輝け! ドラデミー大賞

 小学館から刊行中の雑誌「ぼく、ドラえもん」の07号で「輝け!
ドラデミー大賞」なる特集が組まれた。その「映画部門」でグラン
プリの栄冠に輝いたのが、2003年公開の「のび太とふしぎ風使い」
だったわけだが、多くの藤子ファンがこの結果に違和感を表明した
のは記憶に新しいところである。
 
 私も、「なんで、ふしぎ風使い??」と拍子抜けしたクチだ。
 藤本弘先生(藤子・F・不二雄先生)が描かれた原作マンガに強
い愛着のある私は、藤本先生亡きあとの、藤本先生の原作マンガに
基づいていない映画ドラえもんにはいまいち思い入れがわかない。
 たしかに「ふしぎ風使い」は感動的な作品に仕上がっている。で
も、そこに描かれた「感動」の質は、藤本先生が表現されてきた
「感動」とは異質のものだ。「ふしぎ風使い」の「感動」からは、
藤本先生の「息遣い」や「さりげなさ」や「ひねり」や「趣味性」
は感じられない。
 そこにあるのは、ストレートでオーバーな感動表現である。それは
それで観る者の心を打つのかもしれないが、藤本ファンの私の心を虜
にすることはない。 


「ふしぎ風使い」が駄作だと言っているのではない。多くの人に評
価されているのだから「傑作」の部類に入るのだろう。でも、藤本
先生の世界観から遠ざかってしまったこの作品が1位に選ばれたこ
とについては、どこか納得のいかない気分が残る。

 
 そんな私が大好きな映画ドラえもんは、世代的なものも影響し
ているのだろうが、第1作の「恐竜」から「竜の騎士」あたりまで
である。
 とくに「宇宙開拓史」「魔界大冒険」「鉄人兵団」の3作がマイ
ベストだ。これらの作品にこそ、藤本先生の「感動」の神髄がある、
と個人的には思っている。何度観ても深く楽しめる作品だ。
 これら3作に登場するゲストキャラの美少女が、これまた魅力的
でたまらない。クレム、美夜子、リルル… かつて男の子だった
(今はオッサンの)私は、彼女らの容姿や仕草や性格に心をときめ
かせたものだ。


 藤本先生亡きあとの映画ドラえもんに、「宇宙開拓史」「魔界
大冒険」「鉄人兵団」並みの「感動」を要求するのは、あまりに
酷な話だろう。しかし、映画ドラえもんは今後も新作がつくり続
けられていくはずだ。次の新作にかすかな期待をかけるくらいの
夢は持ちたいと思う。