6月13日(月)午後10時からNHK Eテレで放送された『グレーテルのかまど』は、「ドラえもんのどらやき」がテーマでした。
『グレーテルのかまど』は、いろいろな物語や実話に関連したスイーツを実際に作る番組で、今回は『ドラえもん』のエピソードを取り上げつつ番組ホストの俳優・瀬戸康史さんがドラやきを作ったのです。
おかし牧草、しつけキャンディー、おすそわけガムといった、原作で描かれたドラやき以外のお菓子エピソードまで紹介してくれたし、博多大吉さんによる愛のあるドラえもん語りもあって、思った以上においしい番組内容でした。
そんな番組のなかで、瀬戸康史さんが「ドラえもんはなんであんなにドラやきが好きなんだろうね?」と口にする場面がありました。
ドラえもんはどうしてドラやきが好きなのでしょうか?
原作者である藤子・F・不二雄先生のお答えはこちらです😄
F先生のこのコメントは、「話の特集」1984年11月号より引用しました。当時は「藤子不二雄」の藤本弘として発言されたものです。
「まあ、そりゃあそういう理由だろうな」とただちに納得できる明快な説明でありながら、身も蓋もないと言えば身も蓋もない理由だな……とも思えます(笑)
仮に、ドラえもんがドラやきを好きな理由を小さい子ども向けに説明するのなら、おそらくもう少し趣や含みのある説明をされたのだろうとも思いますし、(今すぐには私が思い出せないだけで)実際そのように説明されたこともあったかもしれません。
ともあれ、そうした単刀直入で率直なF先生による理由説明に対し、方倉陽二先生の『ドラえもん百科』では、数式らしき記号や図解や成分表などを駆使して、情報量たっぷりになにやらアカデミックめいた解説がなされています。
結論としては、「ドラやきの皮とアンコの成分が、ドラえもんのエネルギーにもっともてきしているから」とのこと。
F先生が述べた極めてシンプルな理由と、方倉先生が過剰なまでにアイデアを詰め込んで描いた理由の、その濃度のギャップがユカイです。いわゆる“方倉設定”のおもしろみをこういうところでも味わえますね。
F先生が述べたのは作者による創作の秘密的な理由であり、方倉先生が描いたのは物語内世界における理由ですから、その違いも考慮すべきかとは思いますが。
こういう話をしていると、おいしいドラやきを無性に食べたくなってきます(笑)
※追記
ドラえもんがドラやきを好きな理由で最もポピュラーなのは、1995年公開の映画『2112年ドラえもん誕生』で描かれたものかもしれませんね。生まれて初めて食べたドラやきがノラミャー子さんからもらったもので、それがとてもうまかったことで大好物になったと。
2112年、ドラえもんにまだ耳があり、体の色が黄色かったときのことです。ノラミャー子さんは落ち込むドラえもんに元気を出してもらおうと、ポケットから20世紀のお菓子・ドラやきを出してドラえもんにあげます。受け取ったドラえもんが「いただきまーす」とドラやきを食べたら、びっくりするくらいうまかったのです。
一目ぼれしていたノラミャー子さんがくれたものであり、生まれて初めて食べてみたら驚きのおいしさだった、というその体験があったから、ドラえもんはドラやきが大好きになったのでした。
※さらに追記
ドラえもんがどうしてドラやきを好きなのか?との問いに答えた記事や作品を紹介してきましたが、ドラえもんが自分の名前にある「ドラ」がドラやきのドラなのかドラ猫のドラなのか藤子先生に尋ねてみたら「別にどっちでもいい」と返されたらしい記事もあります(笑)
・「OUT」1979年6月号(みのり書房)、49ページより
テレビ朝日版アニメ『ドラえもん』が放送開始して間もないころの記事ですね。「ドラえもん珍道中記」と題して、ドラえもんが藤子スタジオとシンエイ動画と整音スタジオ(アフレコスタジオ)を訪問しレポートしています。最初に訪問した藤子スタジオで藤子先生に会ったドラえもんが一番聞きたかったことが、自分の名前「ドラ」の由来だったというわけです。藤子先生から「別にどっちでもいい」とそっけない答えが返ってきたことで、「どんな理由で名前がついたって、ドラえもんはドラえもんなんだから気にする事はないのかな?」ととりあえず納得しようとするドラえもんがいじらしいです(笑)