豊橋まんが家まつり

 11日(日)愛知県の豊橋市で「豊橋まんが家まつり」というイベントが開催されました。
 http://www.slowtown.info/2012/event3.php#01

 会場は豊橋駅からほど近い名豊ビル7階。5人の漫画家さんによるトークショーでした。
 
 入場して席についた5人の漫画家さん。


 
 河井克夫さん(豊橋出身)、大橋裕之さん(蒲郡出身)


 
 古泉智浩さん、しまおまほさん、花くまゆうさくさん


 河井さんと大橋さんは地元の三河地方出身なので、地元話で花が咲きました。とくに河井さんは豊橋出身なので、故郷に錦を飾る?格好。
 
 河井さん、古泉さん、花くまさんは、いわゆる「ガロ」「アックス」系の漫画家さんで、大橋さんとしまおさんも皆さんと仲良しグループだそうです。


イベントは3部構成で、1部はトークショー、2部は花くま、古泉、河井各氏が自主制作した短編映画上映、3部は質問コーナーでした。
 皆さんのトークが実に面白くて、3時間ほどのイベントがあっという間に感じられました。


 河井さんと花くまさんが、蛭子能収さんへのリスペクトを熱く語っていたのが印象的でした。蛭子さんが「ガロ」に登場したときの衝撃、その凄さ、その影響力が伝わってきました。


 会場が最も大きな笑いで包まれたのは、花くまさんのこんなお話だったんじゃないでしょうか。
「僕は10代の頃プロレスラーになりたかったが、レスラーになるには背丈が足りなかった。そこで雑誌の通信販売で背が伸びる食品的な物を買ったのだが、ぜんぜん背が伸びなかった。でも、なぜか爪だけが伸びた」
 花くまさんの“こし餡”への偏愛っぷりも素敵でした。こし餡と思って買った品がつぶ餡だったときは、絶望的な気持ちになるそうです(笑)


 古泉さんは現在、東京でマンガ教室を開講しているのですが、将来は教え子を育て上げて「UFCで優勝したホイス・グレイシーが「兄ヒクソンは私の10倍強い」と言ったみたいに、自分の教え子が売れっ子になったら「師匠の古泉先生は私の10倍面白い」と言ってもらいたい」との野望をお持ちのようです(笑)


 大橋さんが、好きなマンガとして楳図かずお先生の『漂流教室』『わたしは慎吾』を挙げたら、皆さんから「影響を受けているように見えない」とツッコまれていたのも面白かったです。


 トークイベントが終わったところで、花くまさんとツーショット写真!
 
 この写真から藤子ネタを指摘すれば、背景にある「東映まんがまつり」のポスター(向かって左側)の中に『怪物くん』がいます。1969年3月18日に公開されたものです。


 それぞれの漫画家さんの著書にサインをいただきました! ありがとうございます!!!
 
 


 
 
 河井さんには、サインをいただくさい「『女の生きかたシリーズ』(青林工藝舎、2003年)が好きで、とくに『画鋲女』や『食べる女』が面白かったです!」と伝えました。『女の生きかたシリーズ』はタイトルのとおり、いろいろな女の生き方を描いた短編集なのですが、それぞれの作品で画風が描き分けられていて、内容的には不条理だったりシュールだったりブラックだったりナンセンスだったりと一筋縄ではいかない奇妙さがあふれています。
 大橋さんの『夏の手』のみっちゃんと、古泉さんの『ライフ・イズ・デッド』の消子ちゃんは、私からキャラをリクエストして描いていただきました。


 古泉さんの『ライフ・イズ・デッド』(双葉社、2007年、新版2012年)は、いわゆる“ゾンビもの”として括ることができます。
 アンデッド・ウイルスが地球規模で蔓延。このウイルスは噛みつきや性交渉によって感染する。感染者は、しばらくの潜伏期間のあと発症し、次第に運動機能が衰え、時おりゾンビ化するようになり、死を迎えたあと完全なゾンビとなる。主人公の青年は性交渉で感染し発症、症状はレベル3の段階にある……。そんなところから物語は始まります。
『ライフ・イズ・デッド』のインスパイア元となったゾンビマンガの一つが、花くまさんの『東京ゾンビ』です。
 
