実写ドラマ『怪物くん』スタート

 17日(土)夜9時より、実写ドラマ『怪物くん』(日本テレビ系)の第1回が放送されました。第1回は時間拡大版でした。


『怪物くん』が実写で連続ドラマ化される、という第一報を受けた時点で「なぜ?」「無理があるんじゃ…」などと相当な抵抗感をおぼえたのですが、アニメ化にせよ実写化にせよ藤子マンガを原作とした連続ものの映像化作品を第1回から観ないという選択肢は私にはないに等しいので、「どうせ観るなら前向きに楽しんでしまおう」と心のモードをできる限り切り替えることにしました。
「今回のドラマは藤子A先生の『怪物くん』の設定を借りた大がかりな二次創作である」と考え、オリジナルの『怪物くん』の世界が実写でいかに再現されるかを求めるのではなく、このドラマの制作者が『怪物くん』を素材にしてどんな新規なものを生み出すのか、ということを興味の対象にしようと心がけたのです。


 原作者の藤子A先生は、『怪物くん』ドラマ化に際して、まず初めに以下のようなコメントを発表しました。

今度“嵐”の大野くんが“怪物くん”をやってくれる、というのでビックリして、大いに喜んでいます。
怪物ランド”からやってきた怪物王子を大野くんが、愉快痛快奇々怪々に演じてくれることを楽しみにしています!
“怪物くん”はアニメでは何回かやりましたが、実写(!?)は初めてなので、いったいどんなドラマになるのか……!?
“怪物くん”の生みの親として期待で胸ワクワクで〜す!

 私も、A先生のこのような明朗で前向きな心的態度を見習おうと思いました^^ 原作ファン視点でドラマを観て妙な箇所にツッコミを入れたり足りない点を指摘したりするようなことならいくらでもできそうですし、当然ながらそういう見方をする人が大勢いて然るべきですが、私はそういう見方をなるべく封印しようと思いました。完全封印というほど徹底はしませんが。
 そして、事前にここまでの心構えをしてもなお楽しめないようなドラマなら、第2回目以降の視聴をやめることを検討しようとも。


 
 さいわいにして前宣伝の段階から、ドラキュラ、オオカミ男、フランケンのキャスティングはかなりハマっていると思えましたし、怪物くんを演じる大野智くんの演技に関しては彼の単独初主演ドラマ『歌のおにいさん』を毎週観ていたことでどこか愛着を感じていましたし、特殊メイクやCGなどはテレビドラマにしては凝っているようだなと感じられていました。番組スタート前からこれだけ自分にとって好材料があれば、もうあとはどれだけグダグダな作品になっても許せてしまえそう、といった精神状態で第1回放送にのぞむことができました。


 そういう精神状態でのぞんだおかげもあって、ゆるいところやお涙ちょうだいのシーンなどアレコレひっくるめて、おおらかに面白がりながら観ることができました。
 前宣伝のとおり美術に力が注がれていて、テレビドラマでこの水準の映像を観られればそれなりの満足感がともないます。とくに序盤の怪物ランドのシーンには惹きつけられました。
 キャストが発表される前から、フランケン役はチェ・ホンマンがいいなと思っていて、実際にそのとおりに発表されたときは我が意を得たりと感じました。そうして第1回放送を迎え、チェ・ホンマン演ずるフランケンをたっぷりと観ることができ、やっぱりチェ・ホンマンは当たりだ!と思いました。彼が「フンガー」と言うたびに、ほほえましい気持ちになりました。次週以降もフランケンに熱い視線を注いでいきたいです(笑)


 原作マンガでは怪物くんたちがなぜだか人間界にやってきているという感じで話が始まるのですが、今回のドラマは、なぜ怪物くんたちが人間界へやってきたのかという経緯がしっかりと描かれ、その目的も明確に示されています。いずれ怪物ランドの大王に即位する身にしてはあまりにも未熟な怪物くんは、大王の判断で人間界へ修業に行かされるのです。人間界で人間の役に立って成長できれば怪物ランドに帰還できるわけです。つまり、このドラマは「怪物くんの成長」を中心的なテーマに据えたビルドゥングスロマンなのです。


 怪物くんは原作・アニメでもわがままで短気で粗暴なところがあるのですが、それでも丸っこい線で描かれた小さな子どものルックスなので非常にかわいげがあります。それが今回のドラマでは、童顔とはいえ大人の大野くんが実写で演じているため、怪物くんのわがままさが柄の悪さに見えることがよくあります。その柄の悪さが気になるといえば気になるところですが、このドラマがビルドゥングスロマンであることを考えれば、当初の怪物くんの態度が悪ければ悪いほど、のちに描かれるであろう怪物くんの成長した姿が引き立って輝いて見えることになるでしょう。そうなることを期待するばかりです。
 旬の大人の有名人が怪物くんを演じるという条件ならば、大野くんは適切な人物なのではないか、とも感じました。そもそも、このドラマは大野くん主演のドラマという企画が先にあって、その企画に合わせて『怪物くん』が選ばれたらしいのですが…^^


 第1話では、「嘘」をキーワードに怪物くんの成長が描かれています。「嘘」というものを知らなかった怪物くんが、嘘とは何か、嘘の汚さ・美しさを知ることで少し成長するのです。こういう手法はベタといえばベタなのですが、わかりやすくて悪くないなと思います。「人間界に来た異分子だから人間の常識や事情を知らない」という設定を重視しているところに好感が持てます。
 次週は「お金」がキーワードになる模様。予告映像からすると、怪物くんたちがお金を稼ぐ大変さを知るためアルバイトをする原作エピソード「怪物アルバイトはいろいろあらあな」あたりが下敷きにされるようです。


 シンエイ版アニメ『怪物くん』のOP主題歌『ユカイツーカイ怪物くん』が挿入歌として使われたのは嬉しかった。ドラマを観ていていちばん胸が躍ったのは、この挿入歌が聴こえたときかもしれません^^ 歌っていたのはオリジナルの野沢雅子さんではなく大野智くんでしたが、藤子A先生作詞のこの歌が聴けたのはほんとうによかった。
 次週以降も、この歌がどこで流れるかを楽しみにしながら視聴しようと思います。