『ある日……』

 本日から「ドラえもんチャンネル」で藤子F先生の短編『ある日……』が期間限定公開されています。(8月12日AM10時まで)

 https://dora-world.com/hiyatto_summer2019

 

 (以下、『ある日……』の結末に触れています。未読の方はご注意ください)

 

 

 『ある日……』は、10代のころ初めて読んで狂おしいほどの衝撃を受け、その後取り憑かれたように何度も読み返した、思い入れの強い作品です。

 核兵器が世界中に配備されているこの世界の現状と未来に対し、恐怖をおぼえずにはいられませんでした。とともに、今後も当たり前に続いていくと信じていた日常が唐突に途切れてしまう事態が今にもありうるのだと意識させられる恐怖や、本当はみ~んなこの破滅的・危機的状況をわかっているのに平然と暮らしているように見えることへの恐怖にもみまわれました。

 

 最終コマの、極端にシンプルな表現も鮮烈だったなあ。日常がそこで忽然と途切れた感覚が一瞬にしてダイレクトに伝わってきました。その最終コマは、空白とは言えないまでも空白を思わせるほど描かれているものは限られているのに、伝わってくるものは甚大なのです。描き込みを極限まで削った表現がもたらす大きな力を感じました。

 最終コマの一つ前のコマで佐久間氏が発するセリフは、その言葉の内容とリズムの両輪で聴き手にたたみかけてくる感じで、私はぐいぐいと啓発されながら、がつんと打ちのめされました。

 

 『ある日……』を読んで私が感じた“本当はみ~んなこの破滅的・危機的状況をわかっているのに平然と暮らしてるように見えることへの恐怖”を、もっと端的に描いた藤子F先生の短編マンガが『大予言』です。

 

 『ある日……』も『大予言』も、広島と長崎の原爆忌を迎えたこの時期に読むことで、ますます切実に深く心に届くものがあると思います。