 ・『東京ゾンビ』(青林工藝舎、1999年)
 江戸川区にあるゴミの山、通称“黒富士”は、通常のゴミばかりじゃなく、人の死体を埋める場所としても知られていた。そんな黒富士に埋められた死体が動き出し(ゾンビ化し)、人間を襲って噛む事件が発生。ゾンビに噛まれた人もまたゾンビになる。政府が公式にゾンビの存在を認めた頃には、東京はゾンビだらけ。黒富士からゾンビが登場して5年後、世の中の仕組みは様変わりし、生き残った人間たちは高い壁を作って、その内側に住んでいた。そこでは、一部の金持ちが支配階級となり、その他の普通の人々は皆ドレイにされていた。そんな状況のなか、金持ちのストレス解消のため“ゾンビファイト”なるショーが行われるようになった。それはゾンビとドレイの格闘ショーだった……。


 と、こうした『ライフ・イズ・デッド』や『東京ゾンビ』の話をしたところから、当ブログのテーマである「藤子不二雄」とあえて結びつけるとすれば、真っ先に思い出されるのが藤子・F・不二雄先生の少年向けSF短編『流血鬼』です。
 マチスン・ウイルスがついに日本でも猛威をふるいだした。このウイルスに感染した人は、いったん死んだようになったあと再び動き出し、吸血鬼となる。吸血鬼に噛まれるとウイルスは感染するし、空気感染もするようだ。自分の住む世界の人々の大半が吸血鬼になった状況下で、主人公の少年は、吸血鬼と戦い続け、人間であることを死守しようとする……。そうして訪れる驚きの結末!
『流血鬼』は、よく指摘されるように、リチャード・マシスンの『吸血鬼』(『地球最後の男』『アイ・アム・レジェンド』といった邦題もある)を翻案した作品です。マシスンの『吸血鬼』は、その後のゾンビ映画に多大なる影響を及ぼしているそうです。

 
 豊橋まんが家まつりの話に戻りましょう。
 トークショーが終わってから、5人の漫画家さんと飲み食いできるアフターパーティーに参加しました。会場は名豊ビルから遠くないところにあるイタリアンレストラン。
 
 漫画家さんがローテーションで席を移ってくださったので、5人すべての方とおしゃべりすることができました。
 トークショーも面白かったけれど、パーティーでは漫画家さんと直接会話できるし、お酒も飲めるので、より刺激的で興奮しました(笑)


 当ブログのテーマ「藤子不二雄」に関連した話題を紹介します。
 河井さんはあるパーティー会場で長嶋有さんから藤子A先生を紹介してもらったことがあり、そのさい某短編作品の話題になった、とのこと。
 大橋さんもパーティー会場でA先生と一度だけ会ったことがあって、「『夢魔子』が好きです!」と伝えたそうです。ぶきみな5週間『鎖のついた武器』の話も出ました。
 しまおさんは、子どもの頃「コロコロコミック」を愛読していた、というお話を聞かせてくれました。


 
 ・古泉智浩さんと
 古泉さんとは同学年だということが判明して盛り上がり、がっしりと握手(笑)


 
 ・しまおまほさんと
 しまおさんというとデビュー作の『女子高生ゴリコ』が鮮烈な印象でした。
 
 ・『女子高生ゴリコ』(扶桑社、1997年)
 
 ・しまおさんのサインとゴリコ!(これは今回描いてもらったものじゃありません)
『女子高生ゴリコ』はもともと、しまおさんが高校生の頃わら半紙の裏面に描いて友達のあいだで回し読みしていたマンガで、それが中森明夫さんの目にとまってプロ漫画家デビューとなったのです。


 大橋さんに、北石器山高校超能力研究部の3人を色紙に描いていただきました! 大橋さんの最近作『シティライツ』の登場人物のなかでも特に好きなのがこの3人組なので、とても嬉しいです!
 
 
 ・『シティライツ』1〜2巻(講談社、2011〜12年)。3巻は今月22日発売予定!


 パーティーのラストは、漫画家さん5人が並んでの撮影タイム。
 
 その後お一人お一人と握手して店を出たのでした。


 皆さん、楽しい時間をありがとうございました!