『キャンディ・キャンディ』

 新古書店の105円コーナーで中公文庫版『キャンディ・キャンディ』全6巻(原作:水木杏子、漫画:いがらしゆみこ)を見つけました。『キャンディ・キャンディ』の単行本は、分厚い中公愛蔵版で所有しているのですが、いま実家に置いてあって手元にないし、10年くらい前に『キャンディ・キャンディ』の単行本はすべて絶版になってそれ以後刊行されておらず、それを一冊105円で買えるなら、ということで購入しました。
 
キャンディ・キャンディ』を読み返したのは久しぶりですが、以前読んだときよりも、もしかすると初めて読んだときよりも、盛大に感動してしまいました。この作品は、大人になってから読むとさらに感動する、あるいは新たな感動がもたらされる、といった話を聞いたことがありますが、私も今回それを実感したわけです。


キャンディ・キャンディ』は、講談社の「なかよし」で1975年から79年にかけて連載され、76年から79年にかけてはテレビ朝日系列でアニメも放送されました。この時期、私は小学生でした。私の世代の女子には共通体験といってよいほどの大ヒット作で、友人知人のなかにも、『キャンディ・キャンディ』はバイブルだと語る人や、子どものころグッズをいっぱい集めたという人がいます。


 本作のストーリーは、簡単にいえば、恵まれない境遇にある女の子が、いじめやつらい出来事にみまわれながらもその苦難を乗り越え、大切な人との出会いと別れを繰り返しながら、明るくたくましく生きていく、といったものです。少女向け物語の王道、みたいなお話です。王道のお話だから時代が経過しても朽ちにくく、そんなお話を、たしかな技術、演出、構成で描いた『キャンディ・キャンディ』は、時代を超えた普遍的な面白さを提供してくれます。

キャンディ・キャンディ』では、大きな出会いと別れがたびたび描かれます。主要人物との死別があったり、両想いなのに別れなければならない局面があったり……。こうした別れの悲しみが、胸を刺します。そして、キャンディが悲しみを引きずる気持ち、悲しみを克服していく過程に心を揺さぶられるのです。
 今回読み返してみて、泣きどころがいくつもあったのですが、とくに号泣したのはテリィとの別れの場面でした。この場面でこんなに泣けたのは初めてかもしれません。


 キャンディをいじめるイライザの徹底した悪役ぶりもこの作品のキモです。最初から最後までまるで改心することなく、キャンディを嫌悪しいじめ続けた彼女の存在感は絶大です。本気で憎たらしくなってくるイライザという卓越したヒールが登場することで、主人公であるキャンディ・キャンディ』の魅力がぐいぐいと引き出されます。
 私の知人に、子どもの頃、イライザがあまりにも意地悪なため、母親から『キャンディ・キャンディ』を観ることを禁じられていた、という人がいるほどです^^


キャンディ・キャンディ』には、変な道具を発明するのが好きなステアという少年が登場します。このステアが、プロペラを頭にかぶって空を飛ぶ道具をつくる場面があり、『ドラえもん』のタケコプターを思わせて面白かったです。
 さらに『ドラえもん』との関連でいえば、なんといっても『ペロペロキャンディキャンディ』が思い出されます。『ドラえもん』の「まんが家ジャイ子先生」(てんとう虫コミックス29巻などに所収)のなかでクリスチーネ剛田ことジャイ子が描いたマンガのタイトルです。『ペロペロキャンディキャンディ』が登場したのと同じコマのなかに、『日出処は天気』『アンコロモチストーリーズ』というマンガも出てきます。元ネタはもちろん、山岸涼子日出処の天子』と光瀬龍原作・竹宮惠子作画『アンドロメダ・ストーリーズ』です。
 あと、『キャンディ・キャンディ』のアニメが放送されていた“テレビ朝日系列、金曜午後7時〜7時30分”の枠は、現在ではアニメ『ドラえもん』の放送時間としてすっかりお馴染みです。


 ※プチ情報
週刊朝日」4月29日号の「山藤章二の似顔絵塾」に藤子不二雄A先生の似顔絵が掲載されています。山藤章二氏の講評もあります。