これは「小学四年生」1980年5月号の別冊ふろくです。
F先生が描いた『ドラえもん』の再録をはじめ何作かマンガ作品が収録されているなか、今回注目したいのは、方倉陽二先生が作画した『のび太の恐竜』が載っていることです。方倉先生がこの別冊ふろくのために描きおろした作品と思われます。
内容的には、F先生が描いた映画原作『大長編ドラえもん のび太の恐竜』のストーリーを踏襲していますが、全45ページとF先生版よりもページ数をずいぶん圧縮しているため、各場面がいろいろと端折られています。その端折り方から方倉先生のセンスやテクニックがうかがえて興味深いです。
たとえば、恐竜の化石を発掘してみせる、とのび太ができもしないことを皆の前で口走ってから、そう口走ってしまったことをドラえもんに伝え、実際に化石堀りに行くまでのシーン。そこがこんなふうに端折られています。
F先生版『のび太の恐竜』のこの場面には、恐竜の本をかき集めて勉強するのび太をドラえもんがあったかーい目で見守るという印象的なくだりがあったりします。それがこちらの方倉版では「化石のことはしらん、しらん」というドラえもんつれない一言ですまされ、すぐに化石堀りに行く場面へ移行するのです。この大胆な端折り方とドラえもんのつれなさ、コマの間合いなどに方倉節を感じます。
SNSでこの場面をご覧になった漫画家のおりゃー!大橋先生が、こんな反応をしてくださいました。
そうそう。自分も漫画描いてて〜よくやりますが。「ページ数にゆとりがない」と、「キャラクターがドライになり、何も考えないで突っ走る感じになる」「有無を言わさぬ早い展開〜キャラの性格が強引になる」「情感とか風情はどんどんなくなる」。でも、ソコがイイんです。馬鹿っぽい魅力が出て来る。
経験豊かな実作者の方のコメントですからたいへん参考になります。ありがとうございました。