第18回手塚治虫文化賞贈呈式・記念イベント

 5月30日(金)、「第18回手塚治虫文化賞贈呈式・記念イベント」が開催されました。会場は、例年どおり朝日新聞社東京本社内の浜離宮朝日ホールでした。
 今日は、このイベントをレポートします。


 今回はなんといっても「藤子不二雄A先生 特別賞受賞!」が私にとって最高峰の重大事です。めでたくて、めでたくてたまりません。
 それに加え、大好きな漫画家のひとり羽海野チカさんがマンガ大賞を受賞されたとあって、個人的には最大級に嬉しい受賞者の顔ぶれとなりました。

【各賞の受賞者】
マンガ大賞3月のライオン』 羽海野チカ
・新生賞 『アノネ、』『みつあみの神様』など 今日マチ子
・短編賞『鬱ごはん』『オンノジ』など 施川ユウキ
・特別賞 『まんが道』『愛…しりそめし頃に…』 藤子不二雄A
・読者賞 『宇宙兄弟小山宙哉

 
 ・朝日新聞社東京本社の玄関に手塚治虫文化賞の案内が!


 
 ・会場に入って受付をすますと、パンフレットや記念バッジなどが手渡されました。


 
 
 
 
 


 いよいよ贈呈式の始まりです。主催者挨拶や来賓祝辞、選考経過報告があって、受賞者への賞の贈呈となりました。
 受賞スピーチが感動的でした。マンガ大賞羽海野チカさんは、感激と緊張の伝わってくる、震えるようなお話ぶり。人生で最初に買ったマンガが手塚先生の『リボンの騎士』だったとか。
 今日マチ子さんはいらっしゃらなくて、代理で女優の青柳いづみさんが出席。今日マチ子さん原作の舞台で主演をつとめたことがある方です。本日は自分の身体を今日マチ子ということにしたい、と主催の朝日新聞社に伝えたら「ウソはいけない」とたしなめられたとのこと(笑)
 藤子不二雄A先生は、もう歳なので仕事を引退して田舎暮らしでもしようかと思っていたが、この賞をもらったのでもうちょっと頑張ってみる気になった、と語りました。ファンには心強く、嬉しい発言です。


 贈呈式が終わると、記念イベントとして藤子A先生と永井豪先生の対談が行なわれました。A先生は、お得意のトキワ荘時代のエピソードを見事な話術で披露。トキワ荘入居時に手塚先生のお世話になったこと、テラさんに面倒を見てもらったこと、赤塚先生が『ナマちゃん』をきっかけにブレイクしたこと、つのだ先生の巻紙事件などなど。羽海野チカさん目当で参加したであろう若い女性のお客さんたちをも巻き込んで、会場を笑いで包んでおられました。
「石森氏の描く女性は彼のお姉さんが投影されていて、僕が描く女性は僕の奥さんなんです(笑)」というお話もあって、これは会場に奥様がいらっしゃったからこそです(^^
 手塚先生が亡くなって時間がたてばたつほど手塚先生の偉大さを感じる、という真面目なお話もありました。
 豪先生は、A先生のヒーロー活劇『シルバークロス』を雑誌「少年」連載時に読んでいたとか。ある回でシルバークロスが、仮面を付けた悪者に勝利し、ここで通常なら悪者が仮面を外して素顔をさらす…という展開になりそうなところだったが、このとき悪者は、仮面こそが自分の顔だからと言って仮面を外さず死を迎えることになった……。それを読んだ豪先生は、自分がその顔に対してずっと信念を抱いて行動していれば、それが素顔だろうと仮面であろうと本当の顔になりうるのだ!と新たな発見をしたように感動したのだそうです。A先生は、そこまで深く読んでもらえてありがたい、と反応されました。


 贈呈式・記念イベントのときは、私の席の右側に鈴木伸一先生、左側にしのだひでお先生が座っていらっしゃいました。鈴木先生もしのだ先生も、20代の頃から藤子A先生とお付き合いのある方です。私は、藤子A先生のトークを聴きながら、同時に鈴木先生やしのだ先生のリアルタイム反応も聴けたわけで、非常にぜいたくな席に座らせていただいたと感謝しています。


 次に、マンガ大賞羽海野チカさんが、『テルマエ・ロマエ』のヤマザキマリさんと対談。お2人は気心の知れた間柄だとか。
 サバサバした雰囲気のヤマザキさんと、考えすぎるタイプの羽海野さんのコントラストが魅力的な対談でした。大いに盛り上がった藤子A先生と永井豪先生の対談の直後とあって、「やりづらい」とおっしゃっていたお2人ですが、対談が進んでみれば創作に関する興味深い話題でお客さんを引き込んでいました。さすがです。
 羽海野さんの発言では、次のようなものが印象に残りました。
「人を一方向からだけで見ないようにしている。表も裏も悪い人はおらず、それは関係性だけなのではないか。そういうふうに人間を描いていきたい」
「マンガは作者の性格で描くもの」
「原稿を完成させて編集さんに渡して、次を描こうとすると、マンガの描き方を忘れてしまっている。だから“1.机の上を片付ける…”というふうに箇条書きでマンガを描く順番をメモしてある」
「『3月のライオン』で、きつい展開が続いて読者さんがついてこれなくなりそうだなと思ったら、食事のシーンを入れて和らげる」
「『3月のライオン』の3姉妹の家は高校時代の友達の家がモデル」
 ヤマザキさんは、自分の作品の連載が終わっても登場人物との別れはこれといって悲しくなかったけれど、『3月のライオン』の連載が終わってその登場人物たちとの別れが来ることを想像すると非常につらくなってくる、とおっしゃっていました。

 記念イベントが終了し、お客さんが会場からぞろぞろ出ていく段になって、私はA先生に接近し「おめでとうございます!」とお祝いの言葉を伝えました。
 私のこの日最大の目標は「A先生に直接お祝いの言葉を伝えること」だったので本望です。
 A先生の奥様にも初めてご挨拶させていただきました。するとA先生が「いつも僕のことを応援してくれてる人なんだよ〜」と紹介してくださって、深く深く感涙しました!


 羽海野さんもしばらく会場に残っておられたので、ほんの少しだけ言葉を交わすことができました。「名古屋に原画展が来たとき2回足を運びました!」とかそんな話をした記憶が…。


 客席では、何人もの漫画家の先生方をお見かけしました。私は、山根あおおに先生、ちばてつや先生、さいとう・たかを先生、北見けんいち先生にご挨拶させていただきました。さいとう先生、北見先生とは完全に初対面でしたが、気さくに握手してくださいました♪


 
 ・しのだひでお先生、ちばてつや先生、鈴木伸一先生に並んでくださるよう厚かましくもお願いしたら、多くの人が集まってきて撮影大会になりました(^^ 3名とも『愛…しりそめし頃に…』の登場人物なのです!!!


 
 ・しのだ先生と鈴木先生のあいだに入れてもらって記念撮影!


 
 ・夜は、鈴木伸一先生、しのだひでお先生、友人数人と新橋の居酒屋で飲みました。鈴木先生は「安孫子さんの作品の最高傑作は『怪物くん』だと思う」と語っておいででした。手料理のお話なども聞かせてくださいました。
 

 この日お会いした皆様、すばらしい時間をありがとうございました!