第五回もーれつ!原恵一映画祭いん名古屋

 10月20日(土)、シネマスコーレにて「第五回もーれつ!原恵一映画祭いん名古屋」が開催されました。
 
 
 
 上映作品は『青空侍』。公式タイトルは『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』ですが、原監督がもともと同作のタイトルにしたいと強く思っていながら不採用となってしまったのがこの『青空侍』だったのです。そんな原監督の意思を汲んで、今回のイベントに関しては『青空侍』を表題化したのだそうです。
 
 ・『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』のポスター

 
 
 ・今回の上映会のパンフレット


 『青空侍』を劇場で観るのは初めてですから、もうそれだけでこの上映会が楽しみでなりませんでした。この名作を大きなスクリーンで観られる機会が訪れるとは!
 最前列に陣取って開始時間を待ちます。 
 上映が始まると、すぐさま作品世界へ誘い込まれました。
 観終えて、あらためて実感しました。掛け値なしの名作だなと。涙が浮かぶほど笑えて、涙がこぼれるくらいジーンとして、涙があふれるまでに切ない名作だなと。
 客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえてきました。劇場で他のお客さんたちと一体になって泣けるのも劇場鑑賞の醍醐味ですね。
 劇場で観るのは初めてでしたが、ビデオなどですでに何度か観ているので、又兵衛が最後にああなるのは知っていました。知っているにもかかわらず、今回も鮮烈な衝撃を受けました。何が起こったのか一瞬把握できない衝撃。ああ、そういうことかとわかったときの衝撃。この映画の最重要人物でありとてもいい人物である又兵衛がああなってしまうなんて…という衝撃。しんちゃんの映画でこんなことを描いてしまうのか…という衝撃。そうやってくどくどと「衝撃」の語をくりかえすと、この映画の持ち味から外れていきそうですが、そんな種々の衝撃のあとに訪れる切なさもたまりません。この衝撃の事態を受けて、しんちゃんはどう感じたのだろう、廉姫はどうするのだろう、といった問いも心の内に生じました。
 その問いは、ラストにしんちゃんや廉姫の心情・行動が印象深く描かれることで氷解し、廉姫の「おい、青空侍」の言葉で物語が閉じていく…。手放しのハッピーエンドがもたらしてくれるカタルシスはなくとも、「おい、青空侍」の一言のおかげで、モヤモヤの残らないスッとした気持ちで映画を観終えられました。そして、その一言が素敵な余韻となって胸に響き続けます。
 かといって、又兵衛の衝撃がすっかり解消されたわけではありません。その衝撃すらも素敵な余韻と手を結んで響き続けるのです。
 戦国時代の人物や風景や生活や道具などが地に足のついたリアリティをもって描かれ、合戦の様子なども綿密で、そういう篤実な描写にも見惚れました。
 缶ビールを飲む場面になると、客席のそこここから缶ビールのふたを開ける音が聞こえたのも楽しかったです。私はビールを飲むとトイレを我慢できなくなりそうなので飲まなかったのですが…。

 
 
 
 作品の上映が終わると、イベント主催のお二人によるトークの時間です。原監督の演出手法などについて言葉が交わされました。「人物の足元を映す」「風を吹かせる」といった演出が『青空侍』で見られるのですが、ほかの原監督作品にも共通の演出が見つかる、といったお話でした。

 
 
 物販のコーナーで、チューシン倉さんが刊行された「原恵一ファンならここにいる」を購入。原監督作品の解説と上映会イベントのレポートをまとめた充実と情熱の一冊です。
 
 「原恵一ファンならここにいる」というタイトル、どこかで聞いたことがあるような(笑) そう、このブログ「藤子不二雄ファンはここにいる」へのオマージュとして「原恵一ファンならここにいる」というタイトルにしたそうで、たいへん光栄に思います。チューシン倉さんとは、ゼロ年代中盤ごろ藤子不二雄ドラえもん関連のブログを運営している者同士としてネット上で知り合いました。そういう共通体験を経て今をすごしている仲間として、当時から連帯感のようなものを抱いています。


 
 イベントの終了後、シネマスコーレのご近所の「ロジウラのマタハリ」で懇親会が開かれました。


 
 
 
 
 
 
 店内は、原恵一ミニ展覧会の様相でした。
 そんな魅力的な景色のなかで、おいしい料理とお酒を味わいながら、原監督作品を中心にアニメや映画の話題で盛り上がれたのですから、なんともぜいたくな宴となりました。
 
 
 
 
 
 主催者・関係者の皆様、イベント・懇親会に参加された皆様、楽しい時間をありがとうございました!