7月14日(金)のアニメ『ドラえもん』で放送された「のび太漂流記」「チッポケット二次元カメラ」のレビューです。
●「のび太漂流記」
【原作】
初出:小学五年生1973年7月号
単行本:てんとう虫コミックス6巻など
冒頭、割り箸を集めていかだを作り、自分の力を試すため無人島を探そうというのび太の、非常識さといじらしさが笑いと涙を誘う。驚いたドラえもんの表情が次のコマでも固まったままなのが、のび太のいかだ作り計画の常識外れっぷりを如実に物語っている。
のび太は、ドラえもんに風船いかだを援助してもらった以外は、誰の世話にもならず自力で漂流生活を生き抜いたと思い込んでいる。実際はほとんどすべてのピンチをドラえもんに助けてもらったわけだが、のび太がそのことを知らないままというのが重要だ。
漂流生活をすべて自力でやりぬいたと思い込んでいるのび太が語る自らの漂流記は、おのずと説得力や迫力のあるものとなる。おかげでそれを聞いたしずちゃんやジャイアンたちは、のび太の言葉に疑いを抱く様子もなく、素直に感心して目を見開くばかりになるのだった。
いかだの上で泣きわめくのび太を陰から助けるため、ドラえもんが海へ潜る場面がある。私はここを読むたびに方倉陽二さんの『ドラえもん百科』を思い出す。この場面は、『ドラえもん百科』において、ドラえもんが泳げる証拠として挙げられたことがあるのだ。
岩手県の●●君ほかの質問「ドラえもんは、ロボットだから重いけれど、泳げますか?」
ドラ「きみは、てんとう虫コミックスの「ドラえもん」第6巻を読んだことがないのか!ボクは泳げるのだ。109ページが照明している……」
のび太「ただし、ネコ泳ぎです……」
ドラ「うるさいな」
のび太「そして いつも、泳ぐ前にごそごそやってるけど……なにしているの?」
ドラ「あ!」(ドラえもんが、〝たべるうきぶくろ〟をこっそり食べている)
・無人島でのび太を陰ながら世話するドラえもん。アニメでは、透明マントで完全に身を隠し、のび太に見つからないよう万全を期していた。
・ドラえもんがこしらえたパンの木の実(実際はアンパン)がやけにおいしそう。
・のび太が無人島で自分以外の足跡を発見するくだりが追加された。その足跡は、姿を隠したドラえもんのものだったわけだが、このくだりをきっかけにのび太は一気に不安に襲われ、ホームシック状態に。
・ラスト、のび太が語る自分の漂流記に、聴衆(しずか・ジャイアン・スネ夫)から拍手が起こった。
●「チッポケット二次元カメラ」
【原作】
初出:小学四年生1979年8月号
単行本:てんとう虫コミックス20巻など
この話を少年時代に読んだとき、四次元ポケットから出たひみつ道具が三次元を二次元にするんだ、と思うと、どことなく不思議で楽しい気分になった。
三次元から二次元化され写真に収まった物体は、写真のなかで完全に固着するのではなく、二次元の状態で動くことができるようだ。自ら写真になったのび太の表情やポーズが、写真のなかでちゃんと変化しているのが見てとれる。
この話の最大の見せ場は、チッポケット二次元カメラで撮った数々の写真にお湯がかかり、二次元化されていた物体が一気に三次元に戻るところだろう。三次元に戻った物体の山のなかに、ジャイアンの母ちゃんが紛れているのが微妙に可笑しい。その状況に驚くのび太のママとお客さんの後ろ姿も愉快。両手両足の広げ具合が絶妙だし、二人はいったいどんな凄い表情をしているのだろうと想像を駆り立てられる。
ラストのコマ、三次元に戻れた理由をドラえもんに聞かれたのび太は、「聞かないでよ。思い出したくもない」と答える。あんな理由では、たしかに思い出したくもないだろうw
【アニメ】(かたづけはのび太におまかせください チッポケット二次元カメラ)
・今回アニメで観て改めて思ったのだが、チッポケット二次元カメラは、三次元の物体を二次元化する超ハイテク機器なのに、二次元化した物体を三次元に戻すためにはお湯をかける作業が必要となる。その落差が面白い。
・二次元化された物体が一気に元へ戻る場面は、原作以上に大ごとになった。
・のび太は自分を撮影するさいピースのポーズをとった。写真になったのび太は、顔の表情を変化させるが、首から下はポーズが固定されたまま。だから、身体も動かせた原作とは少し違う印象だった。
・原作では酔っ払いの立ちションで元の戻れたのび太だが、立ちションは軽犯罪法違反にあたるためか、アニメでは立ちションが寸前で食い止められ、犬のオシッコに変更された。
アニメ『ドラえもん』放送スケジュール
●7月21日
「時限バカ弾」(てんとう虫コミックス41巻)
「あらかじめ日記はおそろしい」(16巻)
●7月28日
「つめあわせオバケ」(31巻)
「どっちがウソか!アワセール」(38巻)
●8月4日
「ふたりっきりでなにしてる」(42巻)
「水加工用ふりかけ」(23巻)