クリストファー・ノーラン監督の『テネット』を観た

 クリストファー・ノーラン監督の映画『TENET テネット』を劇場で観てきました。

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 逆再生したような光景と時間どおりに進んでいる光景が一つの画面に同居する…という不可思議な映像にひたすら目を奪われました。

 “逆行と順行の共存”というアイデアを、精密に、ハイテンポに、美しく、迫力たっぷりに映像化していて、それを劇場のスクリーンで観る!という映像体験ができただけでだいぶ満足です。

 

 一つのシーンに複数の時間軸が交差して、やたらと情報量が多い映画なので、細かいところは一度観ただけでは理解が追いつきませんが、まさにその時間軸の交差が迫真的に映像化されたことがすばらしいのです。なんだあのカーチェイスは!なんだあの戦闘シーンは!と今までどんなフィクションでも観たことのない光景に驚喜しました。

 

 2度目を劇場で観ることはできなそうですが、2度、3度、4度と繰り返し観返したくなる映画でした。とくに前半パートにこめられた意味や仕掛けられた伏線がわかったうえで鑑賞すると、見えてくる世界が初見時とずいぶん違って感じられそうです。DVDなど映像ソフトで一時停止や早戻しを何度もしながらこってりと観たくなる映画でもあります。

 

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 この映画のパンフレットで、山崎貴さんが『テネット』から藤子・F・不二雄先生を想起しています。

「この作品は、僕には、まるで藤子・F・不二雄先生が描いたスパイアクションみたいに思えるんですよ。非常に「ドラえもん」的な何かを感じるんです。」

 

 SNSを見ていると、山崎さん以外にも、F作品を思い出した人は結構いらっしゃるようです。

 ネタバレになるので具体的には触れませんが、私も藤子F味を感じるところはありました。そもそも、こういう時間SFに触れるとF作品を思い出しがちな私ではありますが…。 

 

 ノーラン監督の作品だと、私は『インターステラー』からいろいろと藤子F味を感じました。どんなところでF味を感じたかは、こちらで書いています。

 ■映画『インターステラー』と藤子F作品

 https://koikesan.hatenablog.com/entry/20150118

 

 共通のSF的題材を、F先生は平易に咀嚼して描こうとしたのに対し、ノーラン監督は、一度の鑑賞では理解が追いつかないくらい難解チックに描いている、という印象を私はおぼえます。

 そのうえでなお、両者とも極上のエンタメを作ろうとしている点で通じ合うものがあるような気もします。