし、件の姿は御守りになる、という話もあります。いろいろな伝承があるようです。
 
 件を見世物にする興行のポスターも展示されていました。そこに記された「牛人間」というフレーズを見て思い出したのが、『ドラえもん』の「そっくりペットフード」(小学四年生1990年10月号、F全集17巻)です。
 「そっくりペットフード」の冒頭で、犬の顔が飼い主と同じになっている(犬の顔が人間の顔になっている)ポスターを見たのび太が「人面犬!!」と驚きます。そのポスターは“そっくりペットフード”を宣伝するポスターでした。そっくりペットフードを動物に食べさせると、その動物の顔が食べさせた人そっくりになるのです。おかげで、しずちゃん顔のカナリヤとか、スネ夫顔の錦鯉などができてしまいます。
 その後ドラえもんが空を飛びながらそっくりペットフードをあちこちにポロポロとこぼしたものだから、ドラえもん顔の犬、ドラえもん顔の猫、ドラえもん顔のジャイアンなどが出現。「人間でも動物でもない へんな顔ののらイヌが見つかった」とテレビ局も動きだし、ドラえもん顔の動物たちは「変面○○」と呼ばれて大騒ぎとなります。変面ガラス、変面ゴキブリ、変面人、変面ゾウ、変面ワニ、変面ゴリラ、といった具合です。“変面”呼ばわりされたドラえもんがちょっと気の毒になりました。



 もう一作、件から連想した藤子作品があります。異色短編『ミノタウロスの皿』です。
 
 件は顔が人間で体が牛ですが、『ミノタウロスの皿』のモチーフとなったギリシャ神話のミノタウロスは、件とは逆に、顔が牛で体が人間の怪物です。件は人頭牛身、ミノタウロスは牛頭人身、というわけです。そして、『ミノタウロスの皿』で描かれるイノックス星人は、二足歩行する牛の姿をしています。