「BRUTUS」のSF大特集と『ドラえもん不思議サイエンス』

 私もすこし協力している「BRUTUS」の特集「夏は、SF。」。この特集内のインタビューで、『映像研には手を出すな!』で知られる漫画家・大童澄瞳さんが子どものころ熟読していたSF原体験本として『ドラえもん不思議サイエンス』(1994年1月1日初版第1刷発行)をあげています。

ドラえもん不思議サイエンス』は、藤子・F・不二雄先生の描いた『ドラえもん』のマンガを何編か掲載し、掲載作以外からも『ドラえもん』のカットをたくさん使用して、そうした作品を参考にしつつサイエンスについて学び調べ考えようという趣向の本です。
 大童さんは『ドラえもん』がきっかけでSFにのめり込み、『ドラえもん不思議サイエンス』を読んで「SFは非現実的なファンタジーではなく、生活と地続きにある身近な存在なのかもしれない」と気がついたのだそうです。

 この本に藤子F先生が『ドラえもん』と科学に関するコメントを寄せておられます。
「『ドラえもん』の中にも、折おりの科学知識をとりこんではみますが、すぐに古くなって、とり残されないように勉強するのが大変です」
「まったくの空想として考えた秘密道具が、先端技術の発達により実現したりすると、予言が当たったとうれしくなる反面、またまた空想する場が減ってしまったと、がっかりしてしまうのも事実です」
「『ドラえもん』の中で解説する知識も、学校で習う知識も、使ってこそ初めておもしろいのです」
 などの言葉が印象的です。藤子F先生が『ドラえもん』で科学を扱うことに対しどう考えておられたかが簡潔に伝わってきて実に興味深いのです。

 

“ビッグ・コロタン”レーベルのこうしたドラえもんサイエンス本は、現在続々と刊行されている『ドラえもん科学ワールド』シリーズの原型になったのではないでしょうか。そのように思える共通のスタイルを有しています。

 

・書店にずらりと並ぶ「ドラえもん科学ワールド」シリーズ。