ジャイアンシチュー

 6月15日は、ジャイアンの誕生日だ。
 ジャイアンは自分の誕生日になるとリサイタルを開きたがるので、周囲の友達には大迷惑である。でも、ジャイアンと直接的な友人関係がない一読者である私は、怖いもの見たさというか怖いもの聴きたさで、ジャイアンの歌声がどれほど公害的な騒音なのか一度体感してみたい、なんて思ったりもする。
 怖いもの見たさならぬ怖いもの喰いたさで、ジャイアンシチューも一度は口にしてみたいような気がしないでもない。ジャイアンシチューは、周知のとおり、ひき肉とたくあんと塩辛とジャムと煮干と大福とその他いろいろをドロ〜リと煮込んだ、不気味な臭いのする特製シチューだ。


 ジャアンシチューというと、いつも思い出すエピソードがある。
 以前にもちょっとこのブログで触れたことがあるが、2002年に藤子先生のふるさと富山県高岡市を訪れたさい、地元の方に、あるショットバーを紹介していただいた。そのショットバーは、藤子マンガに関連した単語でカクテルを注文すると、その語のイメージに合った創作カクテルをつくって出してくれるのだ。たとえば「ドラえもん」と注文すれば、ドラえもんのイメージに合ったカクテルが出てくるわけである。
 私は、初めのうちは、「とんでこいようちえんバス」「かっぱのカッポ」など、マイナーな藤子マンガのタイトルで注文していたのだが、最後にチャレンジャー精神を発揮して、「ジャイアンシチュー」を頼んでみた。
 出てきたのは、濃い焦げ茶色の液体に生卵が1個まるごと入ったカクテルだった。店員さんに聞いたところ、養命酒ベースのお酒に生卵を落としたという。養命酒+生卵だなんて、聞くだけで目がランランと冴えて夜眠れなくなりそうだった。 
 このとき出されたカクテルで最も強烈だったのは、藤子ファン仲間の某氏が注文した「狂人軍」だった。アルコール度96%のウオッカベースのカクテルだった。少し飲ませてもらったが、口に入れた瞬間、唇がしびれて頭がツーンとなり、「アチャチャーッ!」「ロレレーッ!」と本当に「狂人軍」の世界が展開されそうなテンションになった(笑) 


 2005年に再びこのショットバーを訪れたさいは、おいしく飲みたいという気持ちを優先して、「しずかちゃん」を注文。期待したとおり、ピンク色で甘めの、飲みやすいカクテルが出てきた。
 そのとき同行した仲間のなかには、「黒ィせぇるすまん」「黒ベエ」「クルパーでんぱ」など、怪しく危険なムード漂う単語を告げるチャレンジャーもいた(笑)



 ちなみに、『狂人軍』は、藤子A先生が創刊間もない「少年チャンピオン」に連載したナンセンスギャグマンガである。タイトルからも推察できるとおり、ほとんどの登場人物がイっちゃってるので、単行本化はほぼ不可能だろう。また、『とんでこいようちえんバス』は、「おともだち」1975年4月号に掲載されたF先生の作品、『かっぱのカッポ』は、劇団カッパ友の会会報「カッパしんぶん」1972年4月8日号〜74年2月5日号に月1で連載された、A先生の作品だ。