大竹宏さん逝去

 ベテラン声優の大竹宏さんが亡くなりました。

声優の大竹宏さんが8月1日に急性心不全のため死去した。90歳。所属事務所が9日、公式サイトで発表した。

https://www.oricon.co.jp/news/2245187/full/

 

 私が小さかったころ・若かったころから楽しませてくださってきた著名人の訃報に触れる機会が近ごろ多くなって、つらいです。

 

 大竹さんは日本のTV放送が始まった初期の時代から活躍してきたレジェンド級の声優さんです。藤子不二雄原作のTVアニメの主だった役だけでも、『オバケのQ太郎』(モノクロ版)の小池さん、『怪物くん』(モノクロ版)のドラキュラ、『ウメ星デンカ』のベニショーガ、『キテレツ大百科』のブタゴリラ(初代)など、多くの藤子キャラを演じてくださっています。

 そして、大竹さんが演じた藤子キャラで私が最もいとおしく感じるのは、『パーマン』のパーマン2号(ブービー)です。

 

 大竹さんはTBSのモノクロ版『パーマン』でもテレビ朝日のカラー版『パーマン』でもブービーを演じています。

 ブービーの声は大竹さん以外ありえないのです。

 私の偏った思い入れを省いて客観的に見ても、大竹さんが数多くつとめられたさまざまな役のなかで最も代表的なキャラクターのひとつがブービーではないでしょうか。

 

 TBS版とテレ朝版があるなか、私が夢中になって観ていたという点では、テレ朝版『パーマン』のほうに強い思い入れと思い出があります。1980年代藤子アニメブームの時代でした。当時の私は中高生くらいの年齢でしたが、自分の半生のなかで最も藤子作品に熱狂し傾倒し依存していた時代であり、当時放送されていたアニメ『パーマン』にも非常に熱中していたのです。

 

 大竹さんは、ウッキーとかウキャキャといったチンパンジー語(擬音語)だけを駆使してブービーの感情や意思をとても自然に、とても豊かに、とても愉快に表現してくださいました。仲間のパーマンたちがブービーチンパンジー語をちゃんと理解していたように、私までがそれを聴き取れて理解できているような気分にさせてくれたのです。それは大竹さんの演技力の賜物。大竹さんにブービーが憑依していたのではないか、と思いたくなるくらいです。

 

 ということで、大竹さんの訃報に触れた日の晩はテレ朝版『パーマン』の数話を観返して大竹さんに思いを馳せました。

 観返したのは「夫婦ゲンカはブービー迷惑」「ブービー野性にかえる」「ブービーとってもしあわせ」「ブービーの恩がえし」といった、ブービーが中心となるお話です。 

 「夫婦ゲンカ…」では、ブービーがひとつの部屋に5人もいることになって「ドラえもんだらけ」ならぬ「ブービーだらけ」状態に。「ブービーの恩がえし」でのブービーの強烈なコスプレにも目を奪われました。

 

 テレ朝版『パーマン』のなかには、通常は動物語(チンパンジー語)しか話せないブービーが人間語(日本語)で話す回もわずかながらありました。「ブービーの悩み」とか「もっとほしいパーマンパワー」といった話です。ブービーの声色をした大竹さんが発する日本語を聴けるのが貴重な回でした。

 

 大竹さんが演じた役のうち藤子アニメ以外で個人的に懐かしくて思い出深いキャラクターを挙げれば、『マジンガーZ』のボス、『Dr.スランプアラレちゃん』のニコチャン大王、『まいっちんぐマチコ先生』の校長先生などです。ピンポンパンのカータンにも幼いころたいへんお世話になりました。

 

 大竹宏さんのご冥福をお祈りします。