先日、名古屋市内の古書店で見つけた「週刊TVガイド」昭和56年5月29日号です。
店ではビニールに入っていて中身を見られませんでしたが、表紙に大きく「トキワ荘探訪」とあったので購入しました。
同年5月25日(月)に放送されたNHK特集『わが青春のトキワ荘 ~現代マンガ家立志伝~』に関する記事が載っていて、トキワ荘の基本事項を紹介する文章とともに、寺田ヒロオ先生(テラさん!)のインタビューを読むことができます。記者が茅ヶ崎のテラさん宅を訪問して話を聞いています。その話のなかから、特に印象的な発言を紹介しましょう。
●「ボクは血の汗を流す野球や郷土の誇りのために戦うなんて野球は嫌いで… 自分の汗を流して、原っぱにひっくり返って青い空をみるような草野球が好きなんです」
●「試験は何点、もうけはいくら、雑誌の部数はどれだけ、人気マンガベストテンは、視聴率はとか、悲しいですネ。数字がすべてなんて、決していい結果は生まれないだろうと思います」
●「普通、家族って突拍子もないことでは笑いませんよネ。なにげない、あたりまえの事でもおかしいものですよネ。漫才がないと笑えないというのは、とても不幸なことじゃないでしょうか」
子どものための良心的なマンガを追求し続けた、まことにテラさんらしい言葉です。テラさんは生涯「漫画少年」の精神を理想とし、その精神に忠実であろうとされたのだよなあ、とあらためて感じ入りました。 そして、これらの言葉は、時代をこえて現在の社会にも鋭く刺さり、どんな時代になっても失われるべきではない理念として深く響くものだと思います。現実的には、テラさんが訴える理想のとおりにはなかなかいきませんし、私は、テラさんが好ましくないと感じるもの(上記のインタビューでいえば、血の汗を流す野球や数字による評価や漫才ブームなど)もいろいろとあってよいと思うのですが、テラさんが語るような理想が完全に置き去りにされてしまうような社会はやはり危ういとも感じるのです。
この号のコラムにおける『わが青春のトキワ荘』評がちょっと辛口なのも印象深いです。
このコラムを書いた(泉)という人物は、おそらくコラムニストの泉麻人さんだと思います。泉麻人さんは「週刊TVガイド」の編集部に所属していたことがあって、この号が発売された昭和56年はまさにその時期にあてはまるので、間違いないでしょう。
のび太のママ役の声優・千々松幸子さんを紹介する記事も見つけました。
このころの千々松さんは「犬のあくび、遠ぼえを研究中」だったんですね♪