「第6回モーレツ!原恵一映画祭in名古屋」で『河童のクゥと夏休み』鑑賞

 8月17日(土)、名古屋駅近くのシネマスコーレで「第6回モーレツ!原恵一映画祭in名古屋」が開催されました。私はここ数年毎回参加していて、今年も情報が告知されて間もなく予約しました。

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 ご覧のとおり、今年の上映作品は、2007年に公開されたあの名作『河童のクゥと夏休み』でした。

 何年かぶりに観たのですが、記憶にあった名作っぷり以上に大名作だと感動しました。名作だと知っていたのに、さらなる高みの名作だと思い知らされた…と申しましょうか。驚くほど心が動かされたのです。

 物語の前半ですでにちょくちょく目が潤み、後半はなんだか泣きっぱなしじゃないか…と自分で感じるくらいウルウル状態が続きました。掛け値なしにすばらしい映画です。

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 人間に父親を殺された河童の子ども・クゥと、小学5年生の康一ら上原家の人々との出会いと交流と友情。それは、少し不思議で、可愛くて、親しみやすい、日常と夢が融和したようなファンタジーの世界です。

 原監督の繊細で丁寧で新鮮な演出を随所で感じられ、豊饒な細部に魅了されて、映像作品に触れることの純粋な喜びを目一杯味わえました。

 楽しみました。和みました。癒されました。

 でも、ただ癒されるだけではすみませんでした。

 子ども社会でなかで日常的におこなわれるいじめ、クゥに向けられる容赦のない好奇のまなざし、河童を絶滅寸前に追いやった人間の罪業など、いくつものシビアな要素が絡んできて、心の深いところが痛み、揺さぶられました。ちょっと残酷な描写もあります。油断して観ていると、気持ちをグッと引き締められる瞬間が何度も訪れます。そこもまた、この映画の魅力です。

 

 現実のこの日本が猛暑の日に、「夏の暑さを(美術で)表現したかった」と原監督がおっしゃる本作を観たおかげで、現実の暑さと映画内の暑さがどちらもリアリティをともなって私の中でシンクロしました。

 映画のなかで描かれる川や海や風呂やペットボトルなど様々な水たちがじつに美しく、涼やかで、気持ちよさそうに見えて、たまらなく心誘われました。私もあの水を頭から浴びたい!と心底思えました(笑)

 

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 『河童のクゥと夏休み』本編の上映終了後は、感動の余韻にひたりながら、パイロットフィルムの上映と、原恵一監督(写真右)と美術監督・中村隆さんのトークショーとなりました。ロケハンについてや、アニメ作品の美術に関する考え方など、興味深いお話をいろいろとうかがえました。

 『河童のクゥ…』には、康一がクゥを連れて遠野へ旅するパートがあります。小学生が家族と一緒じゃない状態で東京から遠野まで旅するなんて、かなりの冒険です。「小5の男の子が初めての冒険に出るワクワクを感じてほしい」と原監督がおっしゃっていたのが印象的です。

 この映画はフランスでもよく上映されており、それを観て遠野を訪れたというフランス人もいらっしゃるそうです。私もいつか遠野へ行ってみたいです。

 本作に登場する少女・紗代子が、康一から遠野の旅について聞かされたとき「花巻にも行ったの?」と尋ねました。花巻は宮沢賢治のふるさと。紗代子は、宮沢賢治の作品が好きだったのです。その会話で紗代子の宮沢賢治好きを知った康一が、それまで読書家でもなかったふうなのに急に賢治の本を読もうとする…というシーンがあって、甘酸っぱさと「その気持ち、わからないでもない」という共感とで胸が少しきゅんとしました。

 いつか遠野へ行く機会があったら、花巻にも足を運んでみたいです。

 

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 毎年恒例の抽選会も開かれました。そして、例年のとおり私は何も当たりませんでした(笑)

 

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  チケットや入場者プレゼントが凝っていてとても素敵です。

 

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  このミニ巾着なんて、映画のあのシーンを観たら感涙モノですよ。中にはしっかりアレが入っています。

 

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 物販で、映画祭パンフレット(原監督と中村さんのサイン入り)、「原恵一ファンならここにいる②」(著者のチューシン倉さんからサインをいただきました)、そして、原監督ブロマイド(原監督のサイン入り)を購入♪

  映画祭パンフレットも「原恵一ファンならここにいる②」も、『河童のクゥと夏休み』の聖地巡礼記事をカラー写真入りで楽しめます。

 

 

 「第6回モーレツ!原恵一映画祭in名古屋」イベント終了後は、ありがたいことに、スタッフの皆さんの打ち上げに参加させていただきました。美術監督の中村隆さんも参加。会場は、シネマスコーレのすぐ近くのロジウラのマタハリさんでした。

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 『河童のクゥと夏休み』の感想を言い合ったり、中村さんに質問したり、料理もお酒もおいしくて、まことに濃くて楽しいひとときでした。

  

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 コラボメニューの「クゥライス」 と「きゅうりまるかじり」 !

 

 

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 打ち上げのなかで出た藤子関係の話題をちらりと紹介すると、中村隆さんは藤子Ⓐアニメと縁があって、『プロゴルファー猿』『ウルトラB』『笑ゥせえるすまん』などで美術の仕事をなさったそうです。 その頃は美術監督じゃなく「下っ端だった」というのは中村さんの弁です。

 

 私の前に座られた男性がフリーのアニメーターさんで、リニューアル後のアニメ『ドラえもん』の原画をやられた時期があったそうです。

 『河童のクゥと夏休み』にオッサンという犬が登場します。オッサンは前の飼い主にいじめられていました。飼い主がまだ小さかった頃はかわいがってくれたのに…。その関係性が『ドラえもん』の「ドロン葉」におけるベソ(犬)とキョーボー(飼い主の少年)の関係を思い出させる…というお話が出て、そのお話をされた方がアニメ『ドラえもん』で「ドロン葉」の原画を担当されていた…と知ったときはテンションが上がりました♪

 

 ご一緒させていただいた皆様、ほんとうにありがとうございました!