特別展「大英自然史博物館展」

 先月末、手塚治虫文化賞贈呈式・記念イベントのため上京したさい、特別展「大英自然史博物館展」にも足を運びました。
 会場は国立科学博物館。開催期間は3月18日(土)〜6月11日(日)です。
 
 
 
 大英自然史博物館の所蔵品から選りすぐった至宝370点をこの目で見られる喜び! とくに、絶滅動物の標本にワクワクしました。なにしろ、『ドラえもん』に登場した種がいっぱい展示されているのですから!!  


 
 ・肉食恐竜のカギヅメ
 「のび太の恐竜」の冒頭で、スネ夫ユタ州の恐竜公園で発掘されたティラノサウルスの爪の化石を皆に自慢します。例によってのび太だけはまともに見せてもらえませんでしたが、それがきっかけでのび太は「恐竜のまるごとの化石を発掘してみせる!!」と悔し紛れに宣言してしまうのでした。


 
 ・三葉虫
 「化石大発見!」の終盤に“新種の三葉虫、世紀の大発見!!”という場面がありますね。


 
 
 ・サーベルタイガー
 大長編『のび太の日本誕生』を思い出します。ギガゾンビの秘密基地で捕まってしまったドラえもんしずちゃんジャイアンスネ夫の前にサーベルタイガーが解き放たれ、もう少しで食べられそうになります。絶体絶命のピンチ…というとき、のび太がペガ・グリ・ドラコとともに駆けつけ救出してくれます。獰猛なサーベルタイガーも、ドラコに「ウガー」と一発脅されただけでおびえてしまうのでした。


 私は幼いころから絶滅動物に興味があって図鑑などを眺めて楽しんでいましたが、『ドラえもん』に登場した種はとくに子どもの頃から親しみ深く、このたび標本の実物を眼前で観られて大きな感動と興奮をおぼえました。


 『ドラえもん』の絶滅動物エピソードといえば、その筆頭格のひとつが「モアよドードーよ、永遠に」です。そこに登場したモア、ドードー、リョコウバトとも会えました♪
 
 
 
 ・モアの全身骨格


 
 ・モアの羽毛


 
 ・ドードーの全身模型


 
 ・ドードーの脚


 
 ・リョコウバト


 この展覧会で展示されている動物標本のほとんどは正真正銘の実物でしたが、ドードーの全身については模型でした(ドードーの脚は実物)。ドードーの完全な全身剥製は世界のどこにも残っていないそうです。かつてはドードーの唯一の剥製標本がオックスフォード大学博物館に所蔵されていましたが、誤って燃やされてしまったのだとか。残念…。
 リョコウバトは色合いがなんともきれいで、まじまじと眺めてしまいました。
 モア、ドードー、リョコウバトがここにいてくれたわけですから、あとはオジロヌーがいたら、ドラえもんがタイムホール&タイムトリモチで現代に連れてきた絶滅動物が勢揃いすることになります。


 
 ドードーの展示をちょっと遠巻きに眺めていたら、「これ、ドラえもんに出てきたよね〜!」などと会話するグループが2組ありました。『不思議の国のアリス』に言及する方も。このわずかな事例から、日本でドードーの認知度が高いのはドラえもんとアリスのおかげ、という結論が導き出されました(笑)


 始祖鳥の化石にも大興奮でした。子どもの頃から図鑑などでよく見ていて憧れだったあの始祖鳥の本物の化石が!! ひたすら感激です。
 
 
 始祖鳥は絶滅動物のなかでもスター的な輝きを放つ種ですが、『ドラえもん』絡みで始祖鳥といえば、私は先述の「化石大発見!」を思い出します。化石発掘に打ち込む老人が、ドラえもん&のび太が偽造したインチキ化石とも知らず、続々と珍しい化石を見つけて大喜びします。そのなかで老人は、ゴミ捨て場で拾ったこうもり傘の化石を見て「こうもりそっくりだ!始祖鳥以前にこんなものがいたんだ!」と感激しながら言います。始祖鳥というのは、“始祖鳥以前/以後”という表現が成立するくらい動物の進化史において重要な種なのだな、とそのセリフを読んで思ったものです。


 
 ・イグアノドン類の骨盤


 
 ・イグアノドンの歯化石
 イグアノドンといえば、「恐竜」という分類名を最初に与えられた3種類の化石爬虫類のひとつです。1842年のことでした。イグアノドンを発見したのはイギリスの医者ギデオン・マンテル。大きな歯の化石でした。それが現代に生息するイグアナの歯と似ていることから「イグアナの歯」を意味する学名“イグアノドン”と名づけられました。
 『T・Pぼん』の「バカンスは恐竜に乗って」にイグアノドンが一コマだけ登場します♪


 チャールズ・ダーウィンに関する展示にもテンションが上がりました。
 
 ・チャールズ・ダーウィンのパネル


 
 ・ビーグル号の航海


 
 ・アルダブラゾウガメ


 
 ・ダーウィンのペットだった若いガラパゴスゾウガメ


 
 
 
 ・コガラパゴスフィンチ、チリマネシツグミ


 
 ・ダーウィン種の起源』の手稿

 生物進化は藤子F先生の作品でたびたび描かれてきた題材です。その例を挙げたらキリがないのですが、たとえばSF短編の『創世日記』『うちの石炭紀』や、『T・Pぼん』の「バカンスは恐竜に乗って」などは、生物進化という概念が作品のテーマに強くかかわっています。
 『ドラえもん』には生物進化から着想を得た“進化退化放射線源”なるひみつ道具が登場しますし、『のび太の海底鬼岩城』『のび太と竜の騎士』など大長編ドラえもんの冒険舞台の説明に生物進化の知識が用いられたこともあります。
 そんな生物進化に関する理論が“進化論”であり、進化論のなかで最もよく知られているのが“ダーウィンの進化論”です。ダーウィンの進化論は、いくつか修正が加えられながら現在も生物進化の定説(の基盤)とされています。その反面、批判もたくさんあるようです。
 藤子F先生は『藤子・F・不二雄の異説クラブ』でダーウィンの進化論についてご自分の考えを語っておられます。


 この展覧会の展示品で、藤子ネタとか関係なく個人的に気に入ったりインパクトを感じたり印象的だったりしたものをランダムにアップします♪


 
 ・キリンの頭


 
 ・インドコブラの皮


 
 ・古代エジプトのネコのミイラ


 
 ・印刷された最古の本の一冊 プリニウス『博物誌』
 

 
 ・太古の人類の存在を証明した約40万年前の手斧


 
 ・シュモクバエ


 
 ・オオナマケモノ


 
 ・オオツノジカの頭骨


 
 ・フクロオオカミ


 
 ・火星の隕石


 
 ・ネアンデルタール人のゲノム


 
 ・火山噴火により数百キロ深くのマントルから出てきた岩石


 
 ・モルフォチョウ


 グッズがあまりに魅力的であれもこれも欲しい!と散財しかけましたが、グッとこらえて最小限にとどめました。
 
 ・始祖鳥のコースター!


 
 ・モア、ドードーのポストカード!!


 とても満足度の高い、充実の展覧会でした。