『宇宙からのメッセージ』

 数日前に映画『宇宙からのメッセージ』(1978年公開、深作欣二監督)を友人たちと観る機会がありました。


宇宙からのメッセージ』は、1977年にアメリカで公開された『スター・ウォーズ』人気にあやかって制作された日本映画です。『スター・ウォーズ』が日本で公開される前に『スター・ウォーズ』っぽい作品を作って公開してしまおうという(笑)


 そんな背景を持った映画ですから、比較対象がどうしても『スター・ウォーズ』となり、そうすればどうしたって本家『スター・ウォーズ』より見劣りしてしまうわけですが、それでも特撮の技術など相当なものだと思うし、大作を作ろうという意気込みが伝わってくるし、最後まで退屈しない娯楽作品としてなかなかの出来栄えだと感じました。


スター・ウォーズ』にあやかって壮大なスペーオペラを標榜したわけですが、SFマインドには乏しい気がします。SF者の目線で見たら穴だらけ、ツッコミどころ満載の、それはそれで旨みのある作品だとは思いますが(笑)
 SFマインドはあまり感じられなくても、時代劇・任侠モノならお手のものという作り手の特質が随所に表れています。ですから殺陣のシーンなんか立派で、本家『スター・ウォーズ』を凌駕しているのではないでしょうか。
 俳優さんたちの演技にも、時代劇や任侠モノの味付けが漂い、それが遥か未来の壮大な宇宙を舞台にしたこの映画の設定とミスマッチで、だからこそ固有の面白さが醸し出されています。


 私が最も印象に残ったのは、ダース・ベーダーもどきの敵側ボスキャラの、時代劇がかった重厚な演技。それと、敵と戦う勇士の一人に選ばれたチンピラの、いかにもチンピラという演技。この二つです(笑)
 レイア姫もどきのお姫様は志穂美悦子さんが演じているだけあって、格闘シーンが様になっていました。


 そして、終盤にちょろっと登場した丹波哲郎さんの存在感といったら! 地球連邦評議会議長の役だったのですが、さすがの貫録です。難民化した異星人たちを地球連邦で受け入れる用意ができている!と丹波さんが宣言したときは、不覚にも感動させられました^^


 C-3POR2-D2を意識したとおぼしきロボット「ベバ2号」も登場します。その声を曽我町子さんが演じていて、藤子ファン的には初代オバQをどうしたって思い出してしまいます。
 藤子ファン的にダース・ベーダー&レイア姫& R2-D2のパロディといえば、『ドラえもん』「天井うらの宇宙戦争」に登場したアカンベーダーとアーレ・オッカナ姫とR3-D3ですね(笑)
 さらに、『宇宙からのメッセージ』と藤子先生とはもう少し直接的な関係もありまして、公開当時発売された『宇宙からのメッセージ』のストーリー紹介本(1978年、バンダイ出版事業部発行)の帯に藤子先生がコメントを寄せているのです。
 
「これはスター・ウォーズ以上の大オモチャ箱だ」とのフレーズは、この映画をうまく誉めているなあと思います(笑)


 藤子先生のトキワ荘時代からの盟友・石ノ森章太郎先生は、この映画の原案者の一人に名を連ねており、コミカライズも担当しています。
 その単行本がこれです。
 
 これはイレギュラーな描き下ろしの仕事だったため、石森プロからすでに独立していた先生がたや元スタッフさんに作画スタッフとして招集がかけられました。この単行本の奥付には作画スタッフとして石川森彦先生、ひおあきら先生、山田ゴロ先生の名前が掲載されています。聞いたところでは、当時ひおあきら先生のお手伝いをしていたしげの秀一先生(『バリバリ伝説』『頭文字D』)も参加していたそうです。
“描き下ろし執筆”という非常事態のため元スタッフさんを助っ人に呼ぶところは、藤子不二雄A先生が『用心棒』(1998年)を執筆したときの藤子スタジオの状況と印象が重なります。