しのだひでお先生最終講義

 大垣女子短期大学副学長・デザイン美術家教授の篠田英男(漫画家しのだひでお)先生が今年度をもって退官されることになりました。
 そこで篠田先生の退官記念講演(最終講義)「マンガで歩いた 鳥取から(東京経由)大垣まで」が同短大20周年記念館3F多目的ホールで開催されました。
 
 ・大垣女子短大20周年記念館1Fロビーに飾ってある怪物くんの色紙

 
 ・退官記念講演の垂れ幕


 講演では、鳥取県ですごした幼少年時代から、手塚治虫先生のアシスタントに決まるまでの経緯、上京、手塚先生のアシスタント時代のエピソード、「なかよし」でマンガ家デビュー、大垣女子短大での教員生活まで、ご自身の歩んできた道のりを90分近くにわたってお話されました。


※講演の内容で印象に残ったこと。
昭和14年鳥取県で生まれ、高校を卒業して昭和33年に上京。中学を出たらマンガ家を目指したかったが、親から高校までは出ておけ、と言われ、高校へ進学。
 母は教員で堅い性格だったため、マンガ家になることに反対だった。納得してくれるまで時間がかかった。


・弟子入り希望の手紙を手塚先生と馬場のぼる先生に出した。馬場のぼる先生からは、アシスタントは使わないとのお返事が。
 手塚先生のアシスタントとして採用されるまで、何度も手紙を書いた。両親や高校の校長先生にも推薦の手紙を書いてもらって、ようやく採用が決まった。


・上京後は、手塚先生が引っ越されたあとの雑司ヶ谷並木ハウスに住んだ。自分より先に布団を送った。
 手塚先生は、並木ハウスで使っていたご自分の机や道具をそのまま置いていってくださった。手塚先生が出たあとトキワ荘14号室に入居した藤子さんのため手塚先生が机を置いていったエピソードが有名だが、あれと同じ感じ。
 手塚先生は当時、代々木初台で仕事をしておられた。


・手塚先生のアシスタントをしていた時代からトキワ荘へよく遊びに行った。トキワ荘にいるマンガ家の多くが手塚先生に憧れていたので、手塚先生のアシスタントである自分とすぐに意気投合した。


・大垣女子短大にマンガコースができて教員をしてほしいという話が来たのは、弟が岐阜県の副知事をしていたのが縁。当初は年に1回だけとかそういう話だったはずだが、だんだんと話が変わってきて、そのうち週に1回とか、週に2回とかいう話になり、結局週3回来ることになってしまった(笑) うまく説得されてしまった。それを15年間続けた。


 篠田先生の講演が終わると、同短大の学長さんの挨拶があり、いま全国でマンガを教える大学・短大はたくさんあるが、“ストーリーマンガ”を教えたのは大垣女子短大が最初であり、そのパイオニアとなった教員が篠田先生である、といったお話をされました。



 夕方になって、居酒屋で篠田先生を囲んで飲み会。
 藤子不二雄A先生が銀座のお店でどういうふうに飲んでいるか、といったお話は、藤子ファンである私にとって非常に興味深かったです。A先生は毎回ツケ払いで、いくらかかったかなんて気にしない飲み方をされているとのこと(銀座で飲む人はたいていそういう感じだそうですが^^)。ハシゴ酒がお好きなので、最初の店の席に座ったらもう携帯電話を出して次に行くお店に電話を入れてらっしゃるそうです。
 

 藤子F先生は堅い人に見えるかもしれないが非常にユーモアのある人だった。藤子スタジオの忘年会では、よくマジックを披露され、たいてい途中でうまくいかなくなって「あれ?こうすればこうなるはずだったんだけどなあ…」などとつぶやいている様子がとてもユーモラスだった、というお話も印象的でした。


 篠田先生はトキワ荘へ遊びに行ったとき、赤塚不二夫先生のギャグマンガを手伝ったことがあるそうで、「もしかすると、篠田先生が赤塚先生の最初のアシスタントだったかも」という話でも盛り上がりました(笑)


ウメ星デンカ』の虫コミックス版とてんとう虫コミックス旧版をお持ちの方はご存じのように、これらのコミックスに収録されている最終回「別れはつらいよ」は、篠田先生が描いています。これは、F先生がネームまでやって、篠田先生が下描きとペン入れをした作品です。F先生があまりに忙しかったので篠田先生に代筆の役割が回ってきた、とのこと。


 その他、ちばてつや永島慎二古谷三敏北見けんいち高信太郎梶原一騎、久米みのる、志茂田景樹など、篠田先生とお付き合いのある漫画家さんや作家さんとの楽しいエピソードをいろいろと聞かせてもらえて、濃くて楽しい飲み会となりました。


 篠田先生は、今年度をもって大垣女子短大の教授を退官されますが、同短大との縁が切れるわけではなく、来年度もたまに岐阜にいらっしゃるようなのでちょっとホッとしました。


 
 ・日本有数のしのだマンガのファンM氏が作成したしのだキャラクター大集合のシート


 
 ・飲み会の最中に描いていただいた直筆サイン色紙