『未来は予測するものではなく創造するものである』

『未来は予測するものではなく創造するものである ―考える自由を取り戻すための〈SF思考〉』 (樋口恭介著・筑摩書房、2021年7月9日発売)

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 著者の思いが熱く伝わってくる、SFプロトタイピング・SF思考の解説書です。SFプロトタイピングとは、乱暴なほど簡潔に言えば、SF的な思考やSFの物語をビジネスにつなげていく手法です。本書ではさらに、そうしたSF的思考やSF物語がこの現実世界の未来を想像し創造するために必要なものとして熱意を込めて説かれ、それを実践することの素晴らしさが語られています。

 

 本書のあとがきで「SFが人工知能技術の発展にもたらした影響を調査する」企画が紹介されています。その調査によって、VR研究者やヒューマノイドロボット研究者、AI研究者など先鋭的な研究者たちがいかに『鉄腕アトム』や『ドラえもん』から影響を受けているか……といったことが浮き彫りになったそうです。

 

 本文のほうでも、こんなことが書かれていました。

日本のSFで言えば、『ドラえもん』や『機動戦士ガンダム』は当然ながらフィクションであり、規定路線の現実をなぞっていくだけでは絶対に存在しえないものですが、それらは現実から遊離することでフィクションとして存在することが可能なのであり、フィクションだからこそ、多くの人に影響を与え、現実に影響を与えることが可能となっています。それらの作品に触れた子どもたちが、大人になって研究者やエンジニアになり、そしていまでは彼らのような研究者やエンジニアの手を介して、フィクションだったはずの『ドラえもん』や『ガンダム』が、現実的そのものを、実装レベルで変えつつあるのです。

 

 藤子ファン目線で言えば、藤子・F・不二雄先生が想像力を羽ばたかせて創作した『ドラえもん』が、想像力豊かなフィクションであることによって、この現実の未来を変えることに影響をおよぼしている、ということであり、『ドラえもん』好きとして実に胸の高鳴る話だなと感じるのです。