「ウラシマキャンデー」「ドラえもんとドラミちゃん」放送

koikesan2006-12-03

 12月1日(金)放送のアニメ『ドラえもん』は、「ドラミちゃん誕生日スペシャル!」だった。12月2日がドラミちゃんの誕生日にあたり、来春公開の映画にドラミちゃんが登場することもあって、こういう趣向の特番にしたのだろう。
 その特番内で「ウラシマキャンデー」と「ドラえもんとドラミちゃん」がアニメ化された。



●「ウラシマキャンデー」

初出:「小学生ブック」昭和49年5月号
単行本:てんとう虫コミックス第9巻など
アニメサブタイトル:「ゴキブリのおんがえし ウラシマキャンディー」

“ウラシマキャンデー”というひみつ道具名がほのめかしているように、本作は、「浦島太郎」のお話を下敷きにしている。浦島太郎は亀を助けて海の中の竜宮城で乙姫様からもてなしを受けたが、のび太は甕(かめ)を守って竜宮姫子(たつみやひめこ)さんの家でもてなしをされる。舞台が竜宮城から竜宮家へと、より日常性の高い場所へずらされ、元の「浦島太郎」と本作との舞台設定の差異がほのかな可笑しみを生んでいる。とくに、姫子さんがバレーを披露する場面は、美しいシーンであるはずなのに、どことなく“ほのかな可笑しみ”がにじんでいて印象に残る。
 姫子さんが、自宅内で気の済むまで徹底的にのび太に恩返しをするため、「(のび太が)かえれないように、くつをかくしとくわ」と真面目な顔で言うコマは、“ほのかな”どころではなく、はっきりと可笑しくて笑える。今回のアニメでもこの台詞で笑いを誘われた。



●「ドラえもんとドラミちゃん」

初出:「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号
単行本:てんとう虫コミックス・プラス4巻など
アニメサブタイトル:「勝負だ!妹よ… ドラえもんとドラミちゃん」

 原作の初出順でいうと、「ドラえもんとドラミちゃん」は出木杉初登場のエピソードにあたる。単行本に収録されたのはずいぶんあとになってからなので、単行本のみで『ドラえもん』を読んでいれば、これが出木杉初登場作、という印象はないだろう。
 本作は、映画原作以外の『ドラえもん』作品がF先生の筆で「月刊コロコロコミック」に描き下ろされた珍しい事例でもある。そういう事例は、本作以外では「ドンジャラ村のホイ」(昭和59年7月号)のみではなかったろうか。「月刊コロコロコミック」には毎号『ドラえもん』の通常作品(短編作品)が何話も収録されていたが、それらは学年誌などで発表された作品の再録であった。



ドラえもんとドラミちゃん」の初出誌「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号が手元にある。同誌を開いて「ドラえもんとドラミちゃん」を読みだすと、すぐにこんな台詞につきあたる。本作5コマ目の、のび太の台詞である。

明智のやつとは23回おしゃべりした。ぼくには3回だ。出木杉と話すときはニコニコしてた。ぼくにむかってはつまらなそうな顔。

 一方、てんコミドラえもん プラス」第4巻などの単行本で読める「ドラえもんとドラミちゃん」では、同じ箇所はこうなっている。

出木杉のやつとは23回おしゃべりした。ぼくには3回だ。出木杉と話すときはニコニコしてた。ぼくにむかってはつまらなそうな顔。

 雑誌初出時には「明智のやつとは23回おしゃべりした」だった台詞が、単行本では「出木杉のやつとは23回おしゃべりした」に修正されているのだ。すなわち、初出版ではしずちゃんが23回話したのは明智でニコニコ話したのが出木杉であったのに対し、単行本版ではしずちゃんが23回話したのもニコニコ話したのもどちらも出木杉、ということになっているわけだ。
 この初出版の台詞を解釈すれば、しずちゃんは、出木杉とニコニコ話をする以前に、明智なる少年と23回話をしていた、ということになるだろう。つまり、初出の時点では、のび太の恋のライバルとして、出木杉ばかりでなく、明智という別の少年が(名前のみだが)登場していたわけである。だが、この明智という少年は、たった一度だけのび太の口から名前が出ただけで、ついに一度も姿を現すことなく、後年になって、まったくいなかったことにされてしまったのだ。
 この「明智のやつとは23回おしゃべりした」という台詞に関しては、のび太出木杉のことを一度だけ誤って「明智」と呼んでしまっている、という解釈も成り立つが、文脈上、明智という別の少年がいた、と解釈するほうが私にはしっくりとくる。



 さらにややこしい話になるし私の記憶に曖昧な部分があるのだが、本作の初出誌である「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号の早刷り版か何かになると、出木杉のび太しずちゃんからずっと「明智」と呼ばれ続けるバージョンも存在する、との情報を耳にしたことがある。私が当時買った「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号では、「明智」という名前は冒頭で一度のび太が口にするだけで、出木杉は誰からもちゃんと「出木杉」と呼ばれている。つまり、同じ「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号なのに、刷られたタイミングか何かによって台詞が違っている、というのである。
出木杉は、雑誌初登場時は「明智」という名前だった”というトリビア的な豆知識をよく見かけるが、これは、出木杉がずっと「明智」と呼ばれ続けるバージョンが元となって生まれたものだろうか。私は、出木杉明智と呼ばれ続けるバージョンを読んだことがなく、そういうものがあるという情報じたい誤りか私の記憶違いかもしれないので、もし確認できたら当ブログで報告したい。


●追記
「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号を持っている友人から情報をもらった。その友人のコロコロでは、問題の台詞が「出木杉のやつとは23回おしゃべりした」になっているという。「明智」という名前はまったく出てこないのである。
 ということは、今のところ「月刊コロコロコミック」昭和54年9月号の件で確認できたのは、
明智のやつとは23回おしゃべりした」バージョンと、「出木杉のやつとは23回おしゃべりした」バージョンの2種類が存在する、ということだ。そして、どちらのバージョンも、出木杉はちゃんと出木杉と呼ばれている、ということだ。
 果たして、出木杉が「明智」と呼ばれ続けるバージョンは存在しているのだろうか。これが存在しないと、出木杉は、雑誌初登場時は「明智」という名前だった”というトリビア自体が危うくなる。現時点でせめて言えるトリビアは、“出木杉は雑誌初登場時、のび太から「明智」と一度だけ言い間違えられたことがある”程度であろう。しかしこのトリビアについても、私の解釈でいえば、出木杉明智は別人物なので成立するかどうか危ういところである。
 この問題については、今後も追っていきたい。情報をお持ちの方がいらしたら、どうかよろしくお願いします。





ドラえもんとドラミちゃん」の作中でドラミちゃんが出すひみつ道具“カムカムキャット”。日本で江戸時代から作られている“招き猫”人形がアイデアの元だろうが、私がよく見知った招き猫は、おおよそ2頭身で、どっしりとして白っぽい姿をし、和のテイストがあふれているのに対し、カムカムキャットは、おおよそ2頭身ながら、黒色でスリムで非日本的な造形である。
 今年の9月、マクドナルドでハッピーセットを買うと「ドラミちゃんとカムカムキャット」という人形がもらえた(写真)。この人形は、ゼンマイ仕掛けでドラミちゃんが手を振るようになっている。どうせ手を振らせるならカムカムキャットに振らせたほうがよかったような気もするが…。
 とはいえ、カムカムキャットの腕がまったく動かないわけではなく、ドラミちゃんが腕を振り始めるときのスイッチレバーになっている。ゼンマイを巻くだけではドラミちゃんの腕は動き始めず、ゼンマイを巻いたうえでカムカムキャットの腕を下ろすとようやく作動し始めるのだ。