「日曜喫茶室」に大山のぶ代さんと横山教授が出演

 本日放送の「日曜喫茶室」(NHK-FM/午後0:15〜2:00)は、「ずっと大好きドラえもん」というテーマで、ゲストに大山のぶ代さんと「ドラえもん学」の横山泰行教授を迎えていた。番組のホストは放送作家はかま満緒さん、アシスタントはタレントの小泉裕美子さんで、そのほか常連ゲストとしてドイツ文学者の池内紀さんも出演していた。
 番組冒頭でこの3人のやりとりがあったあと、すぐに大山のぶ代さんが登場。大山さんのお話は、これまで様々なメディアで語られた内容とおおむね同じだったが、やはりドラえもん降板にまつわる話には関心を誘われた。
 そこで、ドラえもん降板の事情について大山さんがどんな話をしたか、要約して紹介したいと思う。

●(サザエさんのように、声優さんに何かあってから1人ずつ順番に交代していくという方法もあるが、)私は、声優の誰かに何事かあってからではなく、きれいに引退したかったんです。
ドラえもんは絶対に永久に、2112年を迎えても続けてもらいたいんですが、生身の人間はそこまではいけません。だから、引き際を考えていました。

 大山さんはまた、番組の最後で、ドラえもん卒業にあたっての気持ちをこのように話していた。

●ひとつの区切りだとは思いますが、これがあの子(ドラえもん)との別れだなんて思っていません。あの子はいつもそばにいてくれるんです。
●次の方たち(新声優陣)が、藤本先生が伝えたかったことを台本のセリフなどからよく汲み取って、それを伝えていってくれれば最高。


大山のぶ代さんら旧声優陣は、ドラえもんを突然降ろされて怒っている〟とか、〝テレビ朝日は大山さんらにひどい仕打ちをした、これは非情なリストラだ〟などと言う人が今でも結構いるようだが、今日のラジオ番組を聴いていても、大山さんの言葉から、怒りとか悲しみとか恨みとかわだかまりといった否定的な感情は微塵も感じられず、むしろ、26年間ドラえもんをやり遂げた充足感と誇り、ドラえもんが永久に続いてほしいという真剣な願い、後に続く声優さんたちへのこまやかな気配り、そういった前向きな感情ばかりが伝わってきた。


 そのほか、大山さんの発言で印象に残った部分を要約で紹介しよう。

ドラえもんがスタートして間もなくの頃、高視聴率をとったご褒美で、スタッフも含めた50人ほどで函館旅行へ行ったんです。そのときバスに乗って消防署の前を通りかかったら、ザルに紙を貼って色を塗ったドラえもんが火の用心のたすきをかけて立っていました。それでバスを止めてみんなで記念撮影をして、消防署の人も喜んでくれました。画面の外に飛び出したドラえもんを見たのは、これが初めて。私たちはいい仕事をやってるんだ、と実感しました。
●普通の人が「自問自答」するところを、私の場合は、自分で問うてドラえもんが答える、というかたちになるんです。
ドラえもんの声で話すときは、普段よりもずっと大きな声を出します。そうしないと、ドラえもんのかわいさなどが伝わりませんから。(ここで池内紀さんが「心理学では、大声は理屈抜きで相手を説得する効果がある」と発言。それを受けて、)心理学のことまで考えていなかったけれど、そういえばこんなことがありました。子育てで忙しい友人が私のところへカセットテープと手紙を送ってきて、「早く起きて」「歯を磨きなさい」「宿題はどうしたの」などとドラえもんの声でカセットに録音してほしいと頼んできたんです。母親の言うことをきかない子でも、ドラえもんの声なら素直にきくというんです。 


 番組が始まって40分が過ぎた頃、富山大学の横山泰行教授が登場した。大山のぶ代さんと横山教授の共演というのも新鮮だなぁと思っていたら、やはりご両人はこれが初対面だったようで、大山さんは「お会いできて嬉しい」、横山教授も「夢がかなった」と、互いに初対面の喜びを交わし合っていた。
 大山さんと横山教授のトークの中で私の興奮度が最も高まったのは、のび太がテーマになったときだ。

はかま「のび太くんみたいな勉強もスポーツも苦手だっていう子は多いんですよ。それをテーマにもってきている、というのも大きいですよね」
大山「でも、のび太くんは拳銃を撃たせるとものすごくうまいんですよ。あやとりも女の子に教えるくらい上手なんです」
はかま「何かみんなひとつは特技があるよ、と教えているんですね」
横山「のび太はよく無感動、無気力、無関心とか、そういう三無主義の代表選手みたいに言われるけど、本当は違うんです」
大山「ええ、そうです!」
横山「たとえば、ジャイアンからいろいろいじめられます。それに対して反発するんです。反発できるということは決して無気力じゃないんですよ。明らかに結果は、ジャイアンに戦いを挑んでも勝てる可能性はないんですけど、しかし、いじめに対してのび太なりに反発してるんです。それで、ドラえもんからいろいろ秘密道具の助けを借りるようなことはあるんですけど…」
はかま「反発してれば神様が見てて助けてくれるっていう。その神様が見てて助けるっていうのがドラえもんで…」
横山「そういうこともありますね」
大山「そういうこともあるし、逆に、あまりそれに頼ると… たとえばアンキパンという道具があるんです。明日の試験に出そうなノートや本をアンキパンに写して食べると、ぜんぶ暗記できるんです。それで、のび太くんは明日はこれが出そうだと食べて、あんまり食べ過ぎて、お腹くだして、ぜんぶ忘れちゃうんです。そういうバチが当たるわけなんです。楽して試験を受けようなんて。そういうのも神様といえば神様みたいなものですよね。だから、バチがあたるよ、あんまりそれに頼っちゃいけないよって…」
はかま「そういうのも教えてるんですか?」
大山「そうなんです」

 そんなやりとりを聴いていると、のび太好きの私の血がたぎってきて、ラジオの中の話に加わりたくなるほどだった。



●新刊本情報
 横山泰行教授が「ドラえもん学」(PHP新書/2005年5月2日第1版第1刷/本体700円)という本を出しているのを、本日たまたま書店で見つけたので購入。