きのう(3/5土)、TVアニメ『ドラえもん』で「ドンジャラ村のホイ」が放送されました。リアルタイム放送では見られませんでしたが、録画したものを当日中に視聴できてよかったです。
おおむね原作に忠実な設定と展開で、個人的には好感度の高いアニメ化でした。
「ドンジャラ村のホイ」の原作マンガが描かれた1984年当時は世間でエリマキトカゲのブームが巻き起こっており、作中のエリマキガエル騒動はそのブームを反映させたものです。
あれから34年もすぎた今、新しいアニメのなかでエリマキガエルのくだりがどう扱われるか気になっていました。
見ると、原作どおりエリマキガエル騒動が描かれましたが、やはり今の子どもたちにはエリマキガエルの元ネタとなるエリマキトカゲに関して説明抜きに話を進めるわけにはいかなかったようです。エリマキトカゲとは昔流行っていたらしい生き物でとりあえずジャイアンやスネ夫たちも存在を知っている、というシーンが補われました。
今回の「ドンジャラ村のホイ」で描かれた“木にぶら下がった3人分のみの虫式ねぶくろと、夜空に浮かんだまるお月さま”が、まさに絵になる景色で感嘆しながら見とれました。ドンジャラ村のクンちゃんが歌って踊るシーンもすてきだったなあ。
そして、エリマキネズミに無理やり運ばれるドラえもんの断末魔のごとき絶叫が耳に残りました(笑)あれは彼にとって世にもおぞましい恐怖体験だったことでしょう。
ところで、「ドンジャラ村のホイ」の原作マンガは「コロコロコミック」1984年7月号で発表されました。当時展開されていたグリーンドラえもんキャンペーンの一環として藤子・F・不二雄先生が描き下ろしたもので、自然保護がテーマでした。
ドラえもんとのび太は、手のひらに簡単に乗るほど小さな小人族の少年ホイくんと出会い、大人族(われわれのサイズの人間たち)の自然破壊のせいでホイくんの村が消失し家族が行方不明になったことを知ります。そこでホイくんの家族を探し、小人族の新たな居住地を見つけようとする…といったお話です。
そんな「ドンジャラ村のホイ」を読んだ翌月の「コロコロコミック」1984年8月号から連載が始まったのが『大長編ドラえもん のび太の宇宙小戦争』でした。映画の原作となるこの作品にもホイくんと同じくらいのサイズの小人(こちらは宇宙人ですが)が登場したので、当時リアルタイムで読んでいた私は「おお、また小人だ!」と思ったのを覚えています。
・「ドンジャラ村のホイ」掲載の「コロコロコミック」1984年7月号
・『大長編ドラえもん のび太の宇宙小戦争』連載の「コロコロコミック」1984年8月号~85年1月号
後年になって、当時のF先生のなかでは小人がマイブームだったのかしら、と思ったりしました。ある藤子ファンのかたが「次の大長編ドラえもんで小人をがっつり描くことになるので、その筋トレ的な意味合いもあって「ドンジャラ村のホイ」を描いたのではないか」と考察されていました。むろん真相は今となってはわかりませんが、なるほど、と思いました。
ともあれ、「ドンジャラ村のホイ」→『のび太の宇宙小戦争』と小人のお話が連続したのは、当時なかなか印象的な出来事でした。今この2作品を読み返してみても、小人のためにしずちゃんの人形の家を使ったり、のび太らがスモールライトで小さくなって巨大なおやつを食べる、といった具体的な符合がいくつも見つかって、両作品の親密なつながり具合をあらためて実感します。
そんな「ドンジャラ村のホイ」がリニューアル後(声優さん交替後)のTVアニメ『ドラえもん』で初めて放送されたのが、きのうだったわけです。
※【訂正】「ドンジャラ村のホイ」がリニューアル後初めてアニメ化された、と書きましたが、コメント欄でマコトさんよりご指摘いただいたとおり、すでに一度アニメ化されていました。2007年12月31日放送の大みそか特番にて「のび太の小さな小さな大冒険」という題名で放送されたのです。このときは原作から大幅にアレンジされていた印象です。
原作初出時は「ドンジャラ村のホイ」を読んだ翌月から『のび太の宇宙小戦争』の連載を読むという順番だったのに対し、今回は『のび太の宇宙小戦争』の最新映画を見た翌日に「ドンジャラ村のホイ」の新作アニメを見ることになり、なんだか1984年当時と現在が交差したような不思議で楽しい感覚を味わえました。
といったところで、アニメ「ドンジャラ村のホイ」の前日に見た映画『のび太の宇宙小戦争2021』について少しだけ…。
この映画を劇場で見た当日のブログでも書いたとおり、本作の具体的な内容にはまだ触れずにおきますが、現時点で言っておきたいことを箇条書きにします。
・原作にない新キャラクターを加えてくる方法でのリメイク作としては、ピッポを加えて傑作とした『新・鉄人兵団』に匹敵するほどよくできたリメイク作だと感じた。(新キャラクターの使い方自体は『新・鉄人兵団』のほうが見事だったと思うけど、作品全体の出来具合としては匹敵していると感じた)
・ロコロコの尻尾フリフリがキュートだった😍
・キュートといえば、しずかちゃんがびっくりするほどかわいく描かれていた。
・それぞれのキャラクターの魅力や持ち味を旧作以上に引き出そうと試みた作品だと感じた。
・怖い、という感情と向き合った作品だった。
・多くの人が感じたように、この映画を見ているあいだ、いま現実の世界で起きている出来事と重ねずにはいられなかった。公開が1年延期されたことによってこんな巡りあわせになるとは……。現実の世界でも、独裁者の行く末が映画のようになりますように、と祈るばかり。
本当なら、映画ドラえもんはいっときでも現実を忘れるために見たいのだけれど、今回はどうしても現実を思い出さずにはいられなかった。