「四次元たてましブロック」「むすびの糸」放送

 11月24日(金)のアニメ『ドラえもん』は、「四次元たてましブロック」と「むすびの糸」を放送。



●「四次元たてましブロック」

初出:「小学三年生」昭和57年3月号
単行本:てんとう虫コミックス第27巻など
アニメサブタイトル:「のび太の部屋、貸します 四次元たてましブロック」

 冒頭、ドラえもんのび太は、新しいスポーツといって「マット・フェンシング」なる遊びをする。丸めたふとんを武器にして叩き合うのである。この遊びは、藤子・F・不二雄先生が娘さんと実際にやっていたもので、長女の匡美さんは「部屋中ものすごいほこりになって、母に叱られて、父と二人でぞうきんがけをさせられました」と述懐している*1。そしてまた、この遊びは、もともとF先生とA先生が少年時代に楽しんでいたものであり、A先生も同様の遊びをマンガのなかで描いている。『ウルトラB』の一編「ウルトラB ドータと対決!」で、UBとドータがこれをやっているのだ。『ウルトラB』では、「マット・フェンシング」ではなく「フトンたたき」と呼ばれている。「マット・フェンシング」というと、ちょっとしたスポーツ競技のように思えるが、「フトンたたき」というと、そのまんまの朴訥な遊びに聞こえる。



 今回のアニメでは、原作に登場しない出木杉も加わって、話を盛り上げた。しずかちゃんの部屋に誘われた出木杉に嫉妬するのび太の心内語が、背景のなかに書き文字で示されたのが可笑しかった。出木杉が入れられた部屋は、下からしずかちゃんのバイオリン、上からジャイアンの歌が一挙に聞こえてくる階にあり、それはさながら拷問部屋のようであった。
 ジャイアンのいる階だけが別の場所に落ちて孤立状態になる場面も追加。ジャイアンがいくら階段を上っても下りても、元の階に必ず戻ってしまうという無限ループ状態が発生した。
 ラスト、のび太がおもらしをする寸前の激しい表情とスローモーションが印象深かった。階段でおもらしをするのび太と気絶するママ、それを見つめるしずかちゃんという構図は、妙に修羅場めいて見て、笑いを誘った。




●「むすびの糸」

初出:「小学五年生」昭和56年12月号
単行本:てんとう虫コミックス第31巻
アニメサブタイトル:「のび太ジャイアンとくっつく? むすびの糸」

“むすびの糸”は、まず自分に糸を結びつけ、そのうえで相手にも糸を結びつけると、互いに引き寄せ合って10分間くっつく、というひみつ道具である。二人に糸を結びつけるとすぐにくっつき合うのではなく、「ジワジワとききめがあらわれて、ひきよせられるように」「見えない糸にひかれるように」自然と体が動いていくというのだから、なんとも心の機微を解した、ある意味ロマンチックですらある道具ではないか。


 のび太はむすびの糸を使って、しずちゃんとの仲を修復しようと試みるが、のび太が本来行なおうとした計画は大失敗。むすびの糸によってジャイアンとくっついたのび太は、ジャイアンに傷だらけにされる。しかし、その失敗が幸いしてしずちゃんに同情され、しずちゃんとの仲が回復したのだから、まさに、怪我の功名、である。



 アニメでは、自動販売機やら柵やら犬小屋やらがまとめてのび太にくっついてくるとか、走る車にのび太が引き寄せられ道路を転がされるとか、動きで笑いをとるドタバタ要素が加味された。
 のび太としずかちゃんがベンチに腰かけて互いに見つめあい、小指どうしが見えない赤い糸で結ばれるというラブラブなラストシーンが印象的だった。

*1:「ドラえ本3」(小学館/2000年1月1日発行)