『石ノ森章太郎 初期少女マンガ傑作選』

 本日(1/25)は、トキワ荘時代からの藤子先生の盟友・石ノ森章太郎先生の83回目のお誕生日です。

 石ノ森先生、お誕生日おめでとうございます!

  

f:id:koikesan:20210110185854j:plain

f:id:koikesan:20210110193514j:plain

 今月初旬ごろに発売されたちくま文庫石ノ森章太郎コレクション 初期少女マンガ傑作選』を読みました。

 

f:id:koikesan:20210121213410j:plain

 収録作品は7編。石ノ森先生がご自身の著書『マンガ家入門』で全ページ解説したことでも名高い『龍神沼』以外はかなり久しぶりの再読となり、ほとんど初読のような新鮮な感覚で読めました。

 収録作品中、『青い月の夜』から『夜は千の目をもっている』までの4編は石ノ森先生のトキワ荘在住時代に描かれた作品だと思われます。

 

 1960年代、少女マンガのフィールドでマンガ表現の新たな可能性を切り拓いていった若かりし石ノ森先生の、こんこんと湧き出る開拓精神やみずみずしい才気をビシビシと感じられました。

 やはり『龍神沼』はどこを切りとっても完成度の高い短編ですね。今回の再読では、研一にひそやかなる思いを寄せるユミちゃんの姿に、とくに心を動かされました。思いを打ち明けようとしかけて本心を呑み込むユミちゃんを見ちゃうと、たまんない気持ちになります。

 

龍神沼』が傑作なのはもちろんのこと、少女と人形たちの幻想的な一夜を描いた『青い月の夜』、会うたびに不思議なほど成長している少女の秘密に驚かされるSF『きのうはもうこない だが あすもまた…』、サスペンスと音楽マンガの魅力を放つ『夜は千の目をもっている』など、逸品ぞろいです。

『あかんべぇ天使』もいいなあ。天使を信じて大切な願い事をするヤッコちゃんの純真さと優しさに胸を打たれます。同じアパートに暮らす人々の、それぞれの事情を描いた人情群像劇としても魅力的ですね。

 

『きりとばらとほしと』も傑作です!この時代の石ノ森少女マンガのひとつの到達点ではないでしょうか。この作品は、萩尾望都先生の『ポーの一族』にインスピレーションを与えたことでも知られていますね。

 そして、本作の第三部「ほし」はリチャード・マシスンの小説『地球最後の男(アイ・アム・レジェンド)』を下敷きにしています。同じく『地球最後の男』を下敷きとした藤子F先生の短編マンガ『流血鬼』と読み比べてみるのも一興でしょう。

  当ブログでリチャード・マシスンの『地球最後の男(アイ・アム・レジェンド)』と藤子F先生の『流血鬼』を読み比べてみたことがあるので、参考にしていただければ幸いです。

 

■【コロナ禍の読書】リチャード・マシスンアイ・アム・レジェンド

 https://koikesan.hatenablog.com/entry/2020/12/31/114415