ジョルジョ・デ・キリコに傾倒する令和のシュルレアリスト

 7月21日のことです。

 名古屋・今池のギャラリ想で高田陸人 個展「シュルレアリストへの軌跡」を観ました。

 高田陸人さんは、ジョルジョ・デ・キリコに傾倒し令和のシュルレアリストを標榜する21歳の画家です。

 私は藤子不二雄Ⓐ先生の影響でマグリットはじめシュルレアリスムの絵画が(知識は乏しい限りですが)好きですし、キリコの作品がそのまま出てくる藤子Ⓐ作品もあるので、時代を隔ててキリコの遺伝子を継承した高田さんの絵画を鑑賞できて気持ちが高揚しました。

 

 高田さんの絵画を一点一点観ていって、やっぱりシュルレアリスムの絵画って面白いな、好きだなと実感しました。

 高田さんご本人やギャラリ想のオーナー・ミシマさんとお話しながら鑑賞できたのも、ためになったし楽しかったです。

 

 高田さんはお若いのに1970年代を愛し、ヘアスタイルやファッションもその時代を意識していて、音楽活動もなさっているそうです。そういう人物が現在のシュルレアリストとして歩みを進めてくださるのは、じつに楽しみだし頼もしく感じます。

 

 ちなみに、キリコの作品が出てくる藤子不二雄Ⓐ作品とは短編マンガ『わが分裂の花咲ける時』(初出:COM1971年2月号)です。

 『わが分裂の花咲ける時』は、精神が錯乱していく浪人生のありさまを描いた異色の作品。浪人生の内面世界を表現する一手法としてキリコの『出発の不安』(出発の苦悩)を大きく使ったコマがあるのです。(タンギーの絵画『弧の増殖』も同様の使われ方で登場します。タンギーは、たまたま見かけたキリコの作品に感化されて絵画に目覚めた画家ですから、藤子Ⓐ先生が『わが分裂の花咲ける時』でキリコとタンギーの絵を引用したことに一種の脈絡を感じます)

 

 『マグリットの石』を描くなど藤子Ⓐ先生はマグリット好きで知られますが、キリコの絵もきっと藤子Ⓐ先生の好みなのでしょう。なにしろキリコはシュルレアリスムに多大な影響を与えた画家で、マグリットシュルレアリスムの方向へ進む決意をしたのはキリコのある作品(『愛の歌』)を観たことがきっかけだったそうですから。 

 マグリットは1920年代初めにキリコの『愛の歌』を観て、涙があふれて止まらなかったとか。

 

 

 

※参考記事:2014年、パナソニック汐留ミュージアムの「ジョルジョ・デ・キリコ-変遷と回帰」展へ行ったときのレポートです。

 https://koikesan.hatenablog.com/entry/20141216