藤子・F・不二雄『モッコロくん』初単行本化決定!

 藤子不二雄FC「ネオ・ユートピア」のメーリングリストで、「F先生の子供マンガの意欲作『モッコロくん』がいよいよ小学館ぴっかぴかコミックスより9月1日に発売(500円税込)」という情報が送られてきた。「7月15日発売マイファーストビッグのドラにPRあり」とあったので、さっそくマイファーストビッグ『ドラえもん』ゆかいに大変身!!編を購入。情報のとおり、ぴっかぴかコミックスの広告ページで「F先生の幼年まんが『モッコロくん』9月1日発売決定!!」と告知されていた。
 これは、たいへな吉報だ。よくぞ決断してくれました!と、関係者に感謝したい気持ちである。


『モッコロくん』は、今まで一度も単行本化されたことのない作品である。それがついにぴっかぴかコミックスとして刊行されることになったのだ。
 ぴっかぴかコミックスはこれまでに、『ドラえもん』『パーマン』『忍者ハットリくん』『怪物くん』など、すでに単行本化されている藤子作品の中の未収録エピソードを新たに掲載することはあったが、作品そのものがまるごと未単行本化だった藤子マンガを世に出すのはこれが初めてである。
 しかも『モッコロくん』は、個人的な話になるが、世の中のあらゆるマンガの中で、私が生まれて初めて好きになった作品なのだ。小学館の学習雑誌「幼稚園」に連載されていた『モッコロくん』を毎月楽しみに読んでいた記憶が、今でも鮮明に蘇る。そんな、私の藤子不二雄ファン歴のルーツともいえる記念碑的な作品が、およそ30年の時を経て単行本化されるのだから、感無量である。


『モッコロくん』の主人公・モッコロくんは、コガネムシをモデルにしたとおぼしき、丸っこい緑色の昆虫(のような生き物)である。ある日、庭で凍えて気を失っているところをゆうちゃんという男の子に助けられ、それをきっかけにゆうちゃんの家に居候することになる。そうしてモッコロくんは、毎回毎回不思議な力を使い、ゆうちゃんの身にふりかかる問題を解決したり、皆に奇想天外な体験をさせてくれたりするのだ。
 モッコロくん以外にも、ゲストキャラとして、アリ、ハチ、カブトムシ、トンボ、チョウ、キリギリスといった様々な昆虫仲間が登場するため、昆虫好きの子どもだった私は、このマンガにいっそう強く惹きつけられた。また、実在の昆虫以外にも、わらい虫だとか、なき虫だとか、おかねむしといった架空の虫も出てきて、まさに虫尽くしの作品なのである。


「幼稚園」「小学一年生」に連載された作品なので、カラーページが多く、1コマ1コマが大きめ、というのも本作の特徴だ。ぴっかぴかコミックスでカラー掲載されれば、画面を眺めているだけも楽しくなりそうだ。
 そして、話の構造が単純な幼年マンガだからこそ、藤子・F先生の構成力やアイデア、言葉選びのセンスが率直に伝わってくる。


 この『モッコロくん』が売れるかどうかで、今後も未単行本化藤子マンガをぴっかぴかコミックスで出せるかどうか決まるような雰囲気なので、『モッコロくん』には、ぜひとも売れてもらいたい。『モッコロくん』に続いて、あの作品やこの作品も初単行本化されるのでは、と夢が膨らむ。


『モッコロくん』初出データ

「幼稚園」1974年1月号〜1975年3月号
「小学一年生」1974年4月号〜1975年3月号