「あやうし!ライオン仮面」「のび太のなが〜い家出」放送

 10月28日(金)、『わさドラ』25回目の放送。


 今回から、オープニング主題歌が夏川りみさんの歌う『ハグしちゃお』に変わった。こうしてまったく新しい主題歌にするくらいなら、『ドラえもんのうた』を女子十二楽坊のインストから通常の歌詞付きバージョンに戻してほしかった。『ドラえもんのうた』は、今後も映画の挿入歌などで使われていくようだが、テレビシリーズの主題歌の座を降ろしてしまうのはもったいない。もし降ろすなら、4月のアニメ『ドラえもん』リニューアルの時点で実行してもらいたかった。
 しかし、今日のオープニングを観て、そんな不満が半分以上消し飛んだ。『ハグしちゃお』は、思ったより悪くない曲だった。歌詞に「ドラえもん」という語こそ出てこないが、「ポッケに夢が一杯だよ」「君と一緒なら 何でもできるよね」といったフレーズが『ドラえもん』の作品世界とつながっていた。
 夏川りみさんが歌うとか『ハグしちゃお』というタイトルから、『ドラえもん』とはまったく関係ない歌詞になると思っていたが、よい意味で予想が裏切られた。願わくば、もっと『ドラえもん』の世界と密接な歌詞であってほしかったが…
 楽曲的にも、沖縄テイストの旋律が、ポップに楽しくアレンジされていて、耳にすんなりと浸透してきた。


ハグしちゃお』とともに流れたオープニング映像は、『ハグしちゃお』以上に素晴らしかった。「ふくれっ面、しかめっ面…」という歌詞に合わせてレギュラーキャラが表情をつくるところや、レギュラーキャラがひみつ道具に乗ってこちらへ向かってくるところなどは、観ていて本当に楽しい気分になった。レギュラー、準レギュラーだけでなく、原作に1度しか登場しないようなキャラまで大勢出てくるところも、たいへん気に入った。
 毎週オープニングを観るだけでテンションが上がりそうだ。





●「あやうし!ライオン仮面

初出:「小学四年生」昭和46年6月号
単行本:「てんとう虫コミックス」3巻などに収録

 原作の「あやうし!ライオン仮面」は、ドラえもんファンのあいだで人気が高く、よく話題にのぼるし、よくネタにされる。私自身も大好きな作品だ。笑いどころ、見どころが随所にあるし、アイディアに詰まってドラえもんに頼りまくったあげく、原稿執筆の作業まで押しつけて倒れこんでしまうフニャコフニャ夫先生の存在感は出色である。作中作の正義のヒーローが、ライオン仮面オシシ仮面→オカメ仮面と、だんだんふざけたキャラになっていくのもおもしろすぎる。
 タイムパラドックスのからくりを笑いどころ満載のギャグストーリーと結びつけた藤子・F・不二雄先生の作劇術にもほれぼれする。



 では、今回のアニメの感想を箇条書きで挙げていこう。


・『ライオン仮面』を連載している雑誌が「ゴロゴロコミック」というところに、心がピクンと反応した。


・タイムマシンで未来へ行って翌月号の『ライオン仮面』を読んできたドラえもんのび太に「あれからどうなるのさ。教えてよ」とせがまれ、「教えな〜い」と舌を出す仕種は、とても愛嬌があった。
 空地で『ライオン仮面』の続きを教える気になったドラえもんが、土管の上で脚を組む動作も、アニメで観ると愛らしい。


・フニャコ先生が土管から飛び出すところや、「なんという無責任なわしだ!」と自分に怒るシーンは、もっと大げさな演出をしてほしかった。


・フニャコ先生の部屋に『ライオン仮面』の各キャラクターのフィギュアが置いてあって、ちょっとソソられた。


・「場面が変わってオシシ仮面のいとこのオカメ仮面が出てくる」と迫真の口調で語るドラえもん。〝オカメ仮面〟という響きが原作以上に笑いを誘発した。


・事前に最も期待していた「次は少年キャベジンですよ」「その次、少年ザンネン」「少年チャランポラン」「少年ジャプン」と編集者たちが連続して言うくだりは、「次はうちの原稿ですよ」「こっちのも大急ぎで」「こっちだって…」といったふうに改変され、凡庸なシーンになりはててしまった。これは、大いに残念。






●「のび太のなが〜い家出」

初出「小学三年生」昭和56年4月号
単行本:「てんとう虫コミックス」25巻などに収録


「時間ナガナガ光線」を浴びせられ10分を1時間に感じるようになったママ。のび太が実際に家出している時間とそのあいだにママが感じる時間の長さのズレや、そのズレのため本当は大した家出でもないのにのび太をひどく心配するママの様子が、本作の中心的なおもしろさになっているが、原作の最後のページは、笑えるというより、胸にグッとくるものがあった。私は過去にこの話を読んで、3時間ぶりに帰宅したのび太を涙ながらに抱きしめるママの姿に涙ぐんでしまったこともあるくらいだ。
 のび太のたった3時間の外出が、ママには18時間の行方不明に感じられたわけで、ママののび太を思う気持ちの深さとママが感じていた18時間の重みが、胸に染み入ったのだ。



 そんなところで、『わさドラ』版「のび太のなが〜い家出」の感想を。


のび太が自分の部屋で読んでいた「ゴロゴロコミック」の表紙が、藤子・F先生のSF短編『征地球論』のトビラに似ていた。間違いなく、『征地球論』のトビラをモデルにしたのだろう。7月15日放送の「ムードもりあげ楽団登場!」で、のび太が観ているテレビ番組が『休日のガンマン』だったことがあるが、今度は『征地球論』の登場である。こうしたSF短編ネタは、一般性はないれど、藤子・Fファンにしてみれば嬉しいお遊びだ。(オープニング映像の終わりのほうでも、『征地球論』に出てくる宇宙人たちが描かれていた)


・ママに叱られて家出を思い立ち、荷物をまとめるのび太。その荷物のなかに、マヨネーズが混じっていたのが可笑しかった。


のび太が最初に家を出たとき、原作と違って外は雨降りだった。荷物を包んだ唐草模様の風呂敷を背負った上からさらに黄色い雨合羽を被った姿は、仰々しい分くだらなさも増しておもしろかった。


ジャイアンの部屋で「ジャイアンって意外にも親切なんだな」と言いながらマンガ雑誌を読むのび太。うつ伏せに寝転がって両脚をバタつかせる動作が、のび太の上機嫌な心理をよく表していた。


・原作では1コマだけ登場するしずかちゃんが、アニメではまったく出てこなかった。かかずゆみさん産休中の録音だったか。


スネ夫のび太のために取り寄せたラーメンは、原作では小さく描かれただけだが、『わさドラ』ではアップで映され、豪華な具で彩られているのが見てとれた。


・帰宅したのび太を涙ながらに抱きしめるママ。その光景を見た原作のドラえもんは、口を3の形にしながら淡泊な表情で「のび太が三時間ぶりに帰ってきたの」とパパに説明していたが、『わさドラ』では、完全にもらい泣きをしていた。


・そういえばこの話、主題歌に合わせたのか、ハグしちゃう場面で終わるのだなぁ。





●AパートとBパートの合間に、「ドラドラ探検隊 謎のたまご」というショートアニメが挟まれた。来年3月公開『のび太の恐竜2006』に向けた連続企画だ。ミニシアターのような独特の絵柄で描かれていた。ミニドラが登場!