『怪物くん デーモンの剣』発売

 ぴっかぴかコミックススペシャル『怪物くん デーモンの剣』が発売された。
『デーモンの剣』は、1982年3月に公開された同名映画の原作として「月刊コロコロコミック」1982年1月号〜3月号に連載された作品だ。それをまとめて単行本化したのが、1982年4月2日発行のカラーコミックスであり、そのカラーコミックス版をもとにおよそ25年の歳月を経て新たなレーベルで世に出たのが、今回のぴっかぴかコミックススペシャル、というわけだ。
 カラーコミックス版では、同時上映の映画『忍者ハットリくん ニンニン忍法絵日記の巻』の原作マンガを同時収録していたが、ぴっかぴかコミックス版では『忍者ハットリくん』の部分を完全に削っている。



『デーモンの剣』という作品は、映画原作として新たに「月刊コロコロコミック」に描き下ろされたものではなく、「少年画報」1968年7月号で発表された「悪魔王子プリンス・デモキン」と、「週刊少年キング」1969年2月2日号〜2月9日号で発表された「悪魔の大神殿を攻略せよ!」の2作を、『デーモンの剣』として人括りにしたものである。実際の映画では、「悪魔王子プリンス・デモキン」のパートは原作としてまったく使わず、「悪魔の大神殿を攻略せよ!」のパートを下敷きにして話を膨らませている。
 映画は、怪物くんが父である怪物大王を命がけで救おうとする、アクションと感動に満ちたストーリーで、怪物くん親子の愛情とともにデモキン親子の愛情もしっかりと描いている。悪魔ランドが舞台となり、怪奇テイストが濃厚だ。



『デーモンの剣』に怪物くんのライバル的なキャラクターとして登場するプリンス・デモキン。怪物くんが怪物大王の息子なのに対し、デモキンは悪魔大王デーモンの息子で、どちらもその世界で「王子」と呼ばれる立場にある。二人ともおぼっちゃま育ちで、性格的に似通ったところがあり、敵対する種族に生まれながら両者のあいだには友情らしきものが芽生えるのだった。
 プリンス・デモキンは後年、『怪物くん』内の一サブキャラクターから独立して『プリンスデモキン』という作品の主人公にも抜擢される。
『プリンスデモキン』は、学研の通信添削教材「トップラーン」で連載された作品で、毎回別冊ふろくの形態で発表された。連載期間が1991年4月号から1999年3月号まで(以後、1年間の再録があり)とかなり長く、全部で96回分の話が描かれた。単行本は「GSコミックス」なるレーベルで2巻まで出たが、連載初期の24回分(単行本では2回分を1話とカウントしている)が収録されただけで、単行本未収録の話が全体の4分の3も残されている。全話が単行本化されれば、8巻まで出ていた計算になる。
 2巻まで出た単行本もとっくに絶版で、比較的新しめの藤子作品でありながら、読むのが非常に困難な状況になっている。『プリンスデモキン』の完全版単行本が刊行されることを、切に願いたい。



『プリンスデモキン』は、主人公のデモキンが、お伴のバットラーをしたがえてあちこちを旅し、そこで巡り会った子どもの悩みを解決すべく、不思議な力を使って活躍する話である。登場する子ども達の悩みは、いじめ、肥満、孤独、勉強など、現代社会を如実に反映したものだった。



『プリンスデモキン』連載中の「トップラーン」には、デモキンの絵をあしらった付録がつくことがあった。それらの付録は、「知能遊具」と名付けられていた。そんなデモキン知能遊具のうちのいくつかを紹介したい。


・知恵の輪セット
 10種類の知恵の輪がセットになっている。子どもの頃たまに知恵の輪をやったが、あまり得意ではなかった。だが、ああしてもこうしても全然はずれなかったものが、何かの拍子に軽くはずれる瞬間があって、それが気持ちよかった。


・色合わせ6角パズル
 隣り合った色を合わせて、箱の図に示されたような模様を作るパズル。真ん中にどのコマを置くががポイントである。


・くいうちパズル
 長さの違うくいが10本ある。その10本のくいを、台に開けられた5つの穴に差し込んで、台から突き出たくいの高さがすべて同じになるようにするパズル。穴の深さもそれぞれ違っている。

 こうした「知能遊具」が付録につくところは、同じ学研の「科学」と「学習」シリーズをどこかしら思い出させる。私は、小学生のとき「科学」と「学習」をとっていて、その付録にけっこうワクワクしていた。とくに「科学」の付録はなかなか本格的な実験セットや観察セットであり、純粋にサイエンス・マインドを掻き立てられた。