赤目四十八滝

(前の記事「伊賀へ行ってきた」の続きです) 
 伊賀市から名張市へ移動し、赤目四十八滝へおもむいた。赤目四十八滝は、およそ4キロに及ぶ渓谷で大小さまざまな滝が見られる景勝地だ。
 この赤目四十八滝も原作マンガの『ニンニンふるさと大作戦』に登場する。マンガのなかでは、四十八滝最後の滝の裏側に伊賀にんぽう谷へ抜ける秘密の通路が隠されているという設定になっている。私はここへ出かける前日までに車谷長吉の小説『赤目四十八瀧心中未遂』を読破して気分を盛り上げた。とはいえ、この小説は登場人物が心中を目的に赤目四十八瀧へ向かう話なので、そんな小説を自分が赤目四十八滝へ行く前に読むのは精神衛生上どうかとも思う。
 でも、この小説で書かれた赤目四十八滝の情景描写と実際の情景が合致していることをいちいち確認しながら歩を進めるのは、それなりにワクワクする体験だった。



 赤目四十八滝の入山口に「日本サンショウウオセンター」という施設がある。私が子どものころ愛知県に「香嵐渓ヘビセンター」というヘビばかりがいる動物園があったが、それのサンショウウオ版といったところか。
 この日本サンショウウオセンターは、クロサンショウウオ、エゾサンショウウオ、トウキョウサンショウウオ、ヒダサンショウウオなど日本に生息する各種サンショウウオを中心に世界の両生類を飼育・展示している。さほど大きな規模の施設ではないが、ここでの目玉はやはり赤目四十八滝にも生息するという特別天然記念物オオサンショウウオだろう。オオサンショウウオ骨格標本まで展示してあった。
 赤目四十八滝の探勝道へ入ったのは夕刻が近づきつつあるころだったので、一番奥地にある最後の滝までは到達できなかったが、渓流沿いの探勝道を進むにつれて一つまた一つと多様なかたちの滝が出現してくる道程は、この地ならではの独特の醍醐味があった。
   




 土産物屋では、伊賀の業者が製造販売している伊賀名物の藤子グッズ「忍者ハットリくん 忍にんせんべい」を購入。せんべい32枚入りで1300円だった。けっこうボリューム感のあるパッケージである。基本的に伊賀でしか買えないものだが、A先生のふるさと氷見でも特別に販売されており、私は氷見でもこのせんべいを買ったことがある。氷見で買っても伊賀で買っても変わりないのだが、氷見版は「氷見 忍者ハットリくん・からくり時計」という小さなシールが貼ってあって、そこで区別できる。
 赤目四十八滝の土産物屋では、そのほか、陶器製のサンショウウオなどを購入。ある土産物屋で店のおばちゃんが「うまいよ、うまいよ」としきりに声を上げていた「へこきまんじゅう」も食べてみた。これは、大判焼きやたい焼きと同じ生地でさつまいもを包んだ焼き菓子で、さつまいもの練り具合がほどよくてなかなかおいしかった。
 それにしても「へこきまんじゅう」とは味がありすぎるネーミングだ。藤子ファンとしては『ドラえもん』の「メロディーガス」をちょっと思い出してしまう。しずちゃんがうっとりとした表情で「ヘ長調ね」と言うのが抜群に笑えるあの話だ。
「へこきまんじゅう」のオリジナルキャラクターである「忍者福笑門」というのも味がありすぎる。「へこきまんじゅう」も「忍者福笑門」も商標・意匠登録済みだそうだ。


 
 名張市には江戸川乱歩の生誕地もあるので寄っていこうと思っていたが、赤目四十八滝を出たころはすでに夕闇に包まれていて断念した。昭和30年代、A先生は江戸川乱歩原作の『怪人二十面相』をマンガ化して「少年」に連載したことがあるし、F先生は江戸川乱歩が文を担当した『かいじん二十めんそう』(「たのしい一年生」「たのしい二年生」)で挿絵を描いているので、その点で江戸川乱歩と藤子先生はつながりがあるのだ。