12月1日、『自転車屋さんの高橋くん』『林檎の国のジョナ』の漫画家・松虫あられ先生のサイン・トーク・クラブイベントに行ってきました。
『自転車屋さんの高橋くん』8巻に出てきた名古屋のクラブ「GOODWEATHER」が会場でした。
まずはサイン会から。
色紙に『自転車屋さんの高橋くん』のヒロイン・パン子さんを描いていただいて感激です。サインを描いていただいてるあいだ、松虫先生とお話できたのも嬉しいひととき。楳図かずお先生の『漂流教室』の話などをしました。クリアファイルももらえましたよ。
サイン会後にスタートしたトークショーは面白かったしクラブイベントは音がガンガン来て最高でした!
松虫あられ先生は、手塚治虫先生の影響を受けている、とトークショーでおっしゃいました。ペンネームの由来は複数の要素が重なっているのですが「虫」の字を含むのは手塚先生の影響なのだとか。
『自転車さんの高橋くん』の作中では手塚展ならぬ毛塚展なんてパロディシーンがありますし、単行本のあとがきで『どろろ』の百鬼丸について熱く語ったりもされていて、松虫先生の手塚先生リスペクトっぷりが伝わってきます。
松虫先生のサインの「虫」の文字からも手塚先生の影響をうかがえますね。
クラブ「GOODWEATHER」にいるあいだ、お酒を何杯か飲んだのですが、この青いお酒はブルーハワイです。藤子不二雄Ⓐ先生に同名の単行本未収録作品がありますね。読切マンガ『ブルー・HAWAII』(「中学一年コース」1974年夏休み臨時増刊)という作品です。
『自転車さんの高橋くん』1巻を読むと、今回色紙にも描いてもらったパン子さんがある男性に誘われて映画館へ行くシーンがあります。パン子さんがドラえもんを観ませんか?と提案すると、連れの男性はブッアハハハと笑いだし「え!? ウソー!! 俺ドラえもん小5で卒業したよ⁉」と反応しました。パン子さんは「ドラえもんって卒業するもんだったんだ…」と心の中で思います。で、別の映画を観ることに…。
そのやりとりだけでも藤子ファン・ドラえもん好きとして心に来るものがありますが、そんなことがあったあと、マイルドヤンキーの高橋くんが「オレはドラえもんバカにするやつと映画まともに観んやつ大っきれぇじゃ」とブチキレる展開になるのです。
中高生になっても大人になってもドラえもんを卒業するどころか大好きであり続けている私には、この展開はじつに胸熱です。ドラえもんを卒業しないことで白眼視されたりバカにされたりした経験が一度や二度じゃなく、思春期のころには自分が受難者だとすら感じていた私には、ドラえもんの映画を観たいと言ったパン子さんも、ドラえもんをバカにする人に怒った高橋くんも、とても心強い同志に感じられ、このシーンを初めて読んだときは目頭が熱くなりました。いま読み返しても胸が熱くなります。
知人からそんなドラえもんネタがあると聞いて読んでみた『自転車屋さんの高橋くん』ですが、このマンガ、じつに良作で主人公2人の関係から目が離せないし、周囲の人々も無性に気になるし、一人一人の抱えるものの掘り下げが丁寧で、心動かされるところが多く、次の巻が待ち遠しい気持ちになります。
舞台が大垣なのもちょっと親近感がわくところです。高橋くんたちが話す方言は大垣弁ですが、私の住む地域の方言である名古屋弁(尾張弁)にかなり近くて、そこにも親しみが生じます。
『林檎の国のジョナ』は11/28に1巻が発売されたばかり(『自転車屋さんの高橋くん』8巻と同日発売でした)。
コンプレックスをかかえた女性が、東京から青森へ移住して新たな環境のもとで自分の生活を見つけていこうとします。津軽弁が飛び交う作品世界です。
松虫先生は人と人との関わりや心の機微を描くのがとてもうまい!