藤子・F・不二雄先生のご命日に『モッコロくん』を読む

 本日(9月23日)は、藤子・F・不二雄先生のご命日です。

 すばらしい作品、魅力的なキャラクターを数多く残してくださったことにあらためて感謝しつつ、ぴっかぴかコミックス『モッコロくん』を読み返して先生を偲びました。

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『モッコロくん』は、小学校に上がる前の私が初めて好きになった藤子マンガ。自分の藤子ファン道の原点だと思っています。

 

 生まれて初めて読んだ藤子先生のマンガは、おそらく小学館の幼年雑誌に載っていた『新オバケのQ太郎』(そうじゃなければ『ドラえもん』)だったと思うのですが、なにぶん記憶がおぼろげで、確実なことは言えません。

 自分の過去を振り返って、「このマンガ、好き!」と感じた記憶がはっきり残っている最初の藤子マンガが『モッコロくん』なのです。

 

『モッコロくん』は、1974~75年に小学館の「幼稚園」「小学一年生」で連載されました。私は保育園児のころ「幼稚園」誌で読んでいました。

 しかし、連載終了後、ほんとうに長いあいだ単行本化されませんでした。幼年マンガは単行本になりづらいのです。

 そんななか、2005年9月に「ぴっかぴかコミックス」のレーベルからついに『モッコロくん』が刊行されたときは、大いに歓喜したものです。

 連載終了からおよそ30年の歳月を経ての初単行本化でした。

 そして、2011年には藤子・F・不二雄大全集版も発売され、全話収録されることになりました。

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 当時(1974年度)「幼稚園」誌で『モッコロくん』を読んで、大人になってもずっと忘れなかった話が何編かあります。

 アオムシに新幹線の塗装をほどこす話、アメンボのように水面に浮かぶ話、暴れるゾウを巨大カブトムシが制御する話などです。とくに、アオムシに新幹線の塗装をほどこす話(「特急アオムシ号」)は非常に印象深く憶えていて、思い出すたびに懐かしくワクワクした気持ちになります。話の内容を憶えているというより、新幹線と化したアオムシのビジュアルをよく憶えているのです。

 

 藤子F先生のマンガのなかには、雲の上を遊び場にする話がいくつかありますが、『モッコロくん』の「すてきな遊び場」という話は、木に張り巡らされた蜘蛛の糸の上を遊び場にしてしまう話です。雲と蜘蛛の糸、どちらの場所も現実的には上に乗っかって遊ぶことはできません。できないがゆえに、あそこで遊んでみたいなあという夢が膨らみます。

「すてきな遊び場」には、いつもの空き地が年上の子たちに占拠されてしまって遊べない…という展開もあって、それは『のび太の宇宙開拓史』でも見られますね。

 

『モッコロくん』の「地面のなき声」は、7年前地中に潜ったセミの幼虫がいざ羽化のため外へ出ようとしたら地面が舗装されていて出られない…という話です。怪談テイストの演出も含め、『エスパー魔美』の「地底からの声」に通ずるエピソードです。

 

 また、「ゾウとたたかえ」という話に、動物園のゾウが暴れ出したから殺すことになった…というくだりがあります。そこのところを読むと、空襲でゾウが逃げ出して暴れ出すと大変だから殺すことになった…というエピソードが描かれた『ドラえもん』の「ぞうとおじさん」をちょっぴり思い出します。

 

  そんなふうに、『モッコロくん』を読んで藤子F先生を偲んだわけですが、本日はEテレの番組「沼にハマってきいてみた」にときわ藍さんが出演!ということもありました。ときわさんがドラえもんグッズたちと共に出演し、ドラえもんへの愛を語ってくださったことでもF先生を偲ぶことができて、とてもありがたかったです。

 https://natalie.mu/comic/news/397324?utm_source=dlvr.it&utm_medium

 

 サバンナの高橋さんやキスマイの宮田さんといった出演者の方々の似顔絵をときわ藍さんがFタッチで描いた!という粋なコーナーもありましたし、自分がいろいろ悩みを抱えているからこそ、悩んでいる読者に寄り添えるマンガを描いていきたいというときわさんの思いにジーンとしました。

 そんな素敵な番組が藤子F先生のご命日当日に放送された意義と喜びを、今しみじみと噛みしめています。