「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」Season2の第1話『鉄人をひろったよ』

 4月7日(日)午後9時45分からNHK BSで「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」Season2の第1話『鉄人をひろったよ』が放送されました。

 Season1の各ドラマが原作への敬意のこもった佳品ぞろいで、思った以上に楽しませてもらえたので、Season2があると発表されたときは嬉しかったし、放送が待ち遠しかったです。

 

 そうして迎えた『鉄人をひろったよ』の放送日。リアルタイムで視聴しました。

 15分のテレビドラマとしては実に力の入った鉄人のVFX表現をはじめ、巨大ロボットというとてつもないものを目の前にしながらもその割にとぼけた感じの老夫婦の会話、クライマックスの夜のビル街上空を飛ぶ鉄人、ラストの古谷徹さんのナレーションまで、ぜいたく感のある15分間を堪能できました。

 

 素性の知れない巨大な鉄人を拾って、それなりに驚いたり心配したりするものの、終始飄然としたたたずまいの老夫婦。原作マンガではその点がとても印象的でした。そうした雰囲気を実写なりにちゃんと出せるよう演出されていたと思います。風間杜夫さんと犬山イヌコさんがよい匙加減で演じてくれました。特に犬山さんは適役でしょう。

 

 ラストは風間さん演じる主人公のやや切なげなアップの表情もあって、鉄人とのあっけない別れに原作以上のペーソスや寂しさを感じました。このラストはあくまでも(鉄人という大それた存在の最期なのに、それにしては)あっけない空気感がキモだと思うのですが、今回のドラマではそこに少しウエット成分が含有されて、原作とは少し異なる印象をおぼえました。

 

『鉄人をひろったよ』(1983)と『大長編ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1985〜86)は、どちらもタイトルに「鉄人」が付いています。そんな共通点をもった2つの藤子F作品では「そんなに広くない住宅の庭に巨大ロボットがそびえ立つ」光景が見られます。日常の中の非日常感があふれていて、まことにシンボリックで、好きな光景です。今回のドラマでもそういう光景を見られてよかったです。