ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』最終回

 時の流れは速いものでもう2週間以上前のことになりますが、3月18日(土)ドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』が最終回を迎えました。リアルタイムで視聴したのですが、ここでちょっと感想を…。
 左江内氏の最終回といえば、藤子ファンのあいだではなんといっても“パーやんパーマン4号)が登場するエピソード”として印象深いです。原作マンガがそういうふうなので、ドラマ版の最終回ははたしてどうするのか、と気になっていました。ドラマは原作マンガとは別モノのように展開しているので、最終回もほとんど別モノになってもおかしくはないな、と思いつつ、それでも最終回に何かサプライズ的なことをやってくれるのでは、という期待も持てました。なにしろ福田雄一監督ですから、ただでは終わらないだろうと。しかも第4話にコピーロボットが出ていてすでに『パーマン』ネタをやってくれていますし。
 で、じっさいに最終回を観ると…、


 やってくれました!


 パーやんの登場はなかったけれど、“原作マンガの最終回にパーやんが登場した”という事実を踏まえながらヒネリを加え、別のパーマンキャラ(もどき)を出してくれたのです。
 それは“キャプテンマン”と名乗るキャラクターで、日本のスーパーマンたちをまとめあげるリーダーでした。これがもう、バードマン(旧『パーマン』ではスーパーマン)なのです!バードマンを思い出さずにはいられない格好をしているのです。小型の一人乗り空飛ぶ円盤に乗っているところなんて、モロにバードマンです。あえていえば、そのルックスはバードマンにキャプテン・アメリカっぽさを加味した風合いでしたが。


 福田監督は、パーやんの代わりにバードマン(的なキャラクター)を出してくれたのです。何かやってくれるだろうとの期待が、こういうかたちでかなえられました。
 そのバードマンもどきの“キャプテンマン”の中身は、米倉(佐藤二朗さん)でした。米倉といえば、ドラマ左江内氏に毎回唐突に登場する謎の人物。登場するたびに違う職業(アルバイト)についていて、左江内氏とナンセンスなやりとりを繰り広げます。本筋の展開とはあまり関係のない、おちゃらけ要員のキャラクターでした。
 ところが、そんな米倉の正体が、日本のスーパーマンのリーダー格であるキャプテンマンだったのです。しかも、毎回違う職業の米倉に会っても左江内氏がその点にツッコんだりせず、初めて会ったかのように接していた理由も明らかになりました。米倉のおちゃらけナンセンスシーンが、じつは最終回に向けた壮大な伏線だったとは!


 キャプテンマンはさらに見せてくれました。藤子F先生の原作では第一話で語られたスーパーマン三条件「最大公約数的常識家」「力を持っても大それた悪事のできぬ小心さ」「ちょっと見パッとしない目立たなさ」を、ドラマは最終回のラストシーンで示してくれたのです。ここにきてそのフレーズを持ってくるとは、なんと心憎い!そのうえ、ドラマでは「左江内氏」という名前もスーパーマンに選ばれた理由として加えられたのでした。


 藤子F先生の原作とはけっこう別テイストのドラマながら、それはそれでユルユルと楽しめるので好意的に観ていたわけですが、最終回でドカンと満足度を上げてくれました。
 最終回は、ある意味佐藤二朗劇場でした(笑)


 左江内氏がドラマ化されたこと自体がまるで奇跡のようで、それだけでも妙な高揚感をおぼえたものです。藤子ファンはともかくほとんどの一般の人はタイトルすら聞いたことがなかったであろう作品ですし、それが今になってテレビの地上波で映像化されるなんて、思いもよりませんでした。ですから、ドラマ化された!という事実だけでもう、けっこうな驚きや喜びを感じられたのですが、ドラマはドラマで独自の面白さを授けてくれました。
 ドラマ左江内氏、ありがとう!


 
 ドラマ左江内氏の最終回を名残惜しみつつ、左江内氏なりきりTシャツを再び着用してみました(^^)
 


 そして、このドラマの原作である『中年スーパーマン左江内氏』の歴代単行本を並べてみました。
 
 ・アクション・コミックス(双葉社、1979年)絶版
 ・藤子不二雄ランド中央公論社、1990年)絶版
 ・藤子・F・不二雄大全集小学館、2012年)
 ・てんとう虫コミックススペシャル(小学館、2017年発行)


 マンガ『中年スーパーマン左江内氏』はぜんぶで14話存在しますが、この4種の単行本のうち藤子不二雄ランド版のみ12話の収録で、ほかは全14話を収録しています。また、中公愛蔵版『藤子・F・不二雄SF全短篇』第3巻(中央公論社、1988年)でも全14話を読めます♪