マスクが日常化した世界の中で

 きのう(4/29)「朝日新聞」に掲載された全面広告のドラえもんは、新型コロナウイルス予防のためしっかりマスクをしていました。

 そんなふうにマスクをした人が巷でぜんぜん珍しくなくなった……といいますか、外出するならマスク姿であることが当たり前になった今日このごろ。マスク不足で騒ぎになったり、国から全世帯にマスクが配布されることになったりと、マスクをめぐるニュースも事欠きません。

 

 そんなマスクが日常化した現在の世界にあって、私が、この手のマスクをしたキャラクターで強烈に思い出すのが、『笑ゥせぇるすまん』の「プラットホームの女」に登場した影野映子さん(21歳)です。

 

 サラリーマンの直木純一(23歳)は、通勤時に駅のプラットホームでいつもある美女を見かけます。その美女は、常に白いマスクをしています。

 純一は、彼女に惚れています。惚れているものの、ただ同じ電車に乗るだけの関係で、見ず知らずの相手ですから、ただこっそりと憧れているだけ。

 そんなとき、喪黒福造が純一の前の現れ、彼女と純一を仲立ちすると声をかけてきたのです。

 一度は喪黒の誘いを断った純一ですが、結局自力ではどうすることもできず、喪黒に仲立ちを依頼することに……。

 純一が惚れているプラットホームの美女が、影野映子さんです。

 

 喪黒のおかげで、翌日の晩、彼女が純一のアパートを訪問してくれることになりました。

 アパートを訪れた彼女は、いつものようにマスクをしています。

  ついに、純一は彼女と初めて言葉を交わすことに!

 

 彼女は声を出すとき、口から「ヒューーー」という空気が漏れるような音を出し、話し方がちょっとカタコトで不自然な感じです。

 彼女はいきなり、結婚してほしいと言ったら結婚してくれますか?と純一に尋ねます。初めて会話する男性に結婚してくれますか?と尋ねるなんて、もうそれだけでだいぶ変だし、何か裏がありそうな気がしてきますが……

 純一は「そ そりゃ モ モチロン!!!!」と即答します。

 すると彼女は、私のことを何も知らないのに?とさらに尋ねます。

 純一は言い切ります。「でもあなたのそのツブラなウツクシイひとみをみれば あなたのすばらしさがわかります!」

 

 ここまで話が進むと(いや、もっと前の場面から)、読者はこの美女のマスクの下に何らかの秘密があるのだろう、マスクを外したら驚きの真実が明らかになるのだろうと、ドキドキ、ヒヤヒヤすることになります。

 そして、ついに彼女がマスクを外すときがくるわけですが、マスクを外した彼女の顔は普通に美女なのです。普通に美女、という言い方もなんかおかしいですが、純一が「そんなキレイな顔なのにどうしてマスクなんかしてたんです……」と言ってしまうくらい、マスクで覆い隠す必要のない整った美しい顔立ちだったのです。

 読者は、「え?じゃあマスクは何だったの?」と拍子抜けする間(ま)もなく、すぐさま衝撃の真実に直面します。

 マスクを外したら普通に美女だった……というのは一種のフェイントだったのか!と思わされる真実が、純一に、そして読者に突きつけられます。

 アパートの一室から響き渡る純一の悲鳴……。

 

 具体的にどんな結末が訪れたかここでは触れませんが、ともあれ、そういう話ですから、影野映子さんという存在は、マスクをしているというそのことで私の心を穏やかならざるものにしてくれるのです(笑)

 

 「プラットホームの女」のトビラに描かれた喪黒福造もマスクをしていますが、口の両端がマスクからはみ出しています。鼻はすべて露出しています。

 これでは予防効果がほとんどありません。

 喪黒には通常サイズのマスクではあまりに小さすぎるのです(笑)