藤子不二雄A『サル』最終回

 当ブログ7月10日の記事で触れたとおり、7月16日(土)発売の「ビッグコミック増刊」8月17日号で、藤子不二雄A先生の連載マンガ『サル』が最終回を迎えた。
『サル』は、藤子A先生の代表作でアニメにもなった『プロゴルファー猿』の続編的作品で、少年ゴルファーだった主人公・猿谷猿丸が、「サル」と呼ばれる大人になり、アメリカを舞台に熱いゴルフを繰り広げる物語だ。
 連載は「ビッグコミック」1999年1月10日号からスタート。月2回発売の「ビッグコミック」で月1回掲載、というスタイルだった。
 同誌2000年4月10日号で一旦連載が中断するが、翌2001年、「ビッグコミック増刊」6月17日号で再開し、現在に至る。「ビッグコミック増刊」は年5回の発売なので、「ビッグコミック」月イチ連載時より発表ペースが落ちたことになる。


 単行本でいうと、第1集と2集が「ビッグコミック」月イチ連載分を、3集・4集が「ビッグコミック増刊」連載分を収録している。
 この単行本で順番に『サル』を読んでいくと、2集と3集のあいだでストーリーの不連続性を感じることになる。2集までは、サルがシャドウ・トーナメントに出場するため雑誌記者の香織さんらとアメリカ大陸を車で移動する話だったのに、3集以降になると、シャドウ・トーナメントの話はどこかへ行ってしまい、香織さんらも初めからいなかったかのように完全に消えてしまうのだ。
 その点が若干気になるが、私は、次回への引きが強いこの作品を毎回楽しみにしながら読んでいた。その楽しみも、今回で終わりだ。前回までの話が、とくに最終回へ向かう盛り上がりを見せていたわけでもないし、今号の話も、最終回といえば最終回のような終わり方をしているが、べつに最終回じゃなくてもかまわない内容だったため、『サル』の連載終了は、極めて唐突な決定だったような気がしてならない。
 長く続いてきた『サル』の連載がこれで終了かと思うと寂しい限りだ。『サル』最終ページの欄外に、「藤子不二雄A氏の次回作も進行中です。お楽しみに」とあるので、騙されたと思って次回作を待ちたい。


『サル』の6年半の連載期間(中断期間を含む)を振り返れば、本作最大の衝撃は、サルの弟・中丸が奇怪なルックスの大人になって登場したことだろうか。
『サル』の単行本・最終巻となる第5集は、9月30日(金)発売の予定。



 さて、本日は、最近いろいろな友人知人から教えてもらった藤子不二雄関連情報をまとめて紹介したい。情報をくださった皆さん、ありがとうございます。


■現在、熊本県「湯前まんが美術館」にて、「藤子不二雄Aまんが原画展」が開催されている。昨年京都や東京で開催された「まんが道 藤子不二雄A展」と比べ、規模はかなり小さめのようだが、九州方面の方が藤子A先生の生原画を見るには良い機会だと思う。

・期間:平成17年7月15日(金)〜9月4日(日)
・休日:期間中無休
・会場:熊本・湯前まんが美術館(那須良輔記念館)
 熊本県球磨郡湯前町1834-1(TEL:0966-43-2050)
 くま川鉄道湯前駅」下車すぐ
・開館時間:9:00〜17:00
・観覧料(通常料金):高校生以上300円 小学・中学生100円 幼児無料 
・内容:代表作「忍者ハットリくん」・「怪物くん」・「プロゴルファー猿」・「笑ゥせぇるすまん」・「まんが道」の原画40点を展示

 情報に変更があるかもしれないので、下記サイトでご確認を。
 http://www.yunomae.com/index.phtml?m=Nx&v=ArtView&articleid=400
(情報元「月刊ぽけっと」HP)
 http://homepage3.nifty.com/fujikofujio/jouhou-box/index.html
 

■雑誌「演劇ぶっく」8月号(演劇ぶっく社)
 劇作家・演出家の倉持裕氏が、連載コラムで、藤子A先生の『夢魔子』*1をとりあげている。こうした雑誌記事で『夢魔子』が話題になるのは珍しいことだが、倉持氏は、『夢魔子』をはじめ藤子不二雄A作品全般が嫌いな様子で、『夢魔子』のことを「『笑ゥせぇるすまん』の出来損ない、で済ませたいところだが、そもそも『笑ゥせぇるすまん』こそ出来損ないだという声も聞こえてきそうである」などと貶したうえ、藤子A先生がオチのコマで使う黒い太枠の効果についても否定的に書いている。

 

「昭和の時代 高度経済成長期から現在まで、50年間の軌跡」(監修:伊藤正直・新田太郎/小学館/2005年8月発行/税込4410円)
 本書に「漫画文化発祥の地 トキワ荘」の項があり、「時代の証言」として藤子A先生のインタビューが掲載されている。インタビューの内容は、これまで何度も語られたことである。



「漫狂画人」飛鳥昭雄工学社/2005年7月発行/税込1680円) 
 1982年に第4回藤子不二雄賞を受賞している著者が、自分のマンガ人生を中心に、マンガにまつわる種々のエピソードを書いている。
 藤子不二雄先生の話題も少し出てきて、251ページには『パーマン』の描きかけ原稿が載っている。この『パーマン』の描きかけ原稿の画像は、著者の公式サイトのコラム「漫狂画人」第50回でも見ることができる。
飛鳥昭雄公式サイト「飛鳥堂」:「漫狂画人」41回〜50回
http://askado.web.infoseek.co.jp/column/mankyo/co41_50.html
個人的には、著者が「あすかあきお」のペンネームで「別冊コロコロコミック」などに発表していた超能力マンガが思い出深い。



「放送禁止映像大全」天野ミチヒロ三才ブックス/2005年7月発行/税込1365円)
 何らかの事情で再放送されなかったりソフト化されない映像作品を紹介した本。藤子作品では、『オバケのQ太郎』『パーマン』『ジャングル黒べえ』をとりあげている。
(「昭和の時代」「漫狂画人」「放送禁止映像大全」の3冊については、情報をもらってから近隣の書店で探したものの、今のところ私自身は現物を確認できていない)




■そして、本日最後の情報。
 当ブログ7月13日の記事で、田中道明氏がかつて「コロコロコミック」に連載していたマンガ『迷犬タマ公』をとりあげた。その『迷犬タマ公』に関して、田中氏ご本人から藤子・Fマニア注目の情報をいただいた。

『迷犬タマ公』の連載がはじまって3〜4回は藤本先生がネームを見てくれることになり、話によっては藤本先生がネームを描いてくれたところが数ページあります。

 とのことである。
『迷犬タマ公』に藤子・F先生のネームが含まれていると知れば、どこがF先生のネームなのだろう、と想像を巡らせたくなる。連載初期の『迷犬タマ公』は、田中氏と藤子・F先生による隠れた合作マンガだった、と考えてみるのもオツなものだ。


・「藤子不二雄ファンはここにいる」:田中道明『迷犬タマ公』
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20050713

*1:夢魔子』:「高3コース」1970年4月号〜8月号連載