『関口宏の風に吹かれて』に出演されたA先生

●明日(16日)午前10時〜午後5時、椎名町駅発車メロディーが『おれは怪物くんだ』になるのを記念してミニイベントが開催されます!
 開催場所は、椎名町駅北口広場。藤子不二雄A先生のふるさと富山県氷見市より取り寄せた怪物くんグッズの販売などが行なわれる模様です。
  http://tokiwaso-street.jp/archives/1258



藤子不二雄A先生が、5日と12日に放送されたBS-TBSの番組『関口宏の風に吹かれて』に出演されました。この回は「世界に飛び出した日本のマンガの風」というテーマで、番組ホストの関口宏さんとゲストの橋谷能理子さんがマンガに関連したスポットを訪ね歩きました。その過程で、A先生が同行するスポットもあったのです。

【前編】3月5日(火)
 番組の前半は、関口さんと橋谷さんが講談社国際事業局国際ライツ事業部と東京デザイナー学院マンガ科を訪れ、海外に進出した日本のマンガについてレクチャーを受けたり、日本へマンガを学びに来た留学生から話を聞いたり、といった内容でした。
 A先生が最初に登場した場所は、西武池袋線富士見台駅前。この駅から、マンガ家志望者数人が暮らすシェアハウスへ歩いて行ったのです。
 マンガ家志望者の部屋に入ったA先生は、彼らの生活ぶりやマンガの執筆方法(特にパソコンを使った執筆)などに興味を示しておいででした。
 自分の日常を綴ったエッセイマンガを描いている30代の男性に対し、
“今の若い人は人生経験・生活体験がないのでファンタジーを描く人が多い。ところが彼の作品は自分の生活が描かれていてユニーク”
 と評価されました。A先生はご自身の生活体験や仕事の舞台裏などを綴ったコミックエッセイ『パーマンの日々』を1978年から80年まで「ビッグコミック」誌上で連載しており、“コミックエッセイ”というジャンルのパイオニア的存在です。現在も「ジャンプスクエア」にコミックエッセイ『PARマンの情熱的な日々』を連載中であり、まさに“コミックエッセイの大家”と呼べるマンガ家なのです。そんなA先生がおっしゃった言葉ですから重みがあります。
 トキワ荘時代の思い出として、テラさんについて熱く語っておられたのも印象的でした。


【後編】3月12日(火)
 前編からの続きで、マンガ家志望者たちのシェアハウスの場面から始まりました。シェアハウスの住人の中にプロマンガ家のアシスタントで生計を立てているという人がいたことから、A先生はご自分のアシスタント体験として、手塚治虫先生の『ジャングル大帝』を手伝ったときのエピソードを披露。
 A先生に聞きたいことがあるという人もいて、いったい何を聞きたいのかと思ったら、座りっぱなしで痔や腰痛になるのでどうすればよいのか?という質問でした(笑) A先生は、それには答えようがないな…という感じで笑いながら、でも大事な問題だとおっしゃっていました。
 その後、明治大学米沢嘉博記念図書館順天中学校高等学校劇画部を訪ねる場面に移りましたが、そこではA先生の出演はありませんでした。
 番組のラストでは、『まんが道』などでもおなじみの中華食堂「松葉」にA先生はじめ今回出演した皆さんが集まって、マンガ座談会となりました。場所が松葉ですしA先生のお話を多く聞けて、私にとっては番組中最高の場面でした。話題は、日本マンガの多様性やマンガ家の個性の重要性といったことが中心。
 A先生が語ったことの一部を紹介します(A先生の言葉は大意です)

 ・マンガの新人賞の審査員を長いあいだやってきたが、応募作品が面白いのか面白くないのか僕の感性ではわからなくなってきた。それほど日本のマンガはいろいろと独自な広がりを見せている。
 ・(日本人は没個性的と言われるが)マンガ家に関しては独自のものを開拓しようという人が多かった。個性的でなければマンガ家として生き残れない。
 ・マンガを描き始めた頃は自分の描きたいものを描いていたが、マンガ家としてやっていくと読者のことを意識せざるをえなくなってくる。かといって、どうすれば人気が出るかということばかり考えてもいけない。読者と自分の接点をどう見つけるかが大切。その兼ね合いが難しくて言葉では説明できない。
 ・手塚先生を追いかけてマンガ家になったけれど、手塚先生と同じことをやっていては手塚先生を抜けない。手塚先生が描かないマンガを、と思って藤本くんと描いたのが『オバケのQ太郎』だった。

 自分の個性を見つけ磨いていくことが大切である、でも個性的であろうとするあまり独り善がりになってもいけない、かといって自分を失ってもいけない、自分のやりたいことと他者の目線・評価の兼ね合いをどうしていくが重要である…といったことが、今回のA先生のお話から感じ取った私なりの趣旨です。これはマンガを描くことに限らずいろいろな事例にあてはまるものと思います。