ぴかコミ『モッコロくん』、『ビリ犬』1巻発売

 ぴっかぴかコミックス『モッコロくん』、『ビリ犬』1巻が発売された。



 藤子・F・不二雄先生の幼年マンガ『モッコロくん』は、これが初めての単行本化だ。『モッコロくん』が「幼稚園」「小学一年生」に連載されたのが1974年から75年にかけてだから、およそ30年ぶりに陽の目を見たことになる。
 モッコロくんとゆうちゃんの少し不思議でほのぼのとしたエピソードや、様々な虫たち多彩な活躍を、あたたかみのある色合のカラーページで楽しめる。


『モッコロくん』は、私が生まれて初めて好きになったマンガである。そんな思い出深い作品が、こうして一冊の単行本にまとまったところを見ると、胸の底から深い感慨がこみ上げてくる。そして、『モッコロくん』の単行本がいま目の前にあるという事実が、やたらと不思議になってくる。


 さっそく読んでみた。すでに読んだことのある作品だけれど、こうして単行本のかたちで読むと、藤子・F先生の新作に接しているような新鮮な感覚をおぼえる。
 まず、モッコロくんの丸っこくて愛くるしいルックスが魅力的だ。ゆうちゃんのピンチを救うときのモッコロくんは実に頼もしいし、夢中になってゆうちゃんと遊ぶ姿は心底楽しげだ。結構食いしん坊な面もあって笑わせてくれるし。


 アメンボが水に浮くとか、カブトムシが力持ちだとか、アオムシの外見が新幹線のフォルムに似ているとか、そういう種々の虫たちの特徴・生態をうまくストーリーに絡めていて、虫という存在の不思議さ、虫のユニークな姿、虫が有している驚異的な能力への興味をそそられる。虫が嫌いな人でも、『モッコロくん』を読んでいるあいだは虫好きになれそうだ。


 この単行本のラストに「がんばれゆうちゃん」を配置したのは良い構成だ。「がんばれゆうちゃん」は、下記のリストを見てわかるとおり、連載最終話というわけではないが、最終話らしい最終話のない『モッコロ』くんを単行本化するにあたって、ゆうちゃんの頑張り(無理やりだけれど)と成長を描いたこの話をラストに持ってきたのは、非常に望ましい配慮だと思うのだ。


 作品全体を通して、あどけない笑いや愉快な雰囲気のなかに、けなげに生きる生き物たちへの賛歌が感じられ、読んでいてあたたかい気持ちになった。



 ぴっかぴかコミックス『モッコロくん』の収録作品は以下のとおり。

●「こんにちはモッコロくん」/「幼稚園」1974年1月号
●「いじめっ子には負けないぞ」/「幼稚園」1974年2月号
●「おかしなわらい虫」/「幼稚園」1974年3月号
●「特急アオムシ号」/「幼稚園」1974年5月号
●「アメンボのふしぎ」/「幼稚園」1974年6月号
●「見えない味方」/「幼稚園」1974年7月号
●「地面のなき声」/「幼稚園」1974年8月号
●「ゾウとたたかえ」/「幼稚園」1974年9月号
●「あばれ馬を止めろ」/「幼稚園」1974年10月号
●「春風せん風き」/「幼稚園」1974年11月号
●「たまごを守ろう」/「幼稚園」1974年12月号
●「ケーキに集まれ」/「幼稚園」1975年3月号
●「おし入れはゲレンデ」/「幼稚園」1975年2月号
●「おもち大すき」/「幼稚園」1975年1月号
●「公園にはなか間がいっぱい」/「小学一年生」1974年4月号
●「虫となかよくなろう」/「小学一年生」1974年5月号
●「ハイキング」/「小学一年生」1974年6月号
●「すてきな遊び場」/「小学一年生」1974年7月号
●「花火虫はだあれ?」/「小学一年生」1974年8月号
●「トンボ・ジェット」/「小学一年生」1974年9月号
●「しょっ角で遊ぼう」/「小学一年生」1975年2月号
●「がんばれゆうちゃん」/「小学一年生」1974年10月号


※リストの見方 ●「サブタイトル」/「初出」

『モッコロくん』は全部で27作品が発表されているが、ぴっかぴかコミックスにはその中から22作品が収録された。
 残念ながら未収録となったのは、「幼稚園」1974年4月号、「小学一年生」1974年11月号、12月号、1975年1月号、3月号で発表された5作品だ。このうち、「小学一年生」1974年11月号と12月号の作品は、「Neo Utopia」34号で再録されている。


 当ブログ7月15日の記事で、『モッコロくん』初単行本化の報に際しての私の思いを書いたので、よろしければ参考にしていただきたい。
■「藤子・F・不二雄『モッコロくん』初単行本化決定!」
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20050715#p2





 藤子不二雄A先生の『ビリ犬』1巻の収録作品は、以下のとおり。

●「ビリ犬登場」/「ぼくら」1969年1月号/TCS・FF
●「ビリ犬と犬たち」/「ぼくら」1969年2月号/TCS・FF
●「学者犬ガリ犬」/「ぼくら」1969年4月号/TCS・FF
●「ビリ犬の家さがし」/「ぼくら」1969年5月号/TCS・FF
●「空飛ぶ冒険野郎」/「ぼくら」1969年6月号/TCS・FF
●「パパと遊ぼうよ」/「コロコロコミック」1989年10月号/FF


※リストの見方 ●「サブタイトル」/「初出」/「これまでの単行本収録状況」(TCS…てんとう虫コミックススペシャル、FF…藤子不二雄ランドおよび藤子不二雄Aランド)

 今回収録された6作品は、すべて現行商品の藤子不二雄Aランドで読めるものばかりだ。しかし、「ぼくら」初出の5作品については、藤子不二雄Aランドがモノクロのトレス版を載せているのに対し、ぴっかぴかコミックスは初出のカラー版を収録しているので、カラフルな色彩や藤子A先生本来の描線を味わうならば断然ぴっかぴかコミックスである。