ネオ・ユートピアから「Neo少太陽」が届く

koikesan2005-06-15


 一昨日のことだが、藤子不二雄ファンサークル「Neo Utopia(ネオ・ユートピア)」から、「Neo少太陽」のコピー本が届いた。
「Neo少太陽」とは、今年3月10日の藤子不二雄A先生の誕生日を祝して作成された、この世に一冊の肉筆誌である。「Neo Utopia」が、会員から、藤子A先生を祝福・応援するメッセージ原稿を募集し、そうして集まった原稿をそのまま閉じて本のかたちにしたものだ。原稿の内容は、イラスト、マンガ、小説、写真、言葉によるメッセージなど多種多様で、着色原稿が多いのでとてもカラフルだ。


「Neo少太陽」は、3月9日、藤子スタジオにて藤子A先生本人に手渡された。藤子A先生は、その場で1枚1枚丹念にページをめくり、感嘆の声をあげたり、ニコリとしたり、感想を述べたり、我々に質問したりしながら、最後までしっかりと目を通していかれた。そのときの模様は、3月10日のこのブログで簡単に触れている。
 http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20050310


 この企画に原稿を送った人には、「Neo少太陽」のコピー本が進呈される約束になっていて、私も原稿を送った一人だったので、こうしてコピー本を送ってもらえたわけである。
 実物はA5判のハードカバー本だったが、コピー本はA6判に縮小されてかわいらしくなっている。コピー本とはいえ、非常に丁寧に製本されていて、これを作成したスタッフの誠実な手仕事に感心した。
 3月9日、藤子A先生が「Neo少太陽」をご覧になっているすぐ隣で私も一緒に見せていただいたが、こうして自分の手元にコピー本が届けば、そのときよりじっくりたっぷり読めるのでありがたい。
 マンガ家のファンをやっている人というのは、ご自身もマンガ家を目指していたり、マンガ・アニメ・デザイン関係の仕事についていたり、趣味で絵を描いていたりすることが多いので、「Neo少太陽」に参加した方々の作品も、とても上手なものばかりで見応えがある。中には、児童マンガ家の登竜門「藤子不二雄賞」を受賞したマンガ家さんの作品も含まれているし。


 この「Neo少太陽」は、タイトルが示しているように、2人の藤子不二雄先生が高校時代に作った肉筆回覧誌「少太陽」を強く意識している。
「少太陽」は、マンガ、絵物語、企画記事、読者投稿欄、広告などを、すべて2人の藤子先生と友人の浜野正さんで執筆、編集、製本した、娯楽要素たっぷりの少年雑誌風肉筆回覧誌だ。直筆原稿をそのまま製本していたので肉筆誌であり、近所の子どもたちに回して読んでもらっていたので回覧誌なのである。平成7年10月10日、テレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」で藤子・F・不二雄先生がご自分がお持ちの「少太陽」2冊を鑑定に出したとき、まんだらけ古川益三社長が1200万円という値段をつけたこともあった。
 http://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/guest/files/f301.html


「Neo少太陽」は、肉筆誌という点でも、マンガ、イラスト、読み物などバラエティに富んだ内容という点でも、藤子先生の「少太陽」に似ているが、さらに本のつくりでも「Neo Utopia」らしいこだわりを見せ、表紙、裏表紙、奥付などが、全部で5、6冊作られたという「少太陽」の1冊、昭和25年5月号(子供の日お祝い号)の精巧なパロディになっている。とくに表紙はハイレベルな出来で、〝藤子不二雄A先生と帽子の少年が、草の茂った土手に隣り合って座っている〟という絵を、「少太陽」表紙の水彩画タッチそのままに描いている。しかも、〝草の茂った土手に座る帽子の少年〟というのは、「少太陽」昭和25年5月号の表紙の絵柄なのである。3月9日に「Neo少太陽」の表紙を見せてもらったときは、その見事なタッチの似せ具合に感動してしまった。
 そんなわけで、「Neo少太陽」の表紙を見ていると、高校時代の藤子先生が描いた「少太陽」の表紙のなかに、現在の藤子不二雄A先生がタイムスリップして入り込んでしまったような、楽しい錯覚を与えられるのだ。
 裏表紙の広告のパロディは、藤子Aファンの笑いのツボを押さえたものばかり。「世界の中心でギニヤーと叫ぶ」なんて、ぜひとも読みたい小説だ。
 表紙・裏表紙を担当したのは、第15回藤子不二雄賞で佳作を受賞した 白亥志郎さん。さすがである。