巨大花と食虫植物

 もう5ヶ月ほども前の話ですが、今年の1月、大型スーパーのカプセルトイコーナーで「巨大花と食虫植物」を見つけ、2回まわしてみました。

 とくにウツボカズラが出てほしい、と願いながら。

 結果、ラフレシアウツボカズラがひとつずつ出ました。よかったです。

 

ラフレシア

 

ウツボカズラ

 

 どちらも、子どものころ好奇心をそそられた植物です。ラフレシアは「世界一大きな花」として書籍や雑誌でよく紹介されていましたし、食虫植物はやはり「植物が虫を食っちゃう!」という怪奇的・怪物的なイメージに子ども心を刺激されました。

 

 私が食虫植物に興味もつようになった要因の一つが、小学生のころ読んだ『魔太郎がくる!!』の一編「うらみ念法のろいゴケ」です。

 「うらみ念法のろいゴケ」は食虫植物を題材にしたエピソードで、ラストに魔太郎が行なう復讐でも食虫植物が使われるくらい、食虫植物がクローズアップされます。食虫植物の採集旅行から帰ってきた青三郎おじさんが魔太郎の家を訪れ、食虫植物について魔太郎に教えるコマが食虫植物のミニ図鑑のごとき状態になっています。

・『魔太郎がくる!!』「うらみ念法のろいゴケ」(「週刊少年チャンピオン」1973年23号)より引用

 

 こうした図解・豆知識コーナーみたいなコマを見た小学生時代の私は、そこに強く興味を刺激されたのです。

 このコマでは、ご覧のとおりウツボカズラ、サラセニア、ムシトリスミレ、ハエトリソウの4種が図解されています。各食虫植物によって、虫を捕食する方法に個性があっておもしろいです。

 当時の私は、ウツボカズラとハエトリソウはすでに知っていた気がしますが、サラセニアとかムシトリスミレはぜんぜん知らなかったはずです。この話を読む前から多少なりとも興味を誘われていた食虫植物という存在に、ますます強く引きつけられたのが、このコマを読んだときでした。

 『魔太郎がくる!!』には、こうした博物学的関心を喚起してくれる話がいくつもあります。

 

 2014年の夏に足を運んだ大阪の「咲くやこの花館」の『虫を食べる植物展』では、それら4種の食虫植物ぜんぶの生きた実物を見られました。「おお!! あの『魔太郎がくる!!』で読んだ食虫植物が勢ぞろいじゃないか!」と感激しました。

 

ウツボカズラ

 

・サラセニア

 

・ムシトリスミレ

 

・ハエトリソウ

 

 と、こんなふうに、ウツボカズラ、サラセニア、ムシトリスミレ、ハエトリソウの本物を見られたのです。

 

 上述のとおり、私は食虫植物の怪奇的・怪物的イメージに心を誘われていたわけですが、ハエトリソウなんて見るからに怪物的な姿をしていて、子ども心に食虫植物のなかで最も魅力的に感じられました。ハエトリソウの別名に「ハエジゴク」という言い方があって、怪物とか妖怪みたいなイメージがいっそう強まります。

 妖怪ハエジゴクって、なんだかいそうですもの(笑)

 

 再び「うらみ念法のろいゴケ」の話に戻ります。

 食虫植物について解説した青三郎おじさんは、魔太郎にお土産としてモウセンゴケを渡します。魔太郎はモウセンゴケを観察しているうちに、その旺盛な食欲から秘境探検映画に出てくる人食い花を連想。そんなモウセンゴケの性質を使って、自分にひどいことをした上級生に復讐することを思い立ちます。

 復讐を終えた魔太郎は「あのモウセンゴケ 養分のとりすぎで きっと腹をこわすぞ!!」と言います。言葉ではモウセンゴケを心配するようなことを言う魔太郎ですが、同時に「フフフフ」と笑い声をこぼし、復讐をなしとげた喜びを隠せないようです。

 このモウセンゴケを使った復讐シーンを読んだおかげで、食虫植物に対する怪物的なイメージが私のなかでいっそう増幅したのでした。

 

 「咲くやこの花館」で開催された『虫を食べる植物展』では、モウセンゴケの実物も見られました。

モウセンゴケ

 「うらみ念法のろいゴケ」で描かれた、モウセンゴケが巨大化して動き出し人間を襲うシーンを思い出しながらモウセンゴケの実物を眺める体験は、なかなかオツなものでした(笑)そう思いながら眺めていると、目の前のモウセンゴケの姿が異様に不気味なデザインに見えてきたりもしました。

 

 ちなみに、「咲くやこの花館」にはラフレシアの標本も展示されています。

ラフレシア

 ラフレシアの生きた状態のものを日本で見るのは難しそうですから、実物の標本を見られただけでもじゅうぶんに嬉しいです。

 「ラフレシア」という語感からパッと思い浮かぶのが少女雑誌「ラフレジア」です。

 そんな少女雑誌あったっけ?とお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、これは架空の少女雑誌です。『ドラえもん』の「大人気!クリスチーネ先生」(てんとう虫コミックス37巻収録)に出てくるのです。

 クリスチーネ・剛田(ジャイ子)が『愛フォルテシモ』という新作マンガを描いて新人賞に応募します。その新人賞の結果が発表されたのが「ラフレジア」という少女雑誌だったのです。ジャイアンが「今週号」という言い方をしていることから、週刊の雑誌であると思われます。

 じっさいのところ「ラフレジア」というのは「ラフレシア」をもじったネーミングなのかしら……。そのへんはF先生に聞いてみないとわかりませんが、可能性はそれなりにありそうです。