蚊の日と藤子マンガ

 本日(8月20日)は蚊の日なんですね。

 1897年のこの日、イギリスの医学者ロナルド・ロスが“ハマダラカ”という蚊に刺されることでマラリアに感染することを発見した(ハマダラカの胃からマラリア原虫を発見した)ことにちなんで制定されたようです。

 

 『ドラえもん』の「ゆうれいの干物」(てんとう虫コミックス12巻などに収録)を読むと、ドラえもんが蚊に刺されるシーンがあります。

「ぼくぐらい高級なロボットになると、カがさすんだよ」とドラえもんは自分を刺しにくる蚊をピシャピシャと叩いています。

 蚊に刺されるなんて、なんと血の通ったロボットだろう!

 と、このシーンを初めて読んだときは笑いながら感嘆したものです(笑)

 

 ドラえもんは「七万年前の日本へ行こう」(藤子・F・不二雄大全集17巻収録、初出:小学三年生1990年7月号)でも蚊に刺されています。「ゆうれいの干物」のときよりも盛大に刺されています。

 ドラえもんのび太にねだられて“いつでもポスター”というひみつ道具で七万年前の東京へ行きます。まだ誰のものでもない土地を自由に使えて楽しいはずの七万年前でしたが、そうもいかないことが多々起こります。そのうちの一つが多数の虫に刺されることでした。

 のどかな気分で空行く雲を眺めるドラえもんのび太のところに、ヤブカやブヨの群れが寄ってきて、二人とも刺されまくります。体じゅう刺されて腫れた箇所だらけになりますが、人間であるのび太と同じくらい、いや、露出面が広い分だけドラえもんのほうがたくさん刺された感じです。そもそも、虫に刺されたら患部がしっかり腫れるところも実に人間的ですねえ(笑)(ドラえもんの衣服にあたる四次元ポケットの部分はちゃんと刺されていない!)

 

 ドラえもんは普段からロボットっぽさより生き物っぽさ、人間っぽさを感じさせてくれる存在ですが、彼が当たり前のように蚊に刺される光景を見ていると、ますますロボットというより人間的な生命体に感じられてきます。

 あまりにも精巧になりすぎたロボットは限りなく人間に近づく…ということでしょうか(笑)

 

 

 蚊の登場する藤子作品といえば、藤子不二雄Ⓐ先生の短編『パラダイス』の蚊のシーンも印象深いです。

 『パラダイス』は藤子Ⓐ先生のタヒチ旅行体験をベースに描かれたもの。「ビッグコミック」1970年1月25日号で発表されました。

 

 『パラダイス』のなかに、タヒチに着いてホテルの部屋で寝ようとしたら無数の蚊に襲撃されて朝まで一睡もできなかった…というシーンがあるのです。この出来事も藤子Ⓐ先生がタヒチに行ったときの実体験です。

 

 ただ、『パラダイス』の作中では、主人公(藤子Ⓐ先生の分身的キャラ)が部屋に置いてあった殺虫剤を阿修羅のように撒き散らしますが、この点は藤子Ⓐ先生からうかがったお話と食い違っています。

 藤子Ⓐ先生は「部屋に殺虫剤があったので噴射してみたら空っぽだった(笑)」とおっしゃっていたのです。「空っぽだった」というのは、話を面白くするためのリップサービスだったのかもしれませんが(笑)