藤子・F・不二雄先生のご命日

 9月23日は、藤子・F・不二雄先生のご命日だった。
 ここ数年は神奈川県川崎市にある藤子F先生のお墓へ足を運んでお参りをしていたが、今年は諸事情で行けなかったため、藤子F先生が息を引きとったとされる23日午前2時10分ごろ、自宅で黙祷した。
 

 数年前のご命日に藤子F先生に捧げる詩を作った。それから毎年、先生の命日が訪れるたびにこの詩を読み返している。

「9・23」


あなたの不在を思えば
今でも悲しみがにじんでくる


あの日から今日までの歳月は
わたしの悲しみを
どれだけ癒してくれたのだろう


どうやらわたしは
あの日からずっと
あなたの死という事実を
克服できずにいるらしい


あなたのいない今を思うとき
わたしの胸には
得体の知れない空洞が
四次元のように果てしなく広がっていく


そのうち
途方もなく気が遠くなって
めまいに似た感覚をおぼえながら
あなたの不在の大きさに
どうしようもなく打ちのめされる


それでもこうして
どうにか前を向いていられるのは
あなたが残してくれた
たくさんの作品が
わたしを支えてくれるから


不意に空を見上げれば
まっしろな綿雲が
あなたのベレー帽のようなかたちをして
ふんわりと浮かんでいた


わたしはそこへ向かって
静かに合掌する


目を閉じると
薄暗いまぶたの裏側に
あなたの控えめな笑顔が
ぼんやりと映し出され
ゆるやかに消えていった


明日になれば
再び自力で立ち上がって
いつもの日常へ戻っていけるだろう


あなたと同時代の空気を吸っていた
さりげない日々の記憶が
わたしを熱く包んでくれるから