『スーパーサラリーマン左江内氏』でメタ発言

 4日(土)放送のドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』第4話に、『パーマン』でおなじみのコピーロボットが登場しました。
 左江内氏(堤真一)がもう一人の自分がどうしても必要になり、謎の老人(笹野高史)に、コピーロボットはないのか、と尋ねます。謎の老人は、原作者は同じだけど無い、とコピーロボットの存在を否定。
 ところが翌日、老人は左江内氏のところへやってきてコピーロボットを手渡し、「まあ一応原作者が同じってことでギリギリ一回だけ許可がおりたわ」と言ったのです。
 その流れで、
  左江内氏「なんなんですか、原作者が同じって?」
  謎の老人「そこは深く掘るな」
 というやりとりが行なわれました。


 私は、原作と比べてどうこうという思いをなるべく遮断して、原作は原作、ドラマはドラマと切り分けてドラマ左江内氏をゆるゆると楽しんいるのですが、今回の「原作者が同じだから…」というメタ発言には藤子ファン心がピクンと反応してしまいました。今回は、コピーロボットが登場したうえコピーの左江内氏の鼻が赤かったり、先代のジャイアンのママ&ジャイ子役の青木和代さんが声で出演したりといったところも藤子チックでした。

 メタ発言といえば、藤子・F・不二雄先生のマンガでもたまにメタ発言が見られます。今回「原作者が同じだから…」という発言を聞いて真っ先に思い浮かべたのは、『モジャ公』で空夫が叫んだ「藤子不二雄はくるってる!」です。私は『モジャ公』を朝日ソノラマサンコミックスで初めて読みました。そのときこのメタ発言に遭遇して、作中人物が作者を批判するという越権的ふるまいに強い印象をおぼえたのです。このセリフ、のちに改変されて、「作者は頭がおかしいんだ!」になっています。


 藤子F作品におけるメタ発言といえば、やはり『ドラえもん』のいくつかの事例が有名ですね。「くろうみそ」「念録マイク」「無人島へ家出」、といったところがまずは思い当たります。
 ・「くろうみそ」(てんコミ8巻):のび太「お説教なんておもしろいもんじゃないからね。長ながやると、このマンガの人気がおちる」 パパ「いいや 二ページほどやる」
 ・「念録マイク」(14巻):ドラえもん「このマンガ6ページしかないから。いそがなくちゃ」
 ・「無人島へ家出」(14巻):のび太「どうなってんの? ぼくがおとなになったら、このまんがおしまいじゃないか!」
 ・『大長編ドラえもん のび太と銀河超特急』:スネ夫:「のび太……、大長編になると、かっこいいことをいう」


 マンガではありませんが、映画『のび太と鉄人兵団』(1作目)も頭をよぎりました。鉄人兵団が地球を襲いにくると訴えても誰にも信じてもらえないドラえもんが「この映画を観ている人以外は無理だよ」と言うくだりです。


 ほかに、これは明確なメタ発言とは言えないかもしれませんがメタ的な性質が感じられて好きなのが、うそつきかがみに写った自分の顔を見たのび太が「今まで、ぼくの顔はまんがみたいだと思っていたけど」と言うコマです。マンガの作中人物がマンガみたいと自己言及したうえ、鏡に写った顔が通常のF先生の画風とは違うリアル風味で描かれていて、マンガ表現の枠組みのなかでその枠組みを逆手にとってネタにしている感じが好きなのです。


 今回のドラマ左江内氏、『パーマン』以外の作品にパーマンたちが使うのと同じ形をしたコピーロボットが登場する…という意味では、『ドラえもん』の「うらないカードボックス」(てんコミカラー作品集2巻)を思い出す方もいらっしゃるでしょう。ドラえもんコピーロボットを出したさい、のび太はそれを指さしながら「パーマンも使ってるやつだね」と言うのですが、これもメタ発言っぽいですね。