今年最初のアニメドラと正月の遊び

 1月12日(金)、今年最初のアニメ『ドラえもん』が放送された。
 Aパートは「もしもボックス」、Bパートは「しずかちゃんをとりもどせ(前編)」。「しずちゃんをとりもどせ」のほうは、次週の後編へ続く週またぎの構成で、アニメ『ドラえもん』で「次週ヘつづく」なんて表示を見るのは妙な感覚だ。この手法、今後もたまにやっていくのだろうか。新規な手法を導入することを否定はしないが、次回へのヒキを強くするため無理に原作を改変し分断することで原作が本来持っている精度の高い構成が損なわれてしまうのではないか、と心配になる。



もしもボックス」は、“正月の遊び”をネタにした作品だ。原作(てんとう虫コミックス第11巻などに収録)で凧上げと羽根つきが出てくるのに加え、今回のアニメではこま回しも登場。そもそも『ドラえもん』という作品は、連載第1回「未来の国からはるばると」からして正月を舞台にし、羽根つきの場面から始まっているので、正月とは縁が深いのだ。
ドラえもん』にはほかにも正月を舞台した作品がいくつかあるが、私の最も好きな正月エピソードが今回アニメ化された「もしもボックス」である。
 凧上げも羽根つきも下手くそなのび太のため、ドラえもんもしもボックスで凧上げと羽根つきのない世界をつくりだす。その世界でのび太は、凧上げも羽根つきも全く知らない友人たちに凧や羽子板を与え、上から目線で遊び方を教えてやろうとする。ところが、のび太は相変わらず凧上げや羽根つきが下手くそで、初心者である他の皆のほうが早々と正規の遊び方をマスターしてしまう。そんな、思い通りの世界になったはずなのに思い通りにならないのび太不本意な状況が可笑しい。
 しかしのび太は、皆が凧上げや羽根つきのルールを知らないのをいいことに、下手くそなのび太こそがいちばん上手とみなされるルールを設定してしまう。そうやってのび太が自分に都合よく新たなルール(常識)をつくりだしてしまうところは、ちょっとした思考実験みたいで、ほのかにSF(すこしふしぎ)マインドを味わえるうえ、その新たなルールが生まれた経緯がのび太にとって不承不承なものだったという点でギャグにもなっている。
 とくに、凧上げを知らない友人たちが、凧を引きずることこそが正式な遊び方だと信じ込み、皆で凧引きコンクールをはじめるくだりは、子どものころ読んで以来ずっと鮮烈な印象が残っている。私は、このシーンに影響を受けて、実際に凧引きをやってみたこともある(笑) たしか、あえなく凧が破損したはずだ。



 凧上げ、羽根つき、こま回しのほかにも正月の遊びはいろいろある。たとえば、かるたやすごろくなどもそうだ。
 ここで、藤子アニメの絵を使ったかるたとすごろくを、わずかながら紹介したい。

 藤子アニメのかるたは、昭和40年代モノクロアニメの時代から様々な種類が発売されてきた。上の写真に写りこんでいるのは以下のとおりだ。


 ●ウメ星デンカかるた(こいで/200円)
 ●エスパー魔美かるた(ショウワノート/600円)
 ●キテレツ大百科かるた(ショウワノート/600円)
 ●ウルトラBかるた(セイカノート/600円)


 どれもその作品がアニメ放映されていた当時のもので、『ウメ星デンカ』は1960年代、あとは1980年代後半に発売された。
ウメ星デンカ』は「こいで」というメーカーのものだ。1960年代はこの「こいで」から、マンガ・アニメのキャラクターをあしらったかるた、福笑い、すごろく、絵あわせなどの正月玩具がいろいろと出ていた。昭和40年代に子どもだった人にとって、「こいで」は童心をくすぐり郷愁をそそるメーカーだろう。


 そして、『キテレツ大百科』の「ぐるぐる地獄探検ゲーム」。

 商品名に「すごろく」と記されていないが、説明書に「すごろくタイプのゲームです」と明記されているので、ここでは「すごろく」とみなして紹介したいw 『キテレツ大百科』のような明朗な作品で「地獄探検」という題材はなんだか不似合いな気がするが、『キテレツ大百科』には「地獄へいらっしゃい」(コロコロ文庫第2巻などに収録)という話があって、このゲームはその話をベースにしている。だから、原作の世界観を尊重したゲームといえるのだw
 ゲーム内で設定された地獄は、原作と同様「血の池」「剣の山」「焦熱地獄」「寒冷地獄」と区分けされており、この4つの地獄を通り抜けてゴールにたどりつく、というのがゲームの概要だ。だが、マスのなかに地獄の絵が描かれているわけでなく、そこが地獄であることを文字で指示しているだけなので、あまり地獄探検をしている気分にはなれない。