アントニ・ガウディと藤子・F・不二雄

 2月9日のことです。名古屋市美術館で開催された「ガウディとサグラダ・ファミリア展」を観覧しました。

 

 ↓こちらで名古屋市科学館「化石ハンター展」のレポートをしましたが、「化石ハンター展」を観たあと名古屋市美術館へ移動して「ガウディとサグラダ・ファミリア展」に入場したのです。

 https://koikesan.hatenablog.com/entry/2024/02/25/163757

 

 名古屋市科学館名古屋市美術館はほぼ隣り合ったところにあって、企画展をハシゴするのに好都合だったりします。

 

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」では、ガウディの創造の源泉、ガウディの思想、ガウディの業績、そしてサグラダ・ファミリアのすばらしさにたっぷり触れられました。

 展示は基本的に撮影NGでしたが、一部のスペースで撮影OKでした。

 

 さて、ここから藤子ファン目線で語っていきます。

「ガウディとサグラダ・ファミリア展」に、ガウディが生きた時代に起きた洞窟ブームに言及するパネル展示がありました。洞窟ブームがガウディに影響を与えたことを示す展示でした。

 そこでは、当時の雑誌に掲載されたカッパドキア(トルコ)の風景画が、ガウディの建築物と見比べられるようになっていました。それを見れば、カッパドキアの風景がガウディに影響をおよぼしたのだろうと得心できます。

 ガウディの生きた19世紀末、ヨーロッパに起きた洞窟ブーム。そのブームは、地球の成り立ちなどを科学的に探究できるようになった時代背景と密接に関係しています。科学の時代が到来していたのです。

 洞窟の驚異的かつ面白い造形が科学(地質学)の進展によって次々と発見され、そのイメージが写真や図版などのメディアをとおして各地に広まり、それによって洞窟ブームが発生したのです。

 そういうブームがあったことを念頭に置いてガウディの建築を見ると、「これは洞窟っぽいな」と感じさせるものがあるわけです。

 

 私はガウディに関してまるっきりの門外漢なので、素人の単なる印象で言うのですが、ガウディの建築物の中でカッパドキアから影響を受けたのはこれではないかと感じられるものがあります。

 ガウディの代表作の一つ「カサ・ミラ」です。

 特に、「カサ・ミラ」の屋上の風景がカッパドキアをイメージしているように見えてなりません。(私だけがそう感じるのではなく、そういう説はすでに存在しているようです)

 

 そのように感じた流れで藤子ファン的に思い出すのが、『大長編ドラえもん のび太の魔界大冒険』に登場する大魔王の城です。この城は、藤子・F・不二雄先生がカッパドキアをモデルにデザインしたものなのです。

 大魔王の城は、てんとう虫コミックス大長編ドラえもんVOL.5 のび太の魔界大冒険』(小学館)の表紙画の背景にも描かれています。

 

「ガウディと藤子F先生はどちらもカッパドキアをモデルに建築物をデザインした人物である」

 私はそんな共通点に思い至りました。

 ガウディは現実の建築物、藤子F先生は空想の建築物ではありますが、両者ともにカッパドキアの風景を建築物のデザインに取り込んだことに違いはありません。

 

 さらに次の点も言い添えておきたいです。

 2017年、藤子・F・不二雄ミュージアムで企画展「ドラえもん×コロコロコミック40周年展」(2017年7月8日~2018年1月15日)が開催されました。そのとき、『のび太の魔界大冒険』の原画が展示されたコーナーに「担当編集者談」として、こんな解説がありました。

「大魔王の城のモデルはトルコのカッパドキア遺跡ですが、実は先生が取材旅行に訪れたのは本作を描いた後でした」

 

 私は藤子F先生がカッパドキアを訪れたことがあることを前から知っていたので、てっきり大魔王の城はカッパドキアを実際に取材した経験をもとに描かれたものと思い込んでいました。

 ところが、この「担当者談」でそうではないことが明らかになったのです。

 藤子F先生はカッパドキアを実際に訪れる前にカッパドキアの写真か何かそういった資料を参考にして大魔王の城をデザインした、というのが真相なのでしょう。

 

 そこでガウディに目を移すと、どうやらガウディも実際にカッパドキアへ足を運んだのではなく、当時の雑誌などに掲載された写真・図版に触発されたようなのです。

 すなわち、今見てきたことからこう言ってしまえるわけです。

「藤子F先生もガウディも、実際に訪れたカッパドキアの風景ではなく、カッパドキアの写真・図版などに触発されて建築物をデザインした」と。

 

 それは、時代も国もジャンルも異なる2人の天才の、まことに細い共通点です。われながらこじつけ気味の解釈だとも思いますが、そういうささやかな共通点を見つけた私は、それだけのことで妙に興奮してしまったのでした(笑)

 

 ちなみに、藤子F先生は、海外への取材旅行で(主に古代遺跡を訪れるため)各地へ足を運んでいて、サグラダ・ファミリアを訪れたこともあります。そのとき撮影された、サグラダ・ファミリアをバックに写る藤子F先生の写真も存在します。藤子F先生とガウディはそういうかたちでも接点があったわけです